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生成AIの学習用途ではパブリッククラウドの利用意向が70.9%、国内ITインフラ支出動向~IDC Japan調査

 IDC Japan株式会社は15日、国内ITインフラ支出動向調査の分析結果を発表した。

 調査によると、ITインフラ投資に期待するビジネス成果は、従業員の生産性向上、コストの削減、事業運営の効率化が上位3項目を占めており、これらの項目は2024年の調査と順位は変わらない。しかし、2025年の調査では、不確実性の高まりを背景に、ビジネスリスクの軽減やビジネスレジリエンシーの改善を重視する割合が高まった。

 ITインフラ投資で重視する項目では、サイバーセキュリティ対策の強化が2024年の調査に引き続き最上位となった。2024年の調査と比較すると、ITインフラの迅速な構築や拡張、マルチクラウドに渡る統合管理ツール、as a ServiceモデルでのITインフラの利用を重視する割合が高まっている。

 AIワークロード向けのITインフラの利用意向では、アクセラレーターを採用するパブリッククラウドIaaSのAI向けインスタンスを利用する意向が、引き続き強くなっている。Generative AI(生成AI)の学習(トレーニング)の用途では、パブリッククラウドを利用する意向が70.9%と最も高い。一方で、ファインチューニングの用途では、専有型ITインフラを利用する意向も29.5%に達している。また、推論の用途では、専有型ITインフラとエッジの利用意向が20%弱と同程度の水準となった。

 生成AIに専有型ITインフラやエッジを利用する理由では、コストの抑制や支出の見通しの立てやすさ、大容量データ管理の容易さ、データを外部に持ち出さなくてよい点が上位を占めている。生成AIのユースケース別では、ITオペレーション、エンジニアリング/研究開発、マーケティングなど、業務に密接したユースケースで専有型ITインフラを利用する意向が強くなっている。

 IDC Japanでは、2024年の調査に引き続き、仮想化環境の今後の方針についても調査を実施している。今回の調査結果では、回答者の75.5%が仮想化環境について何らかの変更を検討している。2024年の調査と比較すると、情報収集/検証段階や、ハイパーバイザー変更の計画を有する割合が高まった。一方、パブリッククラウドへの移行を予定する割合は、2024年の調査から低下した。なお、仮想化環境の変更を計画/検討中の回答者のうち、81.5%が移行時期として2年以内を選択している。

 今回の調査は、IDC Japanが2025年3月に、国内企業/組織におけるITインフラ導入の意思決定やITインフラ導入のプロセスに関与する回答者548人を対象に実施した、ITインフラ支出に関するアンケート調査の分析結果に基づいている。

 IDC Japan Infrastructure & Devices リサーチマネージャーの宝出幸久氏は、「地政学リスクの高まりや事業環境の急激な変化に備えて、ITインフラ投資に期待するビジネス成果が変化し始めている。また、AIの本格導入や大規模展開を実現するために、AIインフラの導入に関する検討や検証が進んでいる。今後は、AIワークロードに応じて、投資対効果やデータ活用の安全性を考慮した最適なAIインフラを構築する動きが加速するとみている。さらに、ITサプライヤーの戦略の変化に対応し、中長期的な計画に基づいて仮想化環境の刷新やレガシーモダナイゼーションを実行する必要がある」と分析している。

Generative AIに専有型ITインフラやエッジを利用する理由(出典:IDC Japan)