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AIエージェントのモメンタムをパートナーとともに日本でも――、セールスフォースがAgentforce向けマーケットプレイス「AgentExchange」を日本で展開開始

 株式会社セールスフォース・ジャパンは8日、同社が提供するAIエージェントプラットフォーム「Agentforce」に特化したマーケットプレイス「AgentExchange」の国内提供開始を発表した。

 AgentExchangeは、3月4日に米国サンフランシスコで開催されたSalesforceの開発者向けイベント、「TDX 2025」で発表されたSalesforceネイティブのエコシステムで、顧客や開発者は、200以上のSalesforceのパートナーが開発したさまざまなAgentforceソリューションを、AgentExchangeから入手することができる。

3月に米国サンフランシスコで開催されたSalesforceの開発者向けイベント「TDX 2025」で発表された「AgentExchange」は、AppExchangeをベースにしたパートナーソリューションのマーケットプレイス

 日本市場でのAppExchangeローンチにあわせて来日した、米Salesforce プレジデント グローバル戦略カスタマー&パートナー担当 ジム・スティール(Jim Steele)氏は、「2024年9月にAgentforceがリリースされてからこの6カ月間、我々は顧客やパートナーとともに、これまで経験したことがないイノベーションのペースとモメンタムを共有してきた。AgentExchangeを通して、Agentforceによって生み出される価値あるAIエージェントソリューションを、より多くの日本の顧客/パートナーと共有していきたい」と語っており、日本におけるAgentforceエコシステムの拡大との活性化を狙う。

米Salesforce プレジデント グローバル戦略カスタマー&パートナー担当 ジム・スティール氏

 AgentExchangeには、3月のグローバルローンチで約200の初期パートナーが参加しているが、今回の日本市場での提供開始を受け、15社のパートナーが国内対応を明らかにしている。そのうちオプロ、KDDI、テラスカイ、ネクプロ、フレイ・スリーの5社は、国内の初期パートナーとしてそれぞれが開発するAgentforceアプリケーションをAgentExchangeで提供済みだ。加えてOpentextなど4社は、グローバルでリリース済みのサービスを日本市場向けに提供、さらにナレッジワークなど国内ISVパートナー6社がAgentExchange提供用のサービスを現在開発している。なおセールスフォース・ジャパンは、2026年度中に20のAgentExchange対応サービスを日本から輩出することをマイルストーンとして掲げている。

Box、Workday、Zoomなど、ローンチの時点ですでに200以上のパートナーがAgentExchangeに参加している
日本では15社のパートナーがAgentExchangeに対応、うち5社はすでに日本市場向けにAgentforceサービスをリリースしている

 「Agentforceの活用を日本市場で拡大していくためには、まずは既存のSalesforceユーザーに訴求していくことが重要。AgentExchangeを通してさまざまなAIエージェントアプリ/サービスを提供し、Salesforceというひとつのプラットフォーム上でAIエージェントを利用できる強みを、パートナーとともに顧客に伝えていきたい」(セールスフォース・ジャパン 専務執行役員 アライアンス事業統括本部 統括本部長 浦野敦資氏)。

セールスフォース・ジャパン 専務執行役員 アライアンス事業統括本部 統括本部長 浦野敦資氏

Agentforceのエコシステム拡大をグローバル戦隊の重要なミッションに

 2024年9月のリリース以来、Salesforceは全社をあげてAgentforceにフォーカスしており、現在は顧客/パートナーを含めたAgentforceエコシステムの拡大を、グローバル全体の重要なミッションと位置づけている。Salesforceはこれまで、「AppExchange」を通してパートナーによるSalesforceアプリケーションの提供を推進し、エコシステムの拡大を成功させてきた実績があるが、AgentExchangeもその成功体験をベースに、Agentforceを扱えるパートナー、さらにはパートナーが構築したAgentforceソリューションを増やすことが狙いだ。

 その施策の一環として、今回のAgentExchangeのローンチにあわせてパートナー向けの機能がアップデートされている。これまでのAgentforceではパートナーがパッケージングできたのはAIエージェントの「アクション(メール作成などAIエージェントの行動の最小単位)」「トピックス(複数のアクションと行動への指示)」だったが、今回のアップデートでは複数のトピックスをまとめ、メタデータを記述した「Agentforceテンプレート」も含めることができるようになり、AIエージェントとして提供できる機能の範囲が拡大した。これにより顧客はより簡単かつ迅速にパートナー作成のAIエージェントをインストールして使うことが可能となっている。

