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日本オラクル、業務向けクラウド「Oracle Cloud SCM/HCM」でAIエージェント機能を提供

 日本オラクル株式会社は12日、OracleのAIエージェントの取り組みに関する説明会を開催。米OracleのOracle AI担当グループ・バイスプレジデント、ミランダ・ナッシュ氏が説明を行い、Oracle Fusion Applicationsにおける最新のAIエージェントについて触れた。

米Oracle Oracle AI担当グループ・バイスプレジデント ミランダ・ナッシュ氏

 Oracleは2024年9月に、50を超える役割別AIエージェントを発表。さらに2025年1月には、Oracle Fusion Cloud Customer Experience(CX)におけるAIエージェントを発表したのに続き、新たにOracle Fusion Cloud Supply Chain Management(SCM)およびOracle Fusion Cloud Human Capital Management(HCM)にもAIエージェントを提供することを発表した。

 ナッシュ グループ・バイスプレジデントは、「すでに、OracleのエンタープライズソフトウェアのすべてにAIが埋め込まれている。Oracleは、信頼できるAIパートナーとして、業務に貢献できるAIエージェントに基づいたAIサービスを提供している。HRやSCM、セールス、マーケティングに関する品質の高い共有データを活用しており、信頼性が高いAIにアクセスできる。また、既存のサブスクリプション契約のまま、追加コストなしでAIが活用でき、ユーザーが利用する際の障壁を下げられる。そして、ユースケースに基づいて、最適なLLMを選択可能だ。これらの特徴は、OCIによるインフラレベルからアプリケーションレベルに至るまで、すべてにAIを組み込んでいるOracleだからこそ実現できるものである」と胸を張った。

Oracle Fusion Applicationsに直接組み込まれたAIのメリットを提供

 さらに、「Oracleは、10年以上前から予測AIを組み込み、50以上のユースケースで利用が可能である。その経験があったからこそ、生成AIにもいち早く対応でき、要約やカテゴリー分類、感情分析など、100以上のユースケースで利用が可能になっている。これは、HCM、SCM、EPM、ERP、CXなど多岐に渡り、生産性を高めて、品質を向上させ、これまでにできなかった自動化も実現している」としたほか、「2025年に入り、Oracleはエージェントの利活用を可能とすることに力を注いでいる。RAGを活用したQ&Aアシストをはじめ、複雑な処理ができるように、AIエージェントを進化させることになる」とも述べた。AIエージェントにおいては、50以上のユースケースを近日追加予定であることも示している。

Oracle Fusion ApplicationsにおけるOracle AIの進化

 また、ナッシュ グループ・バイスプレジデントは、AIエージェントの特性として、「言語」「コンテキスト」「アクションの実行」「推論」の4点を挙げ、「AIエージェントは、さまざまな言語を使って人と対話をする。また、大規模な企業データを読み込み、解釈し、必要とする結果を見極めることができる。さらに、AIエージェントは、LLMが作成したアクションプランをもとに次のステップを判断し、意思決定を行い、自律的にアクションすることになる」と述べた。

AIエージェントの特性

 新たに発表したOracle Fusion Cloud SCMでは、新しいロールベースのAIエージェントによって、日常的なタスクを自動化できる。その結果、組織全体が、サプライチェーンに関する戦略的な業務に、より多くの時間を費やせるようになるという。

 例えば、AIエージェントは、業務プロセスをエンドトゥエンドで自動化し、特定のタスクや専門的な役割に合わせて、パーソナライズしたインサイトやコンテンツ、推奨する商品を提供できるという。

 「顧客エンゲージメントエージェントにより、カスタマサービスの担当者が、顧客に対応する際に必要とする情報を自動的に抽出し、課題を解決するだけでなく、外部のシステムと連携し、顧客のアクティビティを、ひとつのパッケージとして提供できる。セールス担当者の経験の有無にかかわらずに業務を効率化しながら、顧客への提案ができるといった活用もできるようになる」とした。

 また、調達、製造、メンテナンス、在庫管理、サステナビリティ、生産計画、製品ライフサイクル管理などの業務領域において、繰り返しが多い単純作業を自動化し、サプライチェーン担当者の働き方を変革して、生産性を向上させるように支援可能な点も特徴に挙げた。

 「調達ポリシーのアドバイザーとしての役割をAIエージェントに持たせることで、従業員が新たなノートPCを購入する際に、担当者と会話をするようにして、ポリシーに準拠しながら、正しく調達を行える。また返品の依頼があった場合にも同様に、AIエージェントが複雑なポリシーに準拠した形で、対応方法を提案してくれる。複雑なポリシーに対応した業務に関し、社員に代わってAIエージェントが対応することができる」とした。

