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オプティム、LLM「OPTiM AI」を電子カルテシステムと連携して臨床現場に導入

 社会医療法人 祐愛会織田病院(以下、織田病院)、株式会社オプティム、株式会社シーエスアイの3者は3月29日、オプティムが構築する大規模言語モデル(LLM)「OPTiM AI」を、シーエスアイの電子カルテシステム「MI・RA・Is(ミライズ)」と連携し、織田病院の臨床現場に試験的な導入を行ったと発表した。電子カルテと連携し、臨床現場にオンプレミスでLLMが導入されたのは国内初になるという。

 医療従事者は、医療行為そのものだけではなく、患者の記録や報告書の作成などの間接的なタスクに直面しており、これらのタスクは、医師や看護師など現場スタッフの有限なリソースの一定割合を占めるだけでなく、場合によっては過度の時間外労働を引き起こすなど、負担となっているという。

 特に織田病院では、入退院支援に力を入れており、その一環として日常的に生じる患者の入退院に伴って、多大な文書作成業務を必要としていた。

 これまでは、この業務を支援するためにAIを用いるには、現在市場で確認される他社のLLMサービスをインターネット経由で接続する必要があったが、この方法では、病院などの個人情報保護が特に重視される環境では、セキュリティ要件を満たすコストが必要となり、医療現場での導入が進みにくいという課題が生じていたという。

 3者のプロジェクトは、こうした背景を受け、外部ネットワークへの接続を必要としないOPTiM AIを導入した。

 まずは、「入退院時看護サマリー」の作成をターゲットに、OPTiM AIを用いた要約文の自動生成を実現。これにより、高いセキュリティを維持したまま、医療従事者の負担を軽減することに寄与しているという。

 OPTiM AIは、オプティムが提供する、外部インターネットの接続を必要とせず動作が可能となるセキュアLLM。RAGの作成、管理を始めとし、「OPTiM Cloud IoT OS」と同様に、ID管理やテナント管理、デバイス管理を実現する予定。

電子カルテシステムのデータをもとにした、特定患者の「入退院時看護サマリー」要約画面

 プロジェクトで導入されたOPTiM AIは、オンプレミスで構築されている。このアプローチにより、患者の個人情報を含むLLMによるデータの取り扱いにおいて、高いレベルのセキュリティを実現した。インターネットに接続されていない環境での運用は、外部からの攻撃による患者情報の漏えいリスクに対する軽減しており、これにより織田病院では、安心して最新技術を臨床現場に取り入れることが可能となった。加えて、オンプレミスモデルの採用は、クラウドサービスの利用に比べAPI課金が発生しないため、長期的にはコスト削減が期待されるとしている。

 プロジェクトでは、OPTiM AIによる入退院時看護サマリーの自動生成を中心に取り組んでおり、次年度にはこの技術の適用範囲を大幅に拡大することを目指す。織田病院、オプティム、シーエスアイの3者は、医師や看護師をはじめとした医療従事者向けの要約ニーズに応えるだけでなく、電子カルテシステムにおけるさまざまな入力作業の自動化にも対応していく予定。また、診療情報提供書(紹介状)の作成支援、さらには用途を限定しない汎用的なチャットボット開発なども視野に入れ、医療現場のデジタルトランスフォーメーションを加速させるとしている。