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マネーフォワード、“バックオフィスにこだわった”AI事業戦略を発表

 株式会社マネーフォワードは2日、AI戦略「Money Forward AI Vision 2025」を発表した。「№1バックオフィスAIカンパニーへ」というビジョンのもと、1)全サービスにAIエージェントを導入しバックオフィス業務を自動化・自律化、2)オープンなAIエージェントプラットフォームを提供、バックオフィス向けAIエージェントエコシステムを構築、3)中堅・エンタープライズ企業、金融機関へAXコンサルティングを提供――という3つを実施する。

 マネーフォワード 代表取締役社長 グループCEOの辻庸介氏は、社内AI活用、AI搭載新製品などAIインパクトによって、一人あたり売上高を2024年度の約1500万円から2025年度には約3000万円まで拡大するという目標を掲げ、「個人的にはもっとできるのではないかと期待しているところもある。AIを活用した新機能、新プロダクトを作ることにすごく可能性があると考えているからだ。テクノロジー進化とともに、AIもどんどん、どんどんアップデートされていくので、AIビジョンもアップデートしながら、ユーザーの皆さんにより良いサービスを届けていきたい」とアピールした。

株式会社マネーフォワード 代表取締役社長 グループCEOの辻庸介氏

DXからAXへ事業の注力ポイントをシフト

 マネーフォワードは、SaaS、フィンテックを中心に60以上のサービスを提供。法人と個人事業主40万以上の事業所の顧客と、個人向けサービスでは1664万ユーザーを持っている。

 今回、サービス提供によって進めてきた、人がITやクラウドを活用することによって業務を効率化するDX(デジタルトランスフォーメーション)実現から、AIが自律的に動き業務を変革するAXへと、事業の注力ポイントを大きくシフトする。

DXからAXへ

 「ご存じの通り人手不足が続き、中小企業のバックオフィスでは経理の人材獲得ができず、大変な状況が続いている。ここで、AIが自律的に動いて業務を変革していく、デジタルワーカーの世界になっていくことで、人員数がかなり少ない状況でも、高クオリティなバックオフィス業務が実現するのではないか。人手不足に悩む、中小企業にAIの力を提供していく。これからのマネーフォワードは、ナンバーワンのバックオフィスAIカンパニーになっていきたい。全リソースをAI関連に振り向け取り組んでいく。当社の試算では、これまで提供してきたデジタルツールは2.2兆円市場だが、デジタルワーカー市場は13.3兆円市場の規模があると考えている。かなり大きなマーケットにアクセスできるとワクワクしている」と辻社長は話した。

 また、デジタルワーカー市場におけるマネーフォワードの強みとして、大規模なユーザーベース、広範なプロダクトラインアップ、豊富なデータ資産、継続的なユーザーフィードバック、最先端技術の積極採用、多国籍な開発チームがあることを挙げ、「開発のケーパビリティをあげていくためには、やはりAI実装が肝になってくる。当社には40カ国以上のエンジニアが在籍し、日本だけでなく、インド、ベトナムにも開発拠点があり、かなり開発スピードを上げていけると考えている」(辻社長)と説明した。

AI時代のマネーフォワードの強み

 社内のAI活用にあたっては、3年前からCEO直下でAI推進室を設置。社内横ぐしでAI活用に取り組み、開発だけでなく、社内全体にAIを導入し、カスタマーサポート業務の対応効率を2倍以上に向上させるほか、セールスにおける一人あたりの商談獲得数や受注金額の2倍以上向上、開発業務についてもコーディングエージェント活用による開発生産性を2倍以上向上、といった目標を掲げている。

 ここにAIを活用した新プロダクトなどを加え、社員一人あたりの売上高を2024年度の1500万円から2025年度には3000万円と2倍にすることを目指す。

 既存プロダクトでのAI活用についても推進する。ChatGPTとのAPI連携で提供する「マネーフォワード クラウド会計Plus for GPT」では、中堅企業・上場企業向けに、貸借対照表・損益計算書を読み解き、異常値の検出とアドバイスを行う。

