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レノボ、CIOを対象に生成AIに関する調査を実施 CEOとCIOでは優先事項と期待感に差異

 レノボ・エンタープライズ・ソリューションズ合同会社は、CIOを対象にした生成AIに関する調査「CIO Playbook 2024 - It's all about Smarter AI」を発表した。

 来日したLenovo インフラストラクチャソリューショングループ(ISG) CMOのフリン・マロイ氏は、「2024年におけるAIテクノロジーへの支出は、前年比45%増と大幅に増加することになる。だが、CEOは生成AIをはじめとした新興テクノロジーの活用への関心が最も高いものの、CIOでは生成AIを4番目に位置づけている。CEOとCIOでは優先事項と期待感に差がある」と指摘。

 レノボ・エンタープライズ・ソリューションズの多田直哉社長は、「日本において、生成AIに投資済みの企業はわずか2%であり、アジア太平洋地域のなかで大きく遅れている。だが当社にとって、これは好機ともいえる」とコメント。「レノボ・エンタープライズ・ソリューションズのサーバー事業において、生成AIはゲームチェンジャーになる」と発言した。

 また、Lenovo ISG アジア・パシフィック担当プレジデントのスミア・バティア氏は、「AIによって、Lenovoのサーバーの特徴を生かせることができる。サーバー市場において2桁成長を継続し、競合との差を縮めることができる」と事業拡大に意気込みを見せた。

Lenovo ISG CMOのフリン・マロイ氏
レノボ・エンタープライズ・ソリューションズの多田直哉社長
Lenovo ISG アジア・パシフィック担当プレジデントのスミア・バティア氏

 今回の調査は、日本企業の150人以上のCIOを含む、アジア太平洋地域の900人以上のCIOを対象に実施したもので、生成AIの現状や、ビジネスにおける生成AIの活用、課題などについて明らかにしている。

 Lenovo ISGのマロイCMOは、「10年前には『クラウドとはなにか』といった議論があったが、それと同じことがAIで起きている。そして、AIの市場規模はハードウェア、ソフトウェアのすべてを足したものよりも大きな市場になることが想定されている。いま、AIの革命が起こっていることが、今回の調査からも明らかになっている」などとし、AIに対する投資が今後急拡大することを示した。

 調査では、CEOが最も優先する事項として、前年調査ではランク外だった「新興テクノロジーの活用(生成AIなど)」が1位となり、2位には「顧客エクスペリエンス・満足度」、3位には前年に1位だった「収入と利益の成長」が入った。これに対して、CIOがテクノロジーの優先事項としてあげたのが、1位から順に「デジタルインフラ管理とセキュリティ」、「AI/MLワークロード向けHPC基盤」、「ランサムウェアやマルウェア攻撃に対処するサイバーレジリエンシー向上」となっており、4番目に「生成AI」が入った。

 「CEOの関心事は、ランク外からいきなり1位となった生成AIへと大きくシフトしたが、CIOはいまでもセキュリティが最優先事項になっている」と、意識の違いが浮き彫りになったことを示した。

AIについて、CEOとCIOの優先事項や期待は異なる

 また、2024年のAI支出は前年比45%増と大きく拡大することが示されたほか、そのうち生成AIへの投資が29%、機械学習が25%、ディープラーニングが24%、ロボティクスへの投資が23%と、それぞれの領域への投資がほぼ均等になっていることもわかった。また、AIワークロードをパブリッククラウドで展開するという回答は31%であり、プライベートクラウドやオンプレミスなどでAIを展開したいという回答が69%に達した。

 だが、欧米でのAI支出の伸びは、アジア太平洋地域の伸びを上回っているほか、パブリッククラウド以外でAIワークロードを展開したいという回答は83%に達していることにも触れた。

 「ChatGPTはパブリッククラウドで利用されているが、今後、拡大が見込まれる企業における生成AIの活用は、セキュリティやパフォーマンス、プライバシーの問題から、パブリッククラウド以外で行いたいと考えている企業が多い」と分析した。

2024年 AI投資は大幅に増加

 さらに、組織にとってのAIの重要性についても分析。ビジネスの方法を変えると前向きにとらえる「ゲームチェンジャーになる」とした回答が46%となったほか、他社がやっているためにやらなくてはならないとする「企業の競争維持に必要」との回答は45%に到達。の一方で、「業務の妨げ」との回答は9%となった。これは欧米でもほぼ同じ結果だという。

 生成AIに投資済みとした企業は13%となり、2024年に投資予定の企業は75%となった。「欧米では投資済みと回答した企業は45%と高い。アジアの企業は生成AIに興味はあるが、投資には慎重である。2024年になって、AIの投資を積極化するという動きが浮き彫りになった」とし、「アジアの企業のCIOは、経営幹部に対してAIイニシアチブの啓発を行うこと、ビジネス目標とテクノロジー目標をアラインさせること、正しいAIモデルの仕組みと適切なユースケースをビジネスリーダーとともに見極めること、AIインフラ構築においてセキュリティの強化や、性能と規制のバランスを取ること、そして、AI CoEの設置に加えて、人材育成、維持、採用のためのデータ支援文化の構築が重要になる」と総括した。

生成AI:ビジネスリーダーの期待高まる一方、CIOは慎重

業種別の動向と、日本におけるAI投資の動向

 業種別の動向については、アジア・パシフィック担当プレジデントのバティア氏が説明。「官公庁では、AIがゲームチェンジャーになると考える比率が64%と高く、市民に対してよりよいサービスを提供できると考えている。また、小売業界も積極的にAIを活用する動きが出ている。それに対して、医療分野では慎重な姿勢が見られている。ユースケースが出ると動きが速くなるだろう」とした。

