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AWSジャパン、日本企業のAWS移行を支援するパッケージに公共機関向けを追加

 アマゾン ウェブ サービス ジャパン合同会社(AWSジャパン)は5日、AWSへのシステム移行を支援する「AWS ITトランスフォーメーションパッケージ ファミリー」(ITX)において、公共機関向けのパッケージとなる「AWS ITトランスフォーメーションパッケージ 公共版」(ITX for PS)を発表した。

ITX for PSの全体像

 ITXは、AWSにシステムを移行することで顧客のITトランスフォーメーションを支援する日本独自のプログラム。2021年より提供しており、2024年6月時点で220社以上の顧客が利用しているという。

 AWSジャパン 執行役員 パブリックセクター技術統括本部長の瀧澤与一氏は、新たにITX for PSを提供する背景について、「デジタル改革基本方針の策定やデジタル庁の発足、GIGAスクール構想の環境整備にオンライン診療の規制緩和など、デジタル化がますます進みつつあり、クラウドの採用や適切な利用を促進するためのガイドラインも策定された。一方で公共機関では、システムのモダン化やそれに伴うコストなど、クラウド移行に関するさまざまな課題感を感じている」と説明、「日本の公共機関にあわせて従来のITXを拡張したITX for PSにより、そのような課題を抱える組織を支援したい」とした。

AWSジャパン 執行役員 パブリックセクター技術統括本部長 瀧澤与一氏

 ITX for PSでは、システムのモダン化を進めるための支援プログラムを複数用意している。そのひとつが、モダン化に向けたアセスメントプログラムだ。このプログラムでは、クラウド移行による経済メリットの試算や定量化を支援する経済合理性評価や、モダン化のポイントや今後のアーキテクチャ案を提示する検討支援、移行対象システムを俯瞰(ふかん)的に分析し、戦略的なクラウド移行パターンを推奨する移行方法検討支援、データベースの移行先となるマネージドサービスの検討を支援するDB移行支援、さらには現在のシステム環境を第3者機関が評価し、サードパーティーライセンスを最適化するライセンス評価支援などを提供する。

モダン化に向けたアセスメントプログラム

 モダン化の開発支援も実施する。顧客の要件に応じたモダン化アプリケーションのプロトタイプを作成し、実現性の検証や本番に向けた開発の参考にできる支援策を用意したほか、モダン化体験型ワークショップも展開する。ワークショップは、実際にクラウド利用やモダン化が体験できるもので、AWSの専門員がパイロットシステムのモダン化をサポート、移行フェーズにも役立つノウハウや成功体験が得られるという。

モダン化の開発支援

 また、コストの最適化のサポートも行うという。具体的には、マネージドサービスの活用など、コスト最適化のベストプラクティスを基にしたコスト削減余地を分析。また、ワークショップにてコスト最適化に向けた知識や技術も伝える。

 公共専門分野に特化した支援策としては、同分野の専門知識や技術知識を持つソリューションアーキテクトやプロフェッショナルサービスにて顧客の課題解決をサポートする。そのための公共向け設計支援テンプレートや、各種ガイドラインに対応するアセットなどのツールを用意する。

公共専門分野支援

 さらには、クラウド人材や組織育成も支援する。移行準備の評価として、AWSの専門チームがクラウド移行の組織的な準備状況をレポートで可視化し、準備不足の項目に対し効率的な方法を提案する。また、クラウド活用を推進する組織「クラウドセンターオブエクセレンス」(CCoE)の立ち上げを支援するほか、AWSに携わる要員のスキルギャップを特定し、トレーニングプランの作成を支援するなどして人材育成面をサポートする。

 さらには、移行時の経済的負担を軽減するプログラム「Migration Acceleration Program」(MAP)を活用し、公共分野での調達や仕様策定において、MAPとITX for PSの支援策を組み合わせた経済的効果を予測する。

クラウド人材・組織育成支援

 データプラットフォームを検討する際の支援も提供する。「Data Platform Modernization Assessment」(DPMODA)として、AWSの専門チームが顧客の現行データ基盤を分析、モダン化のポイントやアーキテクチャの未来像を提示する。これにより、現行データ基盤の成熟度を把握し、データプラットフォーム戦略の策定に活用できるほか、あるべきアーキテクチャの検討を通し、単純移行にとどまらない、クラウドでの機能強化のヒントが得られるという。このデータプラットフォームの検討支援は、ITX for PSだけでなく「ITX for Cloud Native」でも新たに提供する。

データプラットフォームの検討支援

 このほか、公共分野における生成AIの代表的なユースケースの検討も支援する。この分野のクラウド技術をサポートするエンジニアチームが取りまとめたユースケースを活用し、実際のプロトタイプ案件で培った知見をベースに、コードとテンプレートを用いて実装をサポート。具体的なユースケースの例として瀧澤氏は、検索拡張生成(RAG)によるチャットボットや、教育機関でのテスト問題の生成、病院における退院サマリの生成や問診の書き起こしなどを挙げている。

公共領域ユースケース生成AI活用検討支援

 瀧澤氏は、「AWSでは、クラウドへの移行によってテクノロジとデータの民主化が実現すると考えている。ITXのようなプログラムを通じ、さまざまな人がデジタルの恩恵を享受できる社会になるよう貢献していきたい」と述べた。