ニュース

木村屋とNEC、AIを活用して“恋愛”をテーマにパンを開発

 株式会社木村屋總本店(以下、木村屋)と日本電気株式会社(以下、NEC)は17日、NECのAIを活用し、恋愛感情と食品をひもづけて味を表現した「恋AIパン」を開発したと発表した。

恋AIパン

 木村屋は、明治時代にあんぱんを考案した老舗の製パン企業。今回の取り組みについて、同社 取締役の齊藤浩二氏は、「創業155周年を迎えるにあたり、次の世代にどのように木村屋を伝え、時代の変化にどのように対応していくか検討した。当社の使命は新しい味覚の楽しみを届けることであり、未来に向けてワクワクと誇りを持って挑戦すること、そして先人からの教えを継承することを価値観としている。そこで、若年層を対象とした商品開発に取り組むことになった」と語る。

木村屋總本店 取締役 齊藤浩二氏

 木村屋では、若年層の市場調査から、「若者の恋愛離れが進んでいるものの、恋をしたい若者は減っていないのではないか」と推測。それが「若者の恋愛を応援するパンを本気で作ることで、次の世代に木村屋を継承したい」というプロジェクトへとつながった。

 このプロジェクトに協力したのが、AIを活用してプリンやクラフトビールなどの食品開発に実績のあるNECだ。今回のプロジェクトでは、株式会社AbemaTV(ABEMA)の恋愛番組「今日、好きになりました。」で話されている会話と、フルーツやスイーツが登場する曲の歌詞をNECのAIで分析し、恋愛感情と食品を紐づけて味を表現した。

 具体的には、まずNECのAI技術群「NEC the WISE」の音声認識技術を用いた「NEC Enhanced Speech Analysis-高性能音声解析-」により、「今日、好きになりました。」の3シーズン分の会話データ15時間分をテキストとして抽出。次に、NEC the WISEのデータ意味理解技術を用いた「NEC Data Enrichment」で、出会いや告白、初めてのデートなど、恋愛シーンごとの会話文に32個の感情ワードとの相関を表した感情スコアを付与し、恋愛シーンごとの感情の傾向を可視化した。

 また、約100万曲の日本語の歌詞データベースから、183種類のフルーツやスイーツなどの食品を含む約3万5000曲を抽出。そこからNEC Data Enrichmentにて、食品を含む歌詞に感情スコアを付与し、食品のイメージが持つ感情の傾向を可視化した。

 こうして可視化した恋愛シーンの感情と、食品イメージの感情とを結びつけ、恋の感情を表現する食品上位50種をリストアップ。この中から木村屋のパン開発職人が相性の良い食品の組み合わせを選定し、恋AIパンを開発したという。

今回のプロジェクトについて
感情を味に変換したNECのソリューション
歌詞分析から食材ごとに感情をマッピング

 約半年の開発期間を経て、「運命の出会い味」「初めてのデート味」「やきもち味」「涙の失恋味」「結ばれる両想い味」という5種類の恋AIパンが誕生した。すべて木村屋の「むしケーキ」をベースにした商品だ。

 運命の出会い味は、わたがし味の生地にりんごのマーブルを組み合わせ、青クランチをトッピング。初めてのデート味は、ライムの生地に柿のマーブルを組み合わせ、オレンジピールをトッピングしている。この2つは、新学期や新生活の時期と重なる4月1日に販売を開始し、5月末まで出荷する。

運命の出会い
初めてのデート

 やきもち味は、紫芋の生地にずんだ・トリュフオイルのマーブルを組み合わせ、レーズンをトッピングした。ホワイトデーの時期となる3月1日に販売を開始し、4月末まで出荷する。

 涙の失恋味は、サイダーの生地にぶどうのマーブルを組み合わせ、ドライりんごをトッピング。結ばれる両想い味は、ももの生地にドラゴンフルーツのマーブルを組み合わせ、はちみつをトッピングした。この2つは、バレンタインデーの時期となる2月1日に販売を開始、3月末まで出荷する。

やきもち
涙の失恋
結ばれる両想い

 恋AIパンの価格は200円(税込)。関東近郊のスーパーと、木村屋の直営店およびオンラインショップにて販売される。

 NEC AI・アナリティクス統括部 シニアディレクターの孝忠大輔氏は、「食品をはじめとする新商品開発において、膨大なデータを活用することには大きなチャンスがある。今後もこのような分野での取り組みを検討していきたい」としている。

NEC AI・アナリティクス統括部 シニアディレクター 孝忠大輔氏

 またNECは今回のプロジェクトにて、同社が開発した大規模言語モデル「cotomi」を活用し、食品や感情データを基に商品パッケージや特設サイトで用いる商品解説文を作成している。今回は商品解説文の作成にのみ活用したcotomiだが、「生成AIは今後画像や動画でも活用できるようになり、可能性の幅が広がるだろう。これにはさらに力を入れていきたい」と孝忠氏は述べた。