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NTT、光ファイバー伝送路の状態を測定器なしでエンドツーエンドに可視化できる技術を開発

 日本電信電話株式会社(以下、NTT)は20日、光ファイバー伝送路の状態を測定器なしでエンドツーエンドに可視化する技術を開発し、商用環境を模擬した北米フィールド網で世界初、世界最高精度の実証に成功したと発表した。同技術は、光ネットワークのデジタルツインの実現を大きく前進させ、IOWN APNにおけるエンドツーエンド光接続の迅速な確立/保守への応用が期待されるとしている。

 NTTグループでは、光信号を電気信号に変換することなく、エンドツーエンドで光接続することで、大容量・低遅延・低電力な通信を可能にする次世代インフラ「IOWN APN(All-Photonics Network)」の展開を進めている。この光ネットワークのデータ伝送容量を最大化するためには、光信号パワーなど光ファイバー伝送路の状態を全長にわたって監視し、適切に制御する必要があり、それらの実現に向け、光ネットワークのデジタルツインの適用が広く検討されているという。

 光ネットワークのデジタルツインは、サイバー空間上に再現された仮想的な光ネットワークで、その光伝送性能を分析/予測することで、現実の光ネットワークのデータ伝送容量の最大化や、障害予知などを迅速に実施可能にする。

 ただし、デジタルツインの実現に向けては、現実のネットワークの状態を精緻に再現するために、多数の専用測定器を用いた全拠点での測定が必要となるため、測定に時間とコストがかかる。ネットワーク異常が発生した場合には、高度なスキルを持った作業者が光時間領域反射計(OTDR: Optical time domain reflectometer)などの専用測定器を用いて、現地測定を行わざるを得ない場合もある。

 また、IOWN APNのように遠隔の顧客拠点間を光のまま接続する場合、光ファイバー伝送路の監視範囲を顧客拠点にまで拡大する必要がある。こうした複数組織にまたがる光ネットワークでは、セキュリティ上、管轄外のネットワークの状態(光信号パワーなど)へのアクセスが困難になる。

受信信号解析のみによる光ファイバー伝送路中の光信号パワーのエンドツーエンド可視化

 こうした課題に対し、今回の研究では、光ネットワークの端点に設置されている光トランシーバーに到達する光信号のみから、光ファイバー伝送路のエンドツーエンドの光信号パワーを、専用測定器を用いずにわずか数分で可視化するDigital Longitudinal Monitoring(DLM)技術を開発した。

 また、光信号パワーの可視化を距離方向だけでなく、時間、周波数、偏波方向にまで拡張した4次元光パワー可視化技術を開発。デューク大学、NEC Laboratories Americaとの共同実験のもと、商用環境を模擬した北米フィールド網で、世界初、世界最高精度の実証に成功した。

4次元(距離、偏波、周波数、時間)光パワー可視化技術
フィールド実証実験に使用した敷設光ファイバーマップと高密度WDMスペクトル

 これらの成果は、光ネットワークの構築に必要な光ファイバー伝送路状態の測定が、DLM技術を用いることで光トランシーバーのみで実施可能になることを示していると説明。これにより、専用測定器を用いずに顧客拠点間のすべての光ファイバーや光増幅器を一括測定可能になるため、光接続の設計や異常の特定にかかる時間を大幅に短縮できるとしている。

 NTTでは、今回開発した技術により、IOWN APNをはじめとした光ネットワークにおいて、専用測定器を用いることなく、わずか数分で簡易に光ファイバー伝送路の状態を把握でき、迅速な光接続の確立/保守の実現が期待されると説明。IOWN APNのさらなる発展に向けて、独自の光ネットワーク可視化技術を深化させ、デジタルツインによる光ネットワークの自動運用の実現に向けた研究開発を進めていくとしている。