マネーフォワード クラウド会計Plus for GPT

 「マネーフォワード クラウド契約」では、契約書の文字情報を企業ごとにカスタマイズした管理項目も含めてAI-OCRが読み取り、台帳化する。AIによる一括読み取りは1000件まで可能で、契約管理に必要な情報も自動入力され、業務を効率化する。

マネーフォワード クラウド契約

 「MoneyForwardクラウド人事管理」では、「雇用契約書、正社員向け、社名は株式会社○○、表形式」など、指示を入力するだけで、作りたい人事関連書類のテンプレートを自動生成する。

マネーフォワード クラウド契約

 こうしたプロダクトとともに、AIエージェント開発を進める。バックオフィス業務のベストプラクティスを生かしながらAIエージェントの開発を目指す。

 「ある有名な経営者が、SaaS is deadと話したことが業界内でかなり話題になった。これまでのSaaSはユーザー自身が入力・承認といった作業をすることが必要だった。これからのSaaSの世界では、AIエージェントに置き換えられることで、UI部分はいちいち入力しなくて済むようになっていくのではないか。入力もテキストに加え、音声入力なども使われ、UXも大きく変化することになるだろう。ただし、裏のロジックやデータ自体はそう変わらない。実は勤怠サービスは、打刻入力のロジックなどを作るのが大変なのだが、今後はデータとロジックが非常に重要になっていくのではないかと考えている」(辻社長)。

SaaS is "NOT" dead.

 現在は各社がAIエージェント開発に取り組んでいるが、マネーフォワードでは、データとロジックをポイントとして、自律的にバックオフィス業務を行う、バックオフィスの専門家として高い専門性、新たなデータやロジックから賢く成長し続ける――という特徴を持ったAIエージェント開発を進める。

 また、マネーフォワード自身のサービスだけでなく、他社のSaaS、コミュニケーションツールなどと連携可能な、オープンなエコシステムによるAIエージェントプラットフォーム構築を進めるとした。

 データについては、モデリングされたデータ、大量データの蓄積、高速検索・集計、セキュリティ、内部統制などを実現したデータマートを新たに開発。このデータを活用しながら動くAIエージェントとすることを想定している。

専門性の高いエージェントを実現するデータマート

 マネーフォワードでは、経費精算などにまつわる業務を支援する経費AI Agent、経理担当者に替わりリマインドや異常値チェックを行う会計AI Agent、会計事務所向けに顧問業務を支援するAI Agent、人的資本に関するデータを収集し、分析・表示などを行うHR AI Agentなどを想定しているという。

 AIエージェントは、マネーフォワード以外の企業が提供するものも登場することを想定し、他社も含め、さまざまなAIエージェントがマネーフォワードが提供するSaaSとつながり、ユーザーにとってもっと便利になる環境を構築することを目指す。

他社を含め、さまざまなAIエージェントとの連携を想定

 AIを導入する企業に対しては、マネーフォワードとグループ会社を含め500社以上のバックオフィス業務コンサルティングを提供してきた実績をもとに、AXを推進するコンサルティング事業を新たに立ち上げる。企業から状況を聞き取り、業務プロセス改善ポイントを洗い出し、その上で最適なプロセス設計を行い、適したAI活用を設計する。さらに実装、運用支援までトータルでサポートする。

 「グループ会社であるMoney Forward Xでは、金融業向けビジネスを行っているが、金融機関自身がAI活用などで業務見直しをしたいというニーズが高まっている。金融機関向けのAXコンサルティングについても、専門で手掛けていく」(辻社長)。

バックオフィス向けAXコンサルティングの提供内容

 今後のスケジュールとしては、2025年中にAIエージェントを順次リリースしていく。また、バックオフィス向けAIエージェントプラットフォームで連携を希望するパートナー企業の募集は既にスタートしており、AXコンサルティングについても募集を開始する。