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シュナイダーエレクトリック、サステナブルなデータセンターへの取り組みと支援ソリューションを紹介

 電気機器メーカー仏Schneider Electricの日本法人であるシュナイダーエレクトリック株式会社は、データセンター市場における電力グリーン化とサステナブルなデータセンターの動向に関する記者説明会を、11月30日に開催した。

 同社はデータセンター分野では、UPSや空調機、管理ソフトウェアなどの製品を提供。サーバー関連の分野ではUPSのAPCを2007年に買収して販売していることでも知られる。会社全体としては、産業機器や、ビル、受配電機器など幅広い事業を展開している。

 記者説明会では、データセンターの電力消費や電力グリーン化の動向と、それに対するシュナイダーエレクトリックのアプローチについて解説がなされた。その中でも、電力供給側のREF(再生可能エネルギー係数)と、電力需要側(データセンター)側のPUE(データセンターの電力消費量におけるIT機器の電力消費量の割合)の2つに焦点をあてて、シュナイダーのソリューションを説明していた。

 特に、日本での遅れと、それにより日本のデータセンター事業者がハイパースケーラー(いわゆるGAFAなど)のような海外事業者に選ばれるのが難しくなるというビジネス面を主張。そのためのサポートを、データセンターのライフサイクルにわたって提供することをメッセージとしていた。

業界団体やハイパースケーラーがPUE規制、それに比べて日本はゆるやか

 まず、動向とそれに対するシュナイダーエレクトリックのソリューション全体について、シュナイダーエレクトリック株式会社 セキュアパワー事業部 バイスプレジデント 今井歩氏が説明した。

 「これは1社の話ではなく、業界全体で同じ方向を向かないとサステナビリティは実現できない」と今井氏は言う。

シュナイダーエレクトリック株式会社 セキュアパワー事業部 バイスプレジデント 今井歩氏

 基本にあるのは、IT関連のエネルギー消費量が爆発的に増えていることだ。全世界ではITインフラの電力消費量が、2030年には2022年の約2倍、2040年には6倍以上になるとシュナイダーエレクトリックは予測。日本でも、2030年には2016年の約36倍となると予測している。そしてさらに、今後5年間で、AIに関連するワークロードがデータセンター全体の電力消費の2~3倍の速さで成長するだろうという。

全世界でのITインフラにおける電力消費量の成長予測
日本でのIT関連の電力消費量の成長予測
AIワークロードによる電力消費量の増大予測

 これを受けて、データセンター業界でもPUEの規制が行われ始めている。欧州では、欧州データセンター協会(EUDCA)が気候中立データセンター協定(CNDCP)と通じて自主規制目標値を公表し、すでに80社以上がコミットしている。中国でも、PUEの国家規定が公表され、加えて北京地方政府がさらに厳しい独自の規制を設定している。ハイパースケーラーのGoogle、Meta、Microsoft、Amazonも、自社の目標値を公表している。「これらに従わなくてはならないというのが最近の動き」と今井氏は語った。

 日本では、2023年に改正省エネ法が施行された。エネルギー使用料などを定期報告書として提出させ、それを元にS・A・Bにクラス分けし、それによって中期計画書の提出頻度が変わる。そして2030年までに上位15%の事業者がPUEを1.4以下にすることを目指すとなっている。これについて今井氏は、動きが欧米に比べるとゆるやかだと今井氏は述べた。

欧州や中国でのデータセンター業界の規制
ハイパースケーラーの自主規制
日本における規制の動き

 こうしたデータセンターの電力消費問題に対するシュナイダーエレクトリックのサポートは、単体のハードウェアやソフトウェアではなく、戦略からデザイン、運用、エネルギー購入、サプライチェーンまで、データセンターのライフサイクルにわたってサポートするものだと今井氏は説明した。

 シュナイダーエレクトリックでは、「データセンターのための環境持続可能性メトリクスのガイド」というホワイトペーパーを出している。2021年6月に発刊し、第2版を2023年10月に発刊した。

 ホワイトペーパーでは、23のメトリクスを設定し、そのうちの1つとしてPUEが入っている。これらのメトリクスは、エネルギー、温室効果ガス、水、廃棄物、生物多様性の5グループに分けられている。

 中でもCNDCP/EUDCAの自主指標では、主要メトリクスとして、PUE、REF、CUE(炭素利用効率)、WUE(水使用効率)の4つでデータセンターが比較されるという。

 このうちシュナイダーエレクトリックは、電力サプライ(電力会社)側のメトリクスであるREFと、電力デマンド(データセンター)側のメトリクスであるPUEの、2種類のソリューションを提供している。以降の話は、この2つそれぞれについての説明である。

データセンターの電力消費問題に対するシュナイダーエレクトリックのサポート分野
ホワイトペーパーを発刊
5つの領域で23のメトリクス
主要メトリクス
シュナイダーエレクトリックはREFとPUEの2種類のソリューションを提供

REF:PPAのアドバイザリーの67%がシュナイダーエレクトリック

 電力サプライ側のメトリクスであるREFのソリューションについては、シュナイダーエレクトリック株式会社 サステナビリティ事業部 クライアントマネージャー 木暮明大氏が説明した。

