ニュース
理化学研究所、「富岳」の次世代となる新たなフラッグシップシステムの開発・整備を発表
2025年1月24日 13:46
理化学研究所(以下、理研)は22日、スーパーコンピューター「富岳」の次世代となる新たなフラッグシップシステムの開発・整備を1月に開始すると発表した。
理研は、「次世代計算基盤に関する報告書 最終取りまとめ」(2024年6月文部科学省HPCI計画推進委員会)において、新たなフラッグシップシステムの開発主体とされており、2024年度総合経済対策および2024年度補正予算に基づいてプロジェクトの開始を前倒しする。
理研では、日本の科学技術・イノベーションが世界をリードし、社会や産業を発展させるためには、これまでのスーパーコンピューターで追求してきたシミュレーション性能だけではなく、シミュレーションとAIの両者において世界最高水準の性能を達成し、さらにシミュレーションとAIとが密に連携して処理を行いつつ、科学上の仮説生成や実証を含むサイエンスを自動化・高度化する「AI for Science」のための、新たな計算基盤の実現が欠かせないと説明。
新たなフラッグシップシステムは、こうした状況を踏まえつつ、最終取りまとめおよび「次世代計算に係る調査研究事業」の結果に加え、理研がこれまでスーパーコンピューター「京」「富岳」の開発・運用を通じて得られた経験と教訓を生かし、社会ニーズに応え、あらゆる分野における産学官の利用者に活用される次世代計算基盤の開発を目指すとしている。
また、理研で2023年度から推進している「最先端研究プラットフォーム連携(TRIP)」をはじめとする研究開発事業として生み出した、「AI for Science」や「量子HPC連携プラットフォーム」に関する成果や知見も活用していく。
今後は、速やかに基本設計を進めることとし、理研とともに基本設計を行う民間企業(ベンダー)の公募・選定に関わる手続きを進めていく。また、プロジェクト推進の中核となる新たな組織を、理研計算科学研究センター(R-CCS)に設置し、R-CCS内の研究開発組織だけでなく、TRIPなど理研内の研究組織/プロジェクトとの協業や、広く国内外の大学および研究機関と連携し、プロジェクトを推進する。
理研では、「富岳」の次世代となる新たなフラッグシップシステムの開発上のコードネームを「富岳NEXT(英語名:FugakuNEXT)」と名付け、「富岳NEXT」プロジェクトの進捗状況を情報発信していく予定としている。
「富岳NEXT」のシステム構成については、今後の「AI for Science」の発展を見据えつつ、既存HPCアプリケーションで現行の5~10倍以上の実効計算性能、AI処理でゼタ(Zetta)スケールのピーク性能を念頭に、50EFLOPS以上の実行性能を実現するシステムの開発・整備を目指す。そして、シミュレーションとAIの融合により、総合的に5~10倍の実効計算性能向上を超える数十倍のアプリケーション実行高速化を達成することを目標としている。
「富岳NEXT」では、アプリケーションの実行性能を最優先として開発・整備を行う「アプリケーションファースト」を理念としつつ、電力制約下でも前述の目標を達成するために、「富岳」で培ったアプリケーションソフトウェアなどの資産を有効活用できる電力効率の高いCPU部と、帯域重視の演算処理加速部を組み合わせた、高帯域およびヘテロジニアスなノードアーキテクチャを基本構成としたシステムを想定している。
また、「富岳NEXT」の運用開始直後から科学的な成果を創出していくためには、既存アプリケーションコードをあらかじめ加速部へと移植し、準備を進めていく必要があるとして、そのため演算処理加速部には、ユーザーにとって扱いやすく、またベースとなる加速部アーキテクチャが現状で広く利用可能であることを重視して、システム検討を進める。
プロジェクトの事業地については、フラッグシップシステムの運用の「端境期」がなく、適時・柔軟に入れ替えまたは拡張可能、かつ、現在、運用している「富岳」との連携や、既存設備の有効利用などの観点を踏まえ、検討していくとしている。