ニュース

リコージャパン、オンプレミス環境でセキュアに利用できるLLMスターターキットを提供

AI事業に加えてワークプレイスエクスペリエンス事業に注力

 リコージャパン株式会社は7日、AI事業、ならびに新事業であるWE事業の事業戦略説明会を開催した。

 AIでは、ユーザーから要望が多かったという、オンプレミス環境で生成AI活用を始めるために必要な製品・サービスをセットにした「RICOH オンプレLLM スターターキット」を提供。ユーザーの用途・規模に最適なAIソリューションを提供し、使える・使いこなせるAIの拡充を進めていく。

 一方、“ワークプレイスエクスペリエンス”の略となるWE事業では、社員がオフィスで働く際に感じる体験・印象を向上させることを目的として、取り組みを指している。2024年度第3四半期までの累計売上高は144億円で、前年比では11%の伸長。2025年度は、引き続き2桁伸長となる売上200億円超を目指していく。

AI事業の現況

 今回の説明会の会場となったRICOH BIL TOKYOは、DXやAIを顧客に紹介する場であり、最新ソリューションを活用したショールームとしての役割を担っている。説明会でも、最新機器やソリューションを紹介しながらAIとWEの事業戦略が紹介された。

 AIについては、2024年11月にスタートしたAIエバンジェリスト育成の現状を紹介した。知識・技能・成果の3つの視点で育成を進めており、2025年に入ってからは「社内業務改善に向けたユースケース」の検討と、案の提出を実施。2025年度には、AIエバンジェリストの認定、新たな人材の育成をスタートする。

AIエバンジェリスト育成:24年度カリキュラムの概要

 「AIエバンジェリスト教育の中で、候補生たちが自ら、自分たちの業務の中からAIで業務改革したいアイディアを寄せた。244件のアイディアが集まり、これを社内実践として進めている。その1つが、営業部門支援のために、中小企業支援サイト内で紹介している920件の事例から最適案件をAIによって抽出することや、内容を要約してピックアップするサービスである。事例が多すぎて最適なものを選ぶのに困っているという営業スタッフの声を受けて出たアイディアになっている」(リコージャパン 常務執行役員 デジタルサービス企画本部 本部長の宮本裕嗣氏)。

社内の業務改善にAIを活用するアイディアが244案
リコージャパン株式会社 常務執行役員 デジタルサービス企画本部 本部長の宮本裕嗣氏

 AI導入に関し、顧客から要望が増えているのがオンプレミスLLMだ。リコージャパンは中堅・中小企業を主な顧客としているが、中小企業ではAIへのニーズは高いものの、マイクロソフトのCopilotやアドビ製品などのアプリケーションに組み込まれたものを利用している。一方、中堅企業や大企業では、オンプレミスLLMへのニーズがあるという。

 「ここ数カ月、お客さまとの商談の中で、次の3つのニーズが見えてきた。1つ目は、自社や業界の固有用語を学習させ、自社ならではのAI環境を整備したいというニーズ。2つ目は、社外秘や秘匿性の高いものはクローズド環境で使いたいという、セキュリティ観点のニーズ。3つ目は、AIを使いこなすためのサポートが欲しいという声だ。そこで、オンプレミスで使用できるLLMを導入から運用までワンストップで提供するスターターキットを、本日リリースする」(宮本常務執行役員)。

オンプレLLMの引き合い状況

 このRICOH オンプレLLMスターターキットは、オンプレミスのGPUサーバー、Llamaをベースとしたリコー製700億パラメータのLLM、生成AI開発プラットフォーム「Dify(ディファイ)」、AI動作に必要なソフトウェアをプリインストールし、オンプレミスLLM動作環境を構築したうえで提供する。合わせて、導入時と運用の支援を行うため、社内にAIの専門人材がいないユーザーでも、安心して生成AIの業務活用を開始できるとした。

 また、スターターキットに含まれるDifyを活用し、自社の業種業務に合わせた生成AIアプリケーションなどを、ノーコードで利用企業自身が作成できる。

 「価格は1500万円からで、値付けも非常にコンパクトな価格帯に設定した。また、お客さま独自のプライベートLLMの構築や、ファインチューニングをしたいというお客さまについては、別途、個別で対応することもできる」(宮本常務執行役員)。

