リコー、自社製オンプレミス型LLMと「Dify」で那須赤十字病院の退院サマリー作成を支援

　株式会社リコーは4月30日、栃木県大田原市の日本赤十字社那須赤十字病院（以下、那須赤十字病院）に、リコー製大規模言語モデル（LLM）をオンプレミス環境で提供したと発表した。AIによって「退院サマリー」の作成を支援し、医師の業務負担を軽減したという。なお提供内容は、「RICOH オンプレLLMスターターキット」として、リコージャパン株式会社が4月7日から提供を開始している。

　退院サマリーとは、入院患者が退院する際に、ほかの医療機関やケア施設の間で効率的に情報を共有し、当該患者の診察、治療、ケアを適切に連携・継承できるよう、入院診療の主治医が作成する文書である。栃木県北地域唯一の三次救急医療機関である那須赤十字病院では、看護師による報告書やリハビリ記録など、入院中のさまざまな情報を参照しながら、医師が退院サマリーを作成してきたが、この作業が医師にとって大きな負担になっていたという。

　リコーは今回、オンプレミス環境に自社開発のLLMおよび生成AIアプリ開発プラットフォーム「Dify」を導入し、電子カルテシステムと連携させることで、退院サマリーに必要な情報を要約し、ドラフトを自動生成するアプリケーションの導入を支援した。医師はこのドラフトをもとに退院サマリーを作成できるため、文書作成にかかる事務的な負担が軽減され、患者の診療、患者やその家族への説明といったコミュニケーションに、より多くの時間を割けるようになるとした。

　なお、このアプリケーションは今後、一部の医師によって実業務での活用が始まり、順次院内に展開される予定。リコーでは今回、オンプレミス環境で稼働するGPUサーバー、リコー製700億パラメータのLLM、「Dify」、およびその他AI動作に必要なソフトウェアやサポートサービスを提供しているが、さらに病院担当者に対して、「Dify」の活用に関する教育を提供する予定で、将来的には病院自身による市民開発の推進を通じて、院内のさまざまな業務におけるAI活用が期待されているとのことだ。