 なおOracle Fusion Cloud SCMで提供されるAIエージェントとしては、以下のようなものがある。

・調達担当者が購買要求の作成、処理、履行を迅速かつ正確に行うことを支援する「調達ポリシーアドバイザー」
・設計エンジニアがメーカーやサプライヤーのオンボーディングプロセスを効率化するのに役立つ「製造業者のオンボーディングアドバイザー」
・製造および生産オペレーターの作業が手順ガイドラインや安全基準に沿っているかを確認するのに役立つ「業務手順アドバイザー」
・品質エンジニアが検査プロセスを効率化し、製品がコンプライアンス要件に準拠しているかどうかを確認できる「品質検査アドバイザー」
・倉庫担当者が出荷時の商品を適切に処理できるように支援する「マテリアルハンドリングアドバイザー」
クレームに対応する際に、情報に基づき、より迅速かつより一貫性のあるクレーム処理を支援する「クレームポリシーアドバイザー」
・運送業者が危険物ラベル規制に準拠していることを評価するのに役立つ「出荷ラベル処理アドバイザー」
・倉庫担当者が配送プロセスを効率化するのに貢献する「商品配送アドバイザー」
・サプライヤーが企業固有のポリシーやガイドラインに簡単にアクセスできるようにし、生産性を高めることができる「サプライチェーンコラボレーションアドバイザー」
・サステナビリティアナリストが企業のサステナビリティイニシアチブをより正確に報告することを支援する「サステナビリティポリシーアドバイザー」

Oracle Fusion Cloud SCMにおける最新のAIエージェント

 一方、Oracle Fusion Cloud HCMでは、AIエージェントを活用することで、人事部門およびビジネスリーダーを支援する。この結果、従業員の生産性向上を支援することができるようになる。例えば、キャリア開発、業績管理に関する質問に、人事部門の担当者ではなくAIエージェントが答えるほか、新たな社員が短期間に組織になじむための質問にも、AIエージェントが答えることになるという。

 「福利厚生に対する質問のほか、週末の残業の扱いはどうなるのか、休日出勤や残業の際の給与はどうなるのかといった質問にも回答し、タイムカードに基づいた処理もAIエージェントが行う。従業員にとって不必要なタスクを自動化し、従業員の作業を減らすことができる。従業員は、より意義がある仕事に集中でき、それにより、ビジネスの成長に貢献できるようになる」とした。

 具体的なAIエージェントとしては、以下のようなものが提供される。

・従業員の実行可能なキャリア形成の計画を支援する「キャリアプランニングガイド」
・従業員のパフォーマンス目標の設定と達成までのプロセスを支援する「パフォーマンスおよび目標アシスタント」
・従業員がスキルとキャリアの向上につながる学習やトレーニングの機会を見つけられるように支援する「学習およびトレーニングアドバイザー」
・従業員のタイムカード提出の自動化を支援する「タイムカードアシスタント」
・従業員の源泉徴収の理解と選択を支援する「源泉徴収ガイド」
・マネージャーがチームの基本給決定を検討する際に役立つ「報酬ガイドラインアナリスト」
・従業員が休暇および欠勤に関するポリシーを理解できるように支援する「休暇欠勤アナリスト」
・新規従業員がオンボーディングプロセスをスムーズに進めることができるように支援する「新規採用者のオンボーディングアシスタント」
・従業員が組織内の新たな機会を特定し、準備ができるように支援する「求職者アナリスト」
・従業員が会社から提供される福利厚生を最大限に活用できるよう支援する「特典および賞賛アナリスト」
・従業員がプロファイルを最新の状態に保ち、雇用上のマイルストーンに関する情報にアクセスできるようにする「個人情報と雇用情報アシスタント」
・従業員の雇用契約の管理を支援する「従業員契約アナリスト」

Oracle Fusion Cloud HCMにおける最新のAIエージェント

 なお日本オラクルの三澤智光社長は、2025年1月にメディアを対象にしたあいさつのなかで、「2025年は、ビジネスアプリケーションの世界が、AIエージェントによって、大きな変化を及ぼす1年になる」とコメント。「クラウドネイティブなOracleのアプリケーションに、AIが実装され、それが定期的にアップグレードし、AIによって進化しても、別途費用がかからずに利用できる仕組みを提供することができる。エンタープライズAIの普及において、Oracleは先頭を走り、お客さまのためのAIを推進していく」と自信を見せていた。

 Oracleによる相次ぐAIエージェント関連の発表は、その発言を裏づけるものだといえる。