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SCSK、ノーコード開発サービス「CELF」で生成AI機能を強化

 SCSK株式会社は13日、同社が開発・提供するノーコード開発サービス「CELF(セルフ)」に、「Microsoft AI Co-Innovation Lab」の支援の元で、生成AI機能を組み込み、ユーザー機能を強化したと発表した。これにより、CELFの提供価値である、Excel業務の効率化や自動化、データ利活用、リスク回避に加え、これまで人的な作業が必要だった複雑かつ考える業務を、AIが実務者に代わって対応可能にする。

 CELFは、実装予定のAI機能の精度向上や、最新の構成や手法を確認するため、Microsoft が2024年に提供を開始したAzure Cosmos DBが持つベクトル検索機能を用いて、RAG(検索拡張生成)の精度検証を、Microsoft AI Co-Innovation Labの支援を受けて実施した。

 文章データや画像データなどを数値ベクトルに変換するエンベディング技術を活用することで、従来のキーワードによる検索では困難な非構造なデータ検索が可能になる。例えば、従来の検索では「猫」と検索すると、「猫」という文字列だけが検索結果に表示された。しかし、Azure Cosmos DBのエンベディング技術を使うと、「猫」と検索した場合に、「ねこ」「ネコ」「cat」など同じ意味や似た意味を持つ語句も検索結果に含まれるようになる。これにより、ユーザーは柔軟で意味のある検索結果を得られ、検索の精度が向上する。

 また、AIを活用する際に、機密情報が生成AIに利用されてしまうリスク排除するために、SCSKでは機密情報がAIの学習に使われないように設計されたAzure OpenAI Serviceのセキュリティ面の優位性を評価し、Microsoftとの共同検証を選択した。これにより、企業の機密情報を安全に保護しながら、生成AI機能を活用できる。日本企業のAI浸透を進めるため、SCSKグループ技術戦略を推進する技術戦略本部と共同で、社内バックオフィスの事務業務効率化やデータ利活用に適用するとともに、そのユースケースや技術情報を一般公開するとしている。

 CELFで作成されるアプリは、Excelの操作性に近い表計算機能や大量データ管理を特徴とする。CELFのデータベースに蓄積された社内の独自データ(RAG)を元に生成AIを活用し、データの分類やランキング、分析・予測などの業務に利用することを想定している。また、データ入力作業の自動化や入力・チェックミスの是正など、多岐にわたる業務での活用を可能にする。

 例えば、AIは営業担当の代わりに、過去の商談履歴や契約実績、企業情報を基にターゲットを選別し、営業メールを自動で作成・配信できる。その他、紙の領収書や注文書のデータ取り込み・自動転記、アンケートや調査結果の分類・要約、紙およびデータの申込書の不備チェック、認証補助、製品の問い合わせに対する自動解答の作成(FAQ検索)、アポイントトークや提案資料の作成といったユースケースを挙げている。

 SCSKでは、3月末の生成AI機能のβ版の提供開始に伴い、13日からこの機能の実証実験に協力する企業の募集を行い、業務改善の可能性を検証し、具体的なユースケースを創出する。また、これらのユースケースに対応する機能開発を継続的に行い、日本全体でのAI 活用促進と人材不足の解消への貢献を目指すとしている。CELF AIの正式版リリースは6月中旬予定。

 SCSKは今後、「業務特化型エージェントサービス」の提供を予定する。例えば、営業事務のAIエージェントサービスでは、受信したメール内容をAIが理解し、後続処理をプランニングする。見積もり依頼と認識した場合は、必要な見積書をCELFアプリで自動作成し、メールを自動送信する。注文依頼と認識した場合は、受注処理や製品発注処理などを自律的に判断し、自動で実施することが可能になる。

 また、CELFアプリやRPAロボのノーコード開発は、AIの導入によりさらに効率的になり、チャットで指示するだけで、アプリの設計から作成までの時間を大幅に短縮し、業務効率化を促進する。CELFは顧客のパートナーとして、業務担当者の生産性を最大化し、人材不足や人件費高騰などの経営課題に対する解決策を提供するサービスを目指すとしている。