 小売業では、2024年に生成AIに投資を予定しているとの回答が82%と高く、ハイパーパーソナライゼーションによる顧客体験の向上に活用する動きが目立っているという。顧客行動分析をもとにした価格の最適化や、対話型AIを利用したカスタマサポートの強化、店舗のヒートマップ作成をもとにした売り場構成の変更などにAIが活用されることになるという。

 また、「製造業ではエッジがAI導入をドライブしていくことになる。これは自然な流れである」とし、製造業においては、エッジコンピューティングに対する投資は前年比40%増と高い伸びを示していること、工業オートメーションやIoTデバイス管理、リアルタイム分析などで、エッジでのAI活用が促進されていること、予測分析や品質管理、欠陥検出、対話型AIによる在庫管理などでの活用が想定されることなどを指摘した。

 さらに、金融業界では、すでに20%の企業が生成AIに投資済みという状況にあり、中でも生産性特化型のユースケースが多いことに触れ、KYC(顧客確認)や自動音声による応答、信用リスク分析などにAIを活用しているケースが目立つという。

製造業の動向
小売業の動向
金融業界の動向

 一方、日本におけるAI投資の動向については、レノボ・エンタープライズ・ソリューションズの多田社長が説明した。

 「日本の企業の89%がAIは重要なものであると理解している。だが、投資済みの企業はわずか2%にとどまっているのが実態であり、韓国では33%、インドでは28%であることと比較する大きな差になっている。投資予定は79%と高いが、まだ慎重論が先行している。実証実験は行っても、まだ一歩を踏み出せない企業も多い」と解説。

生成AIを増強・模索のため79%が投資予定だが、依然として慎重

 「AIを展開する上では、ROIを評価するための事例づくり、トレーニング不足の解消、AIによって自分の仕事を脅かされるのではないかという従業員の懸念払しょくが必要である」と提言した。また、日本で先行しているAI活用事例としては、スマートシティにおける群衆コントロールや消費予測、AIコーディングの活用による開発生産性の向上、対話型AIによる市民サービス用チャットボットの活用などがあるとした。

課題は、AIのビジネスユースケース構築、雇用確保およびAIの複雑な技術要件の把握

Lenovo ISGにおけるAI分野での取り組み

 今回の説明会では、Lenovo ISGにおけるAI分野での取り組みについても言及した。

 Lenovo ISGのマロイCMOは、「Lenovoでは、『AI for All』を打ち出し、すべての人にAIを利用してもらうことを目指している。人々のAIの旅路に寄り添っていくことになる」と発言。Lenovoでは、すでに20億ドルのAI収益を得ていること、これまでの12億ドルのAI投資に続き、今後3年間で10億ドルの追加投資を行うこと、顧客のサポートが可能なAI専門スタッフが約2000人在籍していること、80以上のAIレディプラットフォームを有していること、4つのAIイノベーションセンターを設置していること、AIスタートアップ企業をスタートするLenovo AIイノベーターズプログラムに50社以上が参加していること、165以上のエンタープライズAIソリューションの実績があることなどを強調。「これからもAIに対して継続的な投資を行っていくことになる。AIレディプラットフォームはさらに拡大していくことになる」とした。

課題は、AIのビジネスユースケース構築、雇用確保およびAIの複雑な技術要件の把握

 また、「Lenovoは、世界のサーバー市場において第3位のポジションであるが、AIの時代の到来によって、Lenovoにしかない強みがより発揮できるようになり、1位や2位との差を縮めることができる」とコメント。「エッジコンピューティングのポートフォリオをそろえており、Lenovo・デジタル・ワークプレイス・ソリューションにより、さまざまな領域でAIを活用してもらえる提案ができる。また、TSMCやFoxconnといったODMやOEMとの連携、NVIDIAといったパートナーとの連携によって、最先端テクノロジーを活用した製品によって、AIの市場に入っていくことができる。Lenovoが持つエッジテクノロジー、水冷テクノロジーもAIにおいては有効である。Lenovoは、いいポジションにある。3年、5年、10年という期間を通じて、その差を縮めていくことができる」と語った。

 Lenovo ISGのバティア氏も、「テクノロジーパートナーやISVといったパートナーとともに、AIの価値を提供できるのがLenovoの特徴である。独自のテクノロジーを持ったLenovoが、顧客の課題にフォーカスすることで、2桁成長を継続し、競合との差を縮めることができる」と語った。

 さらに、レノボ・エンタープライズ・ソリューションズの多田社長は、「レノボは、AIのフレームワークを明確化している。オプティマイズとプラットフォームの提供、Lenovo AIイノベーターズプログラムなどを通じたパートナーエコシステムの構築、CoEの設置やレノボのAI活用ノウハウなどを提供する仕組みがある。日本のお客さまとの会話では、テクノロジーの話題よりも、ビジネス課題に関する相談が多い。お客さまを支援したり、伴走したりといった提案のなかでAIが活用できるシーンが多い。レノボが持つテクノロジーや知見を生かすことで、課題解決の時間も短縮できる」とし、「企業で利用してもらえるプライベートAIの環境が整うことで、日本の企業のAI利用が促進される。AIは、Lenovo ISGにとって、ゲームチェンジャーになるトレンドである」と語った。