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HPE、ターンキー型のプライベートクラウド向けAI処理基盤「HPE Private Cloud AI」
“お手ごろ価格”のサーバー仮想化ソフト「HPE VM Essentials」も
2025年1月29日 06:00
日本ヒューレット・パッカード合同会社(HPE)は28日、企業が独自データを活用した生成AIアプリケーションやバーチャルアシスタントの立ち上げを短時間で行える「HPE Private Cloud AI」、スタンダードな仮想化機能をスタンダードな価格帯で提供する「HPE VM Essentials Standalone/Embedded-PCBE」の提供を開始すると発表した。
他社が提供する仮想化ソフトウェアの値上げが話題になったが、今回、1プロセッサあたり年間10万円台で利用可能な仮想化ソフトウェア、ターンキーで立ち上げを短期間に実現するAI環境を提供する。
HPE 執行役員ハイブリッドソリューションズ事業統括本部長の吉岡智司氏は、「企業が本格的にAI活用を行う際には、パブリッククラウドではなく、プライベートクラウド環境が必要になるが、日本企業は海外企業の動きに比べ遅れている。今回、導入が容易な環境を提供することで、3年、5年スパンで日本企業を積極支援していきたい」と述べた。
なおHPE Private Cloud AIは、米国では2024年6月に発表したが、日本では2025年2月から受注を開始し、4月から出荷を始める。
吉岡執行役員は、「ここ数年、HPEではハイブリッドクラウド環境をいかに簡単に活用できるようにするのかをテーマに製品開発を行い、市場展開してきた。AIというワークロードは、ハイブリッドクラウドを前提にした環境でないと開発が進まない。これまで推し進めてきたハイブリッド環境をそのまま生かし、一層、簡単に企業の皆さまがAI開発に突き進んでいけるという環境を用意する」と発表の趣旨を説明した。
なお日本での発表が大きくずれ込んだ理由としては、「今回のもうひとつの発表であるHPE VM Essentialsは、米国で昨年11月に発表しているが、両方に共通した領域があることから、日本市場では同時に発表を行い、すべての環境にHPE VM Essentialsを組み込み、Private Cloud AIも最初からHPE VM Essentialsを活用した環境を提供していこうということになった」(吉岡執行役員)と説明している。
企業向けAIをシンプル化する「Private Cloud AI」
吉岡執行役員は企業のAI活用について、「一部のお客さまはパブリッククラウドを利用しているが、競争力を高めるためにはパブリッククラウドではなく、プライベートクラウド環境でAI利用が必須となるはず。海外の企業はすごいスピードでAI環境構築に取り組んでいる。日本企業も真剣にAI活用環境を整えなければ、競争に勝つことができなくなる。そこで3年、5年といったスパンでPrivate Cloud AIを積極的に進めていきたい」とアピールした。
Private Cloud AIは、企業向けAIをシンプル化する共同開発ソリューション。NVIDIAと共同開発したNVIDIA AI Computingによって、ターンキー型であるため、AIアプリケーションを瞬時に立ち上げることができる。
「PoCではなく、AI活用本番化する際の課題として、商用AIサービスを利用する場合、セキュリティへの懸念で本番業務でのAI利用を制限するケースや、利用拡大する際に膨張するコストも課題となる。オンプレ型の場合、フルコントロールできることは魅力的であるものの、自前で対応していくことは容易ではない。これらの課題を考えるとCloudの利便性、オンプレITの制御性を両立するソリューションが必要ではないかということが、今回の共同開発に至った背景となる」(HPE ハイブリッドソリューションズ事業統括本部 GreenLakeソリューションビジネス本部 ビジネス開発部 シニアカテゴリーマネージャーの寺倉貴浩氏)。
企業がAI活用のために導入を行う場合、新たなスキルの習得、複雑なワークロードの採用が必要となる。構成や統合の対象は、エージェント、複数のマイクロサービス、ベクトルデータベース、データウェアハウス、異種データソース、ユーザー管理システム、スケールアウト推論サーバー、データセット、AIモデル、そしてさまざまなITリソースなど多岐にわたる。
そこでHPE Private Cloud AIは、NVIDIA AIコンピューティング、ネットワーキング、ソフトウェアと、HPEのAIストレージ、コンピュート、HPE GreenLakeクラウドを密接に統合。あらゆる規模の企業が生成AIアプリケーションの開発と展開を行うことを支援する。IT運用のワークロードとIT効率の向上を支援する新しいOpsRamp AIコパイロットを搭載し、フルライフサイクル管理を提供するセルフサービスのクラウドエクスペリエンスによって、最適にサイジングされた4種類の構成で、広範なAIワークロードとユースケースをサポートする。
バーチャルアシスタントをワンクリックで実装し、数秒で利用できる、ソリューションアクセラレータを提供する。カスタマイズ可能で、モジュール化されたローコードまたはノーコードのソリューションアクセラレータが実現したのは、NVIDIA NIM推論マイクロサービスによって実現したもので、エンドツーエンドで開発プロセスをシンプルに、価値実現までの時間を短縮する。
SI企業とのパートナーシップとして24年6月時点でデロイト、HCLテック、TCS、ウィプロ、インフォシスと連携することを発表したが、国内ではSCSKと連携することを発表している。
サーバー仮想化ソリューション「HPE VM Essentials Software」
2月末から提供開始するサーバー仮想化ソリューション「HPE VM Essentials Software」は、コスト削減に寄与する商用グレードのハイパーバイザー。ライフマイグレーション、HA、スナップショット、バックアップソフトウェアとの連携によるデータ保護、ディザスタリカバリなど、多くのユーザーが必要とする機能を提供する。
「高機能、高付加価値の仮想化ソフトウェアが必要なユーザーは、他社製品を選択してもらえば。当社のHPE VM Essentials Softwareは、スタンダードな価格帯で、標準的な機能を提供する製品となっている」(HPE ハイブリッドソリューションズ事業統括本部 GreenLakeソリューションビジネス本部 ビジネス開発部 部長の小川大地氏)。
ベーシックな機能を規模の小さな環境で利用する場合、1年間で10万円程度の利用料金となることを想定しているという。
既存のVMware仮想環境の統合や、マルチクラウド対応のPlatformOpsへのアップグレードパスとしての利用を想定。サポートとエコシステムとしては、エンタープライズグレードで行っていく。
OSとしてはUbuntuで動作し、基本的にはHPE製ハードウェア環境でのみサポートを行う。「我々のサポートを必要とせず、お客さま自身が別のハードウェアを利用することや、システムインテグレーションやサポートビジネスを行っている企業が他社製ハードウェアを利用する場合は、当社はサポートを行わないものの、利用自体は行ってもらってかまわない」(吉岡執行役員)。