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Ditto、JAL・ANAで採用されたデータ同期プラットフォームを国内で本格提供開始へ

 Ditto Live Incorporated(以下、Ditto 読み:ディト)は、日本において、同社のソフトウェア製品の本格提供を開始した。同社は2018年に米国サンフランシスコで誕生した新しい企業で、インターネット接続に依存することなくデータ同期を行える製品を提供している。米国では、チェーンの飲食店、航空会社、米国空軍などに採用されているほか、国内では日本航空(以下、JAL)、全日本空輸(以下、ANA)での採用が決まっているという。

 創業者の一人でCEOのアダム・フィッシュ氏は、「当社のソフトはほかにないものだと考えている。日本では、我々の技術をライセンスして使ってもらうパターンをはじめ、我々のエンジニアがお手伝いし我々のソフトを組み込んだアプリケーションを構築するしたり、日本のコンサルティング企業などをパートナーとして日本のお客さまに提供したりしていきたい」と話している。

CEO兼共同創設者のアダム・フィッシュ氏

インターネットに依存しないデータ同期プラットフォームを提供

 Dittoは2018年に設立され、従業員数はグローバルで約110人。エンジニア中心の体制となっている。本社は米国カリフォルニア州サンフランシスコで、ベンチャーキャピタルから5400万ドルを獲得している。

 提供するソフトは、インターネット、Bluetooth、P2P Wi-Fi、LAN、キャリア通信など、複数の通信方式に対応する。CEOのフィッシュ氏は、「我々のソフトの開発のきっかけは、私と共同創業者のマックス・アレクサンダーが、『スマートフォンがこれだけ高機能になっているにもかかわらず、それが生かされていない』と考えたことだった。初期のAndroid端末、iPhoneは単体でパワフルなソフトを動かすことができず、クラウド側で処理を行うことが不可欠だった。ところが、その使い方が定着してしまい、端末の機能が大きく向上しているにもかかわらず、それが生かされていない」と指摘する。

フィッシュCEO(左)と、CPO兼共同創設者のマックス・アレックサンダー氏(右)

 そこで端末のパワーを生かし、クラウドやサーバーに接続していないオフライン環境でも、アプリケーションはローカルに保存されたデータベースに接続して動作し続けるソフトを開発した。インターネット接続がない環境でも端末間でのデータ同期が可能で、インターネットに接続した段階でそのデータはクラウド側へ同期される仕組み。複数の端末のうち1台でもインターネットに接続されると、ほかのすべての端末も、インターネットの先にあるクラウド側のデータベースとの同期を行うことが可能となる。

ローカルでメッシュネットワークを構築することにより、インターネット接続がない環境でも動作を可能にしている

 この機能が評価され、2021年12月からは、JALが機内食注文管理アプリケーションの実証実験を実施していた。コロナ禍では一時中断したものの、本格的な利用がスタートする見込みだ。またANAとも契約を締結し、ANAの国際線において客室乗務員が機内業務で利用する通信プラットフォームのベース技術に、Dittoの技術が本採用されることが決定している。

 「航空分野での実績を受けて、米国では空軍での採用が決定した」(フィッシュCEO)とのことで、日本でも、「ぜひ、防衛省に採用していただけるようアプローチしたい」と話している。

Dittoを採用したJAL、ANAのスタッフとともに

 ターゲットとする分野は、航空業界だけでなく、小売業、フィールドサービス、政府関連。最初に顧客となったのは、米国でチェーン展開する、チキンを販売するファストフード店だった。店内に置かれた注文用の端末、POSレジ、従業員が利用する、注文を確認するための端末などにDittoのソフトを利用することで、店内の通信環境が悪い場所でもリアルタイムにデータ同期を実現している。

 今後獲得していきたい分野は、医療分野、金融業、そして災害現場での利用だという。「日本は地震が多いと聞いているので、通信が遮断された環境下での情報共有に、当社のソフトを利用してもらうことができるのではないか」(フィッシュCEO)。

 ちなみにセキュリティに関しては、端末が通信を行う前に認証を受け、認証を受けた端末同士のみがデータ連携を行う仕様となっている。航空会社で利用する場合は、乗務員が地上にいる間に通信を行い、証明書を取得。その証明書を持っている端末とのみ通信する設定となっている。

 「セキュリティに関しては、最も厳しいセキュリティを求める空軍での利用が認められているように、高いセキュリティを実現していることを理解してほしい」(フィッシュCEO)。

 こうした実績を積むことで、新しい活用を行っていくことにも意欲を見せている。「将来実現したいことはいくつかある。まず、エッジサーバーが要らない世界を実現したい。現在は多くのEdge端末を置いてデータ共有を実現しているが、我々の技術を使うことでEdgeなしでも情報共有ができる。オフラインペイメントも実現したい領域だ。オフラインでもペイメントを利用できるようになれば、ペイメントの利用範囲はさらに大きく拡大するだろう」(フィッシュCEO)。

オフラインペイメントへの適用イメージ