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郵便料値上げで電子請求書発行とのコスト差分が年間1000万円以上に――、ラクスがその影響を解説

 株式会社ラクスは30日、10月より実施される郵便料金の値上げと、2018年の経済産業省による「DXレポート」にて提唱された「2025年の崖」の影響について勉強会を開催し、デジタル化の重要性を強調した。

郵便料金の値上げを機にデジタル化が加速

 郵便料金の値上げに関する発表があったのは、2023年12月のこと。それ以降、ラクスの電子請求書発行システム「楽楽明細」の問い合わせが増加しているという。

楽楽明細の問い合わせ件数の推移

 ラクスが今月実施した調査によると、現在請求書を紙で印刷し郵送している企業は全体の69.4%。これらの企業は、郵便料金の値上げに伴いコストが増加することになる。

現在の請求書発行方法

 現在紙の請求書を発行している企業に、郵便料金の値上げに伴って請求書の発行方法を変更する予定があるかを聞いたところ、「すでに変更した」との回答が6.2%、「10月から変更する予定」との回答が11.5%で、値上げ前に対応できている割合は17.7%にとどまった。一方で、「変更する予定はない」との回答は50.6%と半数を超えた。

 ラクスでは、請求書を紙で発行し郵送する場合と、楽楽明細を導入した場合のコスト差分を試算。紙の請求書の発行件数が月500件の場合、人件費、値上げ後の郵送費、その他封筒代・紙代・印刷代などの費用を合わせて150万6000円となる一方で、楽楽明細では人件費とシステム利用料を合わせて55万2000円にとどまるという。つまり、郵送を継続した場合と楽楽明細を導入した場合では、コストの差分が半年後には約570万円、1年後には約1150万円、3年後には約3500万円にまで増大するというわけだ。

郵便発行と「楽楽明細」を導入した場合のコスト差分

 また、今年に入って楽楽明細を導入した企業の中には、経理担当者が1人で毎月500件もの請求書や納品書の発行を担当していたケースや、月5万件以上の請求書を丸2日かけて機械で封入するケースもあったといい、「コスト面のみならず、根本的な業務課題を解決するためにも、早期に電子化を進める必要がある」と強調した。

2025年の壁への対応が急務に

 もうひとつのテーマである「2025年の壁」とは、企業のITシステムが今後のDXに対応できない場合に生じるリスクを指摘したものだ。経済産業省のレポートでは、多くの企業が導入後20年以上経過したシステムを利用する中、システムのデータ活用ができないことや、老朽化・複雑化・ブラックボックス化が進んでいるといった問題が表面化しており、その対応の遅れによって2025年以降に年間最大12兆円の経済損失が生じる可能性があると警告している。

「2025年の壁」問題とは

 ラクスが今月実施した調査では、2025年の崖問題について内容を知っている割合は35.2%で、あまり認知されていないことがわかった。ただし、現在使用している基幹システムの老朽化に課題を感じている企業は52.7%にのぼり、半数以上が実際に2025年の崖問題に直面していることになる。

システムの老朽化を課題視する企業は半数以上

 基幹システムの老朽化対応でシステム改修や移行を行う際、障壁となることを聞くと、「膨大な費用がかかる」が38.4%、「スキルをもった人材が不足している」が28.6%だったという。

システム改修や移行の障壁

 既存のレガシーシステムや従来からの慣習を一気に変更することは容易ではないため、同社では「独立可能な特定の領域から段階的にクラウド化し、効率化を進めることで、結果的に業務全体の生産性向上につながる」としている。

 その上で、企業が最適な選択をするためのポイントとして、「改善すべき業務領域が何かを整理すること。また、既存の基幹システムで対応すべき領域と独立できる領域を整理し、独立できる特定領域にてスモールスタートでクラウド化を推進することだ」とした。