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国内ITインフラ支出動向調査、ITインフラ投資の優先項目は外部環境の変化やビジネスニーズへの迅速な対応~IDC Japan調査

 IDC Japan株式会社は8日、国内ITインフラ支出動向調査の分析結果を発表した。調査によると、外部環境の変化やビジネスニーズへの迅速な対応の実現に向けたITインフラ投資を、最優先または優先のIT投資項目とした割合は86.0%に上った。

 また、デジタルビジネスの成熟度別では、事業開始当初からデジタルテクノロジーを中核とする「デジタルネイティブビジネス」企業では、ITインフラ投資を最も優先度の高いIT投資領域の一つであるとする割合が60.0%と高い水準で、デジタルビジネスを推進する上でITインフラ投資は重要なIT投資項目の一つになっていると分析している。

 今回の調査は、2024年3月に、国内企業/組織におけるITインフラ導入の意思決定やITインフラ導入のプロセスに関与する回答者557人を対象に実施した、ITインフラ支出に関するアンケート調査の分析結果に基づいている。

 ITインフラ投資においては、従業員規模を問わずサイバーセキュリティ対策が最も重視する項目となった。それ以外の項目では、大企業はITインフラ運用管理の自動化ツールやパブリッククラウドへの移行を、中小企業や中堅企業はデータ管理/分析基盤や、レガシーシステムや技術的負債の刷新を重視している。

 また、ITインフラ導入や運用において最も重要と考えるパートナーは、システムインテグレーターや、国内のクラウド事業者やITサービス事業者が上位となり、グローバルに展開しているクラウド事業者やシステムインフラソフトウェアベンダーが続いた。中でもCIOは、ネットワークベンダーやコンサルティング会社も重要なパートナーと考えている。

 AIワークロード向けITインフラの利用意向では、アクセラレーターを利用するパブリッククラウドのAIインスタンスの回答率が52.4%となり、過半数に達した。自社専用のハードウェアにおいても、アクセラレーターを搭載したハードウェアを利用する意向が強くなっている。なお、Generative AI(生成AI)の学習(トレーニング)用途では、パブリッククラウドを利用する意向が強く、専有型ITインフラやエッジと大きく差が付いた。AIインフラの導入/運用の課題では、IT人材の確保、データセキュリティやプライバシーの確保が上位となった。

 こうした課題を解決する手段の一つとして、専有型のas a Serviceソリューション、パブリッククラウドサービス、およびこれらのハイブリッド、さらには、基盤モデルや開発環境も含むマネージドサービスなど、AIインフラ向けのITインフラサービスへの期待が大きくなっていると分析している。

 仮想化環境の今後の方針についての調査では、71.6%が仮想化環境に何らかの変更を検討していると回答した。その多くは、情報収集や検証の段階だが、ハイパーバイザーを変更する具体的な計画や、パブリッククラウドサービスなどに移行する予定がある回答者も一定の割合で存在している。

 IDC Japan株式会社Infrastructure & Devicesのリサーチマネージャーである宝出幸久氏は、「今回の調査では、ITインフラ投資に期待するビジネス成果は、コストの削減、従業員の生産性向上、事業運営の効率化といった、効率化に関する項目が上位を占めた。デジタルネイティブビジネス企業は、イノベーションの加速を目的にITインフラ投資を行っている。今後はデジタルビジネスの基盤となるデジタルインフラへの投資によってイノベーションを加速し、ビジネス成果の実現にさらに注力すべきである」と分析している。

外部環境の変化やビジネスニーズへの迅速な対応の実現に向けたITインフラ投資の優先度(出典:IDC Japan)