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AWSがガバメントクラウドへの取り組みを説明、名古屋市の事例も
2024年10月23日 11:00
アマゾン ウェブ サービス ジャパン合同会社(以下、AWS)は22日、ガバメントクラウド推進に向けたAWSの取り組みについて説明会を開催した。その背景には、デジタル庁が「地方公共団体情報システム標準化基本方針」を打ち出し、2025年度までにガバメントクラウドを活用した標準システムに移行できるよう推進していることがある。
冒頭のあいさつに立ったアマゾン ウェブ サービス ジャパン 常務執行役員 パブリックセクター統括本部長の宇佐見潮氏は、「AWSはグローバル規模で公共領域の顧客のDXを支援しており、テクノロジーとデータの民主化や、堅固なセキュリティ、スケーラビリティ、アジリティ、そして生成AIサービスなどを、世界中の公共部門の顧客に届けている」とコメント。また、今年1月にはAWSが2027年までに2兆2600億円を国内のクラウドインフラに投資すると発表したことについても触れた。
続いてアマゾン ウェブ サービス ジャパン パブリックセクター官公庁事業本部 本部長の大富部貴彦氏が、実際の取り組みを説明。AWSではクラウドスキルの育成を目指し、「2022年より都道府県別の説明会や月次オンライントレーニングを開催しているほか、自治体向けガバメントクラウド情報を集約した情報サイトを用意している」と紹介した。
ガバメントクラウドへの移行支援としては、ガバメントクラウドの利用タスクリストを作成、やるべきことをリスト化したテンプレートや構成例を用意し、最適なクラウドが構成できるよう支援している。また、AWS公共部門パートナープログラムを通じ、ガバメントクラウドのアプリケーション、ネットワーク、インフラに関わる事業者を支援している。
AWSプロフェッショナルサービスでも、ガバメントクラウドへの移行に向けた支援メニューを用意した。さらには、最適なクラウドの見積もりを得られるよう、活用のヒントとして「見積もりで注意すべきポイント」をまとめている。
このほかにも、さまざまなセミナーを通じてAWSユーザーコミュニティを醸成し、ガバメントクラウドに関わる情報交換や連携の場を提供しているという。
ガバメントクラウドへの移行完了後は、「クラウド利用の適正化と、スマートなクラウド利用、そしてデジタル人材の育成に努めたい」と大富部氏は語る。
「クラウドに移行した後はリソースを可視化できるため、利用率を監視してサイジングを見直し、利用料の適正化に取り組みたい。また、マネージドサービスの活用やアプリケーションのモダン化により、スマートなクラウド利用を推進したい。さらに、インフラを保有するモデルから利用するモデルに変えることで、保守運用に関わる職員の工数を削減したいと考えている」と大富部氏は述べた。
単独利用方式を採用した名古屋市
説明会では、実際にガバメントクラウドへの移行に取り組む名古屋市 総務局 行政DX推進部 デジタル改革推進課 課長補佐(システム標準化担当)の高橋広和氏も登壇し、具体的な施策について語った。
名古屋市の基幹業務システムは、システムの稼働年数が長く技術的負債が大きいことや、マルチベンダーかつ個別最適化を重ねたことで仕組みを変えるのに時間がかかること、自営データセンターが老朽化し継続利用が困難だという課題を抱えていた。そこで、「システム標準化を好機ととらえ、積極的にガバメントクラウドの活用を検討した」と高橋氏は語る。
2022年度にはガバメントクラウドの利用にかかる要件を検討、AWSの知識を習得した。2023年度に税務総合情報システムを移行し、ガバメントクラウドの利用を開始。2024年度には保険年金システムや福祉総合情報システムなど、基幹業務システムの移行を開始している。「2025年度までには、システム標準化の対象となる20業務のうち18業務の移行を完了する予定だ」(高橋氏)という。
名古屋市では、国が推奨するガバメントクラウドの共同利用方式ではなく、単独で環境を利用する方式を採用した。その理由について高橋氏は、「1点目は、名古屋市が方針を主体的に決め、事業者の調整事項を削減することで意思決定が速くなること。2点目は、統一的なルールを適用することで、ガバナンスを確保し全体最適化が可能となること。3点目は、クラウド最適化によるコストメリットを直接享受できることだ」とした。
この方式で具体的に実現できることについて高橋氏は、「システムの最適化や環境整備によって業務の効率化が進み、間接的に住民サービスが向上できる。また、可用性の確保や大規模災害対策としても有効だ。これまでの遠隔地でのバックアップでは、RTO(目標復旧時間)が1週間以上、RPO(目標復旧時点)が1カ月以上となっていたが、新システムではRTOが数時間、RPOは数分間まで短縮できる」と述べた。
ガバメントクラウド向けソリューションを提供する株式会社日立システムズで、公共・社会事業グループ 業務役員 統括事業主管を務める穴山泉氏は、今後の課題として、「現在ガバメントクラウドの利用料は国が負担しているが、来年度からは自治体の負担となることが想定される。そのため、現在のように使い放題で利用していると、パブリッククラウドのコストメリットが十分享受できない可能性がある」と指摘する。その対策として、「今後はシステムの稼働状況をモニタリングし、利用しない機器は利用時間を短縮することや、CPUやストレージなどは利用率に合わせたグレードまで下げるといったことが重要だ」(穴山氏)とした。