AgentExchangeのリリースにあわせ、パートナー向けのAgentforceパッケージサポートの範囲を拡大、AIエージェントのアクションおよびトピックスに加え、テンプレートが定義できるようになった

 セールスフォース・ジャパン アライアンス事業統括本部 グローバルテクノロジーパートナー本部 本部長 鈴木千尋氏は「(パートナーにとって)エージェントとして提供できる機能の範囲が拡大したということは、AIエージェントのビジネスチャンスが広がるということ。顧客はパートナーが作成したテンプレートをそのまま使うことも、特定のユースケースにあわせてカスタマイズして利用することもできる。アクション→トピックス→テンプレートと扱える範囲が広がったことで、AIエージェントが巻き取れる業務プロセスも増えた。今後はAIエージェントのインプリメンテーションを担うパートナーも増えることを予想している」とパートナーにとってのビジネスチャンス拡大であることを強調する。

セールスフォース・ジャパン アライアンス事業統括本部 グローバルテクノロジーパートナー本部 本部長 鈴木千尋氏

 また、AgentExchangeローンチの会見には国内市場における初期パートナーのテラスカイ 取締役 専務執行役員 製品事業ユニット長 山田誠氏も登壇、Salesforceを基盤としたグループウェア「mitoco」上で動作する拡張パッケージ「mitoco Agent」「mitoco Agent 会計」の紹介を行った。

テラスカイ 取締役 専務執行役員 製品事業ユニット長 山田誠氏

 mitoco Agentは2024年9月のAgentforceのリリースにあわせて作成、会計に特化したAIエージェントもサポートするなど、早くからAgentforce対応を進めてきた同社だが、山田氏は3月の米国でのTDXにも参加し、「AIエージェントに対するものすごい熱量を感じた」と振り返っている。

 「Salesforceパートナーの1社としてAgentforceを盛り上げていきたいと思い、AgentExchangeにもすぐに参加した。これから日本の労働人口がどんどん減っていくなか、デジタルレイバーの市場を広げていくことは非常に重要。今後もさまざまなエージェント対応を行い、SalesforceとともにAIエージェント市場を広げ、日本の労働力不足のカバーに貢献していきたい」(山田氏)。

「mitoco Agent」のデモ。会議の連絡や会議室の予約をエージェントに行わせている

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 日本法人でパートナービジネスを統括する浦野氏は、「パートナーにはSalesforceが提供できていないサービスをAgentforceで開発し、顧客にその価値を、AgentExchangeを通して届けてほしい。また、顧客自身が自分で欲しいものをAgentforceで作り、それを業界で横展開するケースもある。そういった顧客がパートナーになる形態も増やしていきたい」と語っている。

 同社の2026年度におけるパートナービジネスの注力領域は「Agentforceビジネスの加速」「単一のアーキテクチャ上に統合されたプラットフォームによるビジネス拡大」「新規市場開拓の推進」だが、やはりもっとも重要なドライバに位置づけられているのがAgentforceだ。現在、国内のAgentforce支援パートナーは約50社、認定資格者は1400名だが、今年度はパートナーの提案能力をさらに引き上げることを目標に、新たにAgentforce GTM組織を設立して支援プログラムを拡充、認定資格者の数を3000人まで増やしたいとしている。

セールスフォース・ジャパンの2026年度におけるパートナービジネス注力領域は大きく3つあるが、最大のフォーカスはやはり「Agentforceビジネスの加速」
AgentforceのGo-to-Marketに特化した組織を新たに設立し、パートナー向けに資格取得支援などさまざまなプログラムを拡充、Agentforce認定資格者数3000人をめざす

 グローバルでのローンチからわずか1カ月で、日本市場でAgentExchangeの提供が開始されたことからもわかるように、日本のパートナーはAgentforceビジネスにフォーカスするSalesforceにとって重要な存在であることは間違いない。SalesforceのAgentforceビジネスに対する熱量が国内のパートナー企業にどう影響するのか、今後のAgentExchangeの活性化が大きなカギになりそうだ。