ニュース

AWSジャパン、SaaSの開発やビジネス拡大を支援するISV向けプログラムを国内で開始

 アマゾン ウェブ サービス ジャパン合同会社(以下、AWSジャパン)は13日、「AWS SaaS支援プログラム」をスタートした。新たにSaaSを開始する企業に対する支援、競争力あるSaaSを開発するための技術支援、ビジネスを拡大するための支援と三層の支援策を提供していく。

 AWSジャパン 常務執行役員 デジタルサービス事業統括本部長の佐藤有紀子氏は、「日本でSaaSビジネスを行う企業をこれまで以上に強力に支援できるよう、このプログラムを立ち上げる。独立系ソフト開発会社への支援はもちろん、新たにSaaS外販を開始するエンタープライズ企業への支援も行っていく。大都市だけでなく、地方にある企業のSaaS事業立ち上げ支援、海外展開支援も行う」と、新プログラムの狙いを説明した。

アマゾン ウェブ サービス ジャパン合同会社の常務執行役員 デジタルサービス事業統括本部長、佐藤有紀子氏

 今回のAWS SaaS支援プログラムは、日本独自のサービスとなる。「ソフトを巡る状況を日本と海外で比較すると、海外ではもっとソフトのSaaS化が進んでいる。また、(ソフトウェアビジネスを手掛ける)企業がビジネスとして成功するため、やはりグローバルでフットプリントのあるソフトウェアが、日本からもっと出ても良いのではないかとも考えている。そのためには、Go-to Market戦略であったり、製品競争力強化なども必要ではないか。AWSジャパンとして支援していきたいということが、今回のプログラムをスタートした狙いとなっている」と佐藤常務執行役員は説明する。

 支援プログラムとしては、次の3つのフェーズで支援策を提供する。

1)Migrate to AWS(SaaSをはじめる)
2)Innovate with AWS(競争力のあるSaaSをつくる)
3)Scale with AWS(SaaSビジネスを拡大する)

AWS SaaS支援プログラムの概要

 これらのうち1)は、SaaSビジネスをスタートさせたい企業を対象に、パッケージソフトウェアのSaaSificationを支援するほか、エグゼクティブ向けセミナー、AWS移行支援、各種クレジットプログラムの提供などを行う。

 オンプレミスのパッケージソフトを提供している会社の中には、SaaSやAWSに関する知識不足で、SaaSビジネスに進出していない企業も多いと推測。こうした企業に対しての支援もここで提供する。

 またSaaS移行計画支援としては、SaaS Journey Framework、テクノロジーチェックリスト、商品ラインアップヒアリング、商品計画ヒアリングなど、具体的な支援プログラムを提供する。

SaaS移行計画の策定支援

 2)の、競争力あるSaaSをつくることを模索する企業に対しては、モダナイゼーション、アジャイル開発力強化、生成AI活用などを支援するほか、ビジネス・技術の個別課題に合わせた各種支援を提供するとした。

 AWSでは、クラウドネイティブなSaaSによってスタッフの生産性が80%向上することや、インフラコストが39%削減されるといったデータを示し、競争力のあるSaaS作りを支援するとしている。

クラウドネイティブ化はビジネス価値を加速

 3)のビジネス面での支援策としては、AWS Marketplaceでの販売、AWS Global Passportでの海外展開など、Go-to Marketを支援。AWSパートナーネットワーク(APN)プログラムを活用した支援も提供する。

 なおAWS Marketplaceでは、ソフトウェア、データ、サービスの総合調達基盤として、70種1万3000以上のソフトウェアが調達可能となっているほか、日本円でプライベートオファーとして、日本の銀行口座で出品することも可能で、日本円での見積もり・決済も可能とした。

AWS Marketplace出品を支援

 また、3)で提供されるAWS Global Passportは、海外進出を検討する企業への支援策。SaaSグローバル展開の専門コンサル企業による戦略的評価、海外に向けたセキュリティ、コンプライアス・アーキテクト対応支援、AWSネットワークを活用した販売支援などを行っていく。大々的なプログラムスタート前に、ソラコムをはじめ9社がプレローンチ企業として参加しているという。

AWS Global Passport

 これらの支援プログラムについては、基本的に無料で提供されるが、AWSの利用についても経済的負担を軽減するクレジット提供などを行い、SaaSの企画・移行から設計・構築、改善・強化、販売促進・海外進出と、広範囲な支援を行っていく。

AWS SaaS支援プログラム

 また今回、異なる環境にある複数の企業が支援プログラム利用企業として登壇した。登壇したのは、統合人事システム「COMPANY」を提供するWorks Human Intelligence、海外ビジネスを展開する先行企業に選ばれたソラコム、地方発でSaaSビジネスに取り組むデジタルキューブの3社。それぞれの立場から見た、AWSと連携してSaaSビジネスを展開している状況を紹介した。

 Works Human Intelligenceは、「30年にわたり、大手法人向け統合人事システムであるCOMPANYの開発・販売を行ってきた企業として、日本のHRテックのリーディングカンパニーと自負している」(Works Human Intelligence最高戦略責任者の高橋総一郎氏)とあいさつ。

 現在SaaSシフトを加速しているが、クラウド利用が難しい顧客への提案や、SaaSの開発・サポート体制の構築などについてAWSの協力を得たことを説明した。今後は生成AI活用に取り組み、「お客さまにとってより価値のあるサービスとして提供していきたい」という。

株式会社Works Human Intelligence 最高戦略責任者兼Partner Div,統括の高橋総一郎氏

 ソラコムは、AWS Global Passportを正式スタートする前の試験プログラム時点で、世界6社の中の1社として採用された。今回、プレゼンテーションを行ったソラコムCTOの安川健太氏は、ソラコム米国法人のCEOを兼務し、普段は米国で活動している。「AWSからの海外展開支援として、セールス案件支援や共同マーケティングによってリード獲得の支援などを受けている。海外展開の支援例として、AWS事例サイトにも我々の事例を掲載してもらっている」と述べ、ビジネスのグローバル展開につながったことを述べた。

株式会社ソラコム CTO兼CEO of Americas、安川健太氏

 デジタルキューブは、兵庫県神戸市に本社を置く企業。代表取締役社長の小賀浩通氏は、「地方に本社があることで、ヒト・モノ・カネ、さらに情報へのアクセスができにくい現実がある。これを変えるためにフルリモートでの働き方など、地方にいても隔たりなくビジネスすることを目指した」と説明。グローバルで提供あるAWSを活用しビジネスを行うことで、地方発でも最先端テクノロジーを活用したビジネスが可能となったと話した。

株式会社デジタルキューブ 代表取締役社長の小賀浩通氏