ニュース

AMD、中小企業向け「EPYC 4004シリーズ」を発表 Socket AM5で最大16のZen 4コア構成を提供

 米AMDは5月21日(米国時間)に報道発表を行い、同社のデータセンター/サーバー向けCPU「EPYC」シリーズの最新製品となる「EPYC 4004シリーズ」を発表したことを明らかにした。

 EPYCではすでに、データセンター向けの9004シリーズ、エッジや通信事業者向けの8004シリーズ、メインストリーム向けの7004シリーズなどが提供されているが、今回はそれに加えて、特定のホスティングサーバーや中小企業のサーバー向けとなるEPYC 4004シリーズが新たに投入されることで、ターゲット市場が拡大されたことになる。

 AMDによれば、EPYC 4004シリーズは、4~16のZen 4コアで構成されており、DDR5-5200MHzメモリ(最大192GB)、28レーンのPCI Express Gen 5などがサポートされており、65~170Wの標準TDPの構成になっている。千個ロット時の価格は699ドル~149ドルとなっており、中小企業でも導入しやすい価格が特徴と言える。

AMDが発表したEPYC 4004シリーズ、ヒートスプレッダの下には2つのCOD(CPUダイ)と1つのIOD(I/Oダイ)があることがわかる(写真提供:AMD)

従来はRyzen for Serverのブランドで提供されていた低価格向けサーバーCPUが「EPYC 4004シリーズ」に

 AMDは2019年、OEM/ODM向けに、Ryzen for Serverと呼ばれるRyzen CPUとプラットフォーム(マザーボードなど)を利用した製品を、中小企業向けの低価格なサーバー製品用として提供開始している。

 今回発表した「EPYC 4004シリーズ」も、基本的にはその延長線上にある製品で、クライアントPC向けのRyzenで利用されているCPUコア「Zen 4」とCPUソケット「Socket AM5」などを活用して、低価格に提供できることが最大の特徴になる。しかし、ブランドは一般消費者向けのRyzenからEPYCへと変更され、より企業向け、かつサーバー向けであることを印象づけるブランド名となった。

従来はRyzen for Serverとして提供されてきたグレードが、CPUコアがZen 4になるタイミングでEPYC 4004シリーズとして発表される(出典:Introducing AMD EPYC 4004 CPUs、AMD)

 AMDによれば、Ryzen for Serverをリリースした後の顧客からのフィードバックで、「Ryzen」というブランド名が一般消費者向けをイメージさせるものであり、EPYCのようによりサーバー向けブランドの方が好ましいという意見が多かったとのこと。そこで今回の世代では、Ryzen for Serverから、EPYCのシリーズの中でも最も低価格を意味する「4」の数字を利用した、4004というシリーズ名が採用されたのだという。

 同時に、サーバーで必要な機能(例えばサーバー向けのソフトウエアRAID機能、セキュリティ機能)などが追加されていることも、EPYC 4004の特徴だとした。

EPYC 4004の位置づけは中小企業向けのサーバー用途(出典:Introducing AMD EPYC 4004 CPUs、AMD)

 今回発表されたEPYC 4004のCPUコアは、最大構成で16コアになっており、Windows Server 2022 Datacenter EditionないしはWindows Server 2022 Standard Editionで標準構成の価格に含まれている、最大16物理コアという範囲内で利用できるため、ソフトウエアの観点でも費用対効果が高いと、AMDでは説明している。

基本的なスペックはZen 4コアのRyzenと同じだが、メモリはECCのUDIMMに対応、3D V-Cache搭載モデルもラインアップ

 今回発表されたEPYC 4004のスペックは以下の通りだ。

・CPUはZen 4コア
・最大構成は8つのCPUコアのCODが2つとIODが1つで、最大16コア
・2チャネルのDDR5(最大5200MHz、ECC対応)、UDIMMで最大192GB
・モデルナンバーの最後にXがつくモデルは3D V-Cache搭載
・最大28レーンのPCI Express Gen 5
・IODにはRDNA2のGPUを内蔵
・CPUソケットはSocket AM5
・標準TDPは170W~65W
・ソフトウエアRAID(RAIDXpert2 for Server)に対応
・セキュリティ機能(AMD Secure Processor TSMEを搭載)

 基本的には、クライアントPC向けのRyzen 7000シリーズがそのままサーバーに転用されていて、大きな違いは、メモリモジュールがECCに対応したUDIMMになっているというものだと考えられる。

EPYC 4004シリーズのハイレベルアーキテクチャ(出典:Introducing AMD EPYC 4004 CPUs、AMD)

 AMDによれば、こうした仕組みを採用していることで、競合の同様の製品(具体的にはIntelのXeon E-2400シリーズ)と比較して性能面でも価格性能比でも上回っているという。例えば、EPYC 4584PX(16コア、120W TDP)とIntel Xeon E-2488(8コア、95W TDP)を比較すると、性能では1.7倍、価格性能比では1.5倍、電力辺りの性能では1.5倍になると、AMDは説明している。

競合のXeon E-2400との比較(出典:Introducing AMD EPYC 4004 CPUs、AMD)
EPYC 4584PX(16コア、120W TDP)とIntel Xeon E-2488(8コア、95W TDP)を比較すると、性能では1.7倍、価格性能比では1.5倍、電力辺りの性能では1.5倍になる(出典:Introducing AMD EPYC 4004 CPUs、AMD)
アプリケーションレベルでの性能比較(出典:Introducing AMD EPYC 4004 CPUs、AMD)

 EPYC 4004のSKUは以下のようになっている

 価格は、EPYC 4124Pの149ドル(米ドル、千個ロット時、税別、以下同)からEPYC 4564PおよびEPYC 4584PXの699ドルまでと、EPYC 9004/8004/7004などの上位シリーズに比べて低価格に設定されている。

 搭載サーバーは、Altos、ASRock Rack、Gigabyte、Lenovo、MSI、New Egg、OVHcloud、Supermicro、TyanなどのOEM/ODMメーカーから提供される予定だ。

SKU構成(出典:Introducing AMD EPYC 4004 CPUs、AMD)
EPYC 4004シリーズのSKU構成