RICOH オンプレLLM スターターキット

 リコーではオンプレミス版LLM、クラウド版LLMの両方を提供しているが、同じ企業であっても個人情報を扱っている部門ではオンプレミス版のニーズが高く、一方マーケティング部門ではクラウド版のニーズが高い。「クラウド版のみ、オンプレミス版のみではなく、ハイブリッドでどちらも提供できることがリコージャパンの強み」として、今後もハイブリッドでLLMを提供していく。

クラウドLLMとオンプレLLMの比較

変化するワークプレイス環境を踏まえたWE事業を展開

 WE事業では、企業のオフィス環境が大きく変化していることに着目した。ハイブリッドワークなど、従来と異なる働き方が定着してきたことにより、オフィスデザインも従来とは異なるニーズが出ているという。

 「中堅・中小企業では、人手不足やDX実現、多様な働き方への対応など、課題に直面をしている。アフターコロナを経てハイブリッドワークが定着し、オフィスの再構築が経営者の中では課題になっている。しかしGartnerの調べによると、ICTとワークプレイスデザインの融合は、浸透し始めているものの、世界的に見ても、5段階あるレベルのうち現在はまだレベル2で、まだまだこれが進展していないという現状だ。つまり、これからますます発展をしていく領域といえる。その中で、リコーの国内戦略として、RICOH Smart Huddleをコンセプトに、お客さまの働く環境の課題検討からオフィスの移転、リニューアルの後の運用までワンストップで提供していく」(宮本常務執行役員)。

オフィス環境構築における現状

 こうした点を踏まえ、RICOH Smart Huddleとして、1)デザイン・設計から、家具・什器の選定、工事の施工・管理までをワンストップで支援するワークプレイスデザイン、2)ハイブリッド環境での情報共有をシームレスにする設備環境を構築するコミュニケーションサービス、3)顧客が価値を最大限に発揮できるオフィス空間の構築・運用を実現する空間デザイン――といった3つを提供していく。

RICOH Smart Huddle

 リコーグループ中に、内作で施工を担える人材が多数存在し、全国の支社からワンストップでオフィス空間を構築できる環境があることがポイントとなっている。説明会の会場となったBIL TOKYOの構築についても、コンセプト策定からオープン、オープン後の運用フォローまでを、構築を一貫してリコージャパンが担当している。

 施設内では、大型ディスプレイを活用したプレゼンテーションを行うスペースや、ブレインストーミング/アイディア出しのための部屋、デジタルヒューマンを活用したコミュニケーションや営業支援を行う仕組みなどを試験運用しているとのこと。

 こうした取り組みによって事業も順調に伸長し、2024年度は2桁伸長となっていることから、2025年度についても2桁の伸長によって売上高200億円超を目指していく。

BIL TOKYOで体験できる、デジタルヒューマンのアルフレッドを活用したAI情報検索を紹介

 その核になるのが、AVインテグレーション/AVマネージドサービスと空間マネージメントの領域を強化し、顧客のオフィスの価値を最大化することと、新たに「スマートハドルスペシャリスト」というスペシャリストの育成を進めることという、2つの強化ポイントである。

 前者では、AVインテグレーション/AVマネージドサービスとして、コミュニケーションサービス、空間マネージメントの中でAVシステム活用を進める。BIL TOKYOでは、200インチある大型LEDディスプレイを中心としたプレゼンテーションをスムーズ&スマートにできるAVシステムを完備した。オリエンテーションから始まるBIL TOKYOにおけるセッションへの期待感の醸成により、お客さまをおもてなし、引き込む空間をデザインとすることを狙っている。

2025年度の強化ポイント:ソリューション

 新たなスペシャリストとなるスマートハドルスペシャリストは、ワークプレイスにデジタルサービスを組み合わせ、空間や働き方をコーディネートできる人材を育成する。2026年度に認定目標人数90人と設定している。

2025年度の強化ポイント:人材育成