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「クラウドコンピューティングでも超分散型、完全自動化、効率性を重視する」とアカマイCEO

 アカマイ・テクノロジーズ合同会社は22日、事業戦略説明会を開催し、同社のCDN(コンテンツデリバリネットワーク)やセキュリティ事業にて展開してきた超分散型、完全自動化、効率性を重視する姿勢を、クラウドコンピューティングの分野でも実践する考えを示した。

 米Akamai Technologies, Inc. CEO 兼 共同創業者 トム・レイトン(Tom Leighton)氏はまず、クラウドの現状について「アプリケーションがより簡単かつ迅速に展開できるようになり、市場投入までの時間短縮を実現している。現在の市場規模は、IaaS市場だけで1410億ドルにものぼっている」と話す。

米Akamai Technologies, Inc. CEO 兼 共同創業者 トム・レイトン氏

 その一方で、「以前はクラウドも安価だったが、現在では高価になり、課金体系も複雑になってきた。セキュリティに関しても、ハイブリッドクラウドなどでセキュリティホールを狙って攻撃者に侵入されたという話もよく聞く。また、データセンターでは大規模なサービス停止の恐れもある」と、懸念点についても言及。さらには、「クラウドプロバイダーが、メディアやコマースといった領域ではユーザー企業の競合となることもある。つまり、ライバル企業に対して料金を支払っているのみならず、重要なデータを共有していることにもなるのだ」と指摘した。

 こうした状況に対し、レイトン氏は「もっと良いクラウドが作れるはずだ」と語る。同氏の言う理想的なプラットフォームとは、超分散型で完全に自動化され、効率性と信頼性が高く、ポータブルで汎用的なプラットフォームだ。「Akamaiはこのようなプラットフォームを実現する」とレイトン氏は主張する。

 「Akamaiはすでに、CDNとクラウドセキュリティ向けにそのようなプラットフォームを実現している。そして現在、クラウドコンピューティングにも対応する理想のプラットフォームを実現しつつある」(レイトン氏)。

Akamaiが目指す理想のプラットフォーム
Akamaiが提供する超分散型、完全自動化、効率性重視のプラットフォーム

 レイトン氏は、AkamaiがまずCDNの分野で「超分散型で完全に自動化され、効率性を重視したことにより、パフォーマンスと拡張性、信頼性が高まり、低コストを実現した」と話す。現在Akamaiは、世界750都市にて4100以上のエッジPoP(Point of Presence)を持ち、日本でも26都市にて187のエッジPoPを有しているという。

日本におけるAkamaiの状況

 また、セキュリティの分野でも、Akamaiの革新により「大量のボット集団や高度な攻撃者に対する多層防御を実現し、リアルタイムのセキュリティインテリジェンスとサポートを提供できている」とレイトン氏。現在同社にとって最大の事業となったセキュリティ分野は、インフラセキュリティ、アプリケーションとAPIのセキュリティ、ゼロトラストセキュリティの3本で事業を展開しているという。

 セキュリティ事業について、アカマイ・テクノロジーズ 職務執行者社長の日隈寛和氏は、「昨年同事業は全世界で前年比15%成長し、日本ではさらにこの数字を上回る成長を遂げている」と説明。その背景として日隈氏は、「APIのトラフィック量が非常に増えており、APIセキュリティへの関心が高まっていることがひとつ。Akamaiでは、AIを活用した挙動分析をしており、そのソリューションが注目されている。また、ゼロトラストへの関心も高く、Akamaiのマイクロセグメンテーション技術やエンタープライズアプリケーションアクセス技術がこの分野で活用されている」とした。

3月1日に移転した新オフィスで祝杯を挙げた時のだるまを手に説明するアカマイ・テクノロジーズ 職務執行者社長の日隈寛和氏

 クラウドコンピューティングの分野でも、「超分散型、完全自動化、効率性を重視することにより、CDNやセキュリティでやってきたことを実現する」とレイトン氏は語る。

 現在同社では、「Generalized Edge Compute(Gecko)」という名称で、クラウドコンピューティング機能をエッジネットワークに組み込むことを目標としているが、今後このGecko対応都市を数百都市にまで拡張する考えだ。「現時点でのGecko対応都市は10都市。今年中には100都市にて対応する」とレイトン氏。また、仮想マシンやコンテナの立ち上げも、「現在の事前プロビジョニングから、来年には完全に自動化することを目指している」という。

Gecko対応都市は数百都市に拡張予定

 Akamaiでは、「Akamai Connected Cloud」というブランド名でサービスを展開しており、レイトン氏はこれが「世界でも最も分散したクラウドプラットフォームだ」と主張する。「Akamai自身、大手クラウド事業者からAkamai Connected Cloudに移行したところ、パフォーマンスが高まり、2023年はコストが40%削減できた」という。

Akamai Connected Cloudにより40%のコスト削減を実現

 日隈氏も、「クラウドのコストが高くなってきたと懸念する顧客は多い。当社では、超分散型クラウドコンピューティングの提供を目指しており、その道半ばではあるが、現時点でも既存のCDNと組み合わせることで、クラウドのデータ転送コストを大幅に削減することが可能だ」と述べ、同社ソリューションのコストメリットを強調した。

Akamaiのサーバーが置かれている拠点と稼働率がリアルタイムで示された映像