シュナイダーエレクトリック株式会社 サステナビリティ事業部 クライアントマネージャー 木暮明大氏

 REFは、データセンターの総消費エネルギー量のうち、再生可能エネルギーの量の割合だ。電力を受けるデータセンターにとっては、再生可能エネルギーによる電力を調達するということになる。

 木暮氏はデータセンター業界について、Googleが5年連続で1.0を達成、データセンター事業者のEquinixが4年連続で0.9超を達成、AmazonがAWSだけでなく事業全体で0.85を達成したといった事例を紹介。EUDCAや北京地方政府の規制から「2030年までにREF 100%を達成していないと土俵に乗れない」と述べた。

 データセンターが再生可能エネルギーを調達する方法について、木暮氏は3つを紹介した。1つめはRECやGO、I-RECなどのEAC(エネルギー属性証書)を買うもの。2つめは、太陽光による自家発電や、電力会社がデータセンターに太陽光パネルを設置するといったオンサイトPPA(電力購買契約)などのオンサイト/分散型発電。3つめは、電力会社から一般送電網で再生可能エネルギーを購入するオフサイトPPAだ。

 オフサイトPPAの一種でバーチャルPPAもあり、海外では主流の手法だという。電気自体は契約せず、環境価値だけを契約するというものだ。ただし、これは会計的に複雑で、専門家の知識が必要になると木暮氏は説明した。

REFの定義と業界動向
再生可能エネルギーを調達する3つの方法
バーチャルPPA

 ここで木暮氏は、ハイパースケーラーにもファシリティを提供する大手データセンター事業者に対する、シュナイダーエレクトリックの再生可能電力コンサルティングの事例を紹介した。

 Equinixは、105メガワットの太陽光発電と225メガワットの風力発電に加えて、PPA3件を契約し、北米でREF 100%を達成したという。

 また、Digital Realtyは、複数のオフサイトPPAを契約して、欧州でREF 100%を達成したという。

 このように、戦略立案、戦略調達、パフォーマンスマネジメント、基盤となるシュナイダーエレクトリックのリソースの各面から、データセンター事業者にアドバイザリー(コンサルティング)を提供していると木暮氏は語った。そうしたアドバイザリーが必要な理由については、バーチャルPPAなど会計的に複雑で、専門知識が必要になるからだと説明した。

 実績として、2017~2019年に世界中でアドバイザリーにより契約されたPPAにおいて、67%がシュナイダーエレクトリックだったという数字を木暮氏は挙げた。

 「再生可能エネルギーは日本ではCSR(企業の社会的責任)で語られるが、実はデータセンターにとってやってほかないとハイパースケーラーなどの利用企業から選ばれないというビジネス上の要件となっている」(木暮氏)

Equinixの事例
Digital Realtyの事例
シュナイダーエレクトリックによるアドバイザリーの提供
世界中でアドバイザリーによって契約されたPPAにおけるシュナイダーエレクトリックのシェア

PUE:UPSや空調、さらにはリファレンスデザインで支援

 電力を使うデータセンター側のメトリックスであるPUEについては、シュナイダーエレクトリック株式会社 セキュアパワー事業部 ストラテジックマーケティングマネージャー 木口弘代氏が説明した。

シュナイダーエレクトリック株式会社 セキュアパワー事業部 ストラテジックマーケティングマネージャー 木口弘代氏

 PUEは、データセンターの総消費電力量を、サーバーなどIT機器の消費電力量で割った値だ。PUEが1になることはないが、データセンター事業者では1に近づけようとしている。

 先進的なデータセンターのPUEの例としては、GoogleやMetaは早い段階で約1.1を実現、Alibabaも1.247を実現している。欧州の業界目標値としては1.2~1.3が掲げられている。

PUE
先進的なデータセンターのPUEの例

 IT機器の消費電力量以外というと、空調などのデータセンター設備が該当する。20メガワットクラスのメガクラウドデータセンターを見てみると、中圧変圧器、UPS(無停電電源装置)、PDU(ラックの電源タップ)で電力効率が悪いと木口氏。これを改善することで、PUEを1.45まで下げることができる。特に対策として効果が高いのがUPSだという。

 この対策として、シュナイダーエレクトリックのデータセンター向けUPSでは、eConversionという高効率運転モードを備えていることを木口氏は特徴として挙げた。一般に、UPSの電力では、一般に電力の安定性(ダブルコンバージョン)と効率(ECOモード)はトレードオフになるが、それをいいところどりするものだという。

 eConversion対応製品の中でも、木口氏はGalaxy Vシリーズを紹介した。ダブルコンバージョンと同等の安定性で、99%の効率性を実現しているという。

一般に、中圧変圧器、UPS、PDUで電力損失が大きい
3つを最適化することでPUE 1.45に
eConversionに対応したGalaxy Vシリーズ

 ただし、1.45では日本の基準である1.4にも足りない。そこからさらに下げるには、大きな割合を占める冷却システムを効率化することになる。

 従来の水冷チラーシステムでは、だいたい20度ぐらいの冷気を機器に吸気させて、30度ぐらいが排気されるのを回収するという。それをたとえば、吸気温度を25度、排気温度を37度にするといったことで電力消費を下げる。さらに、外気による空冷チラーを組み合わせることで、PUE 1.29まで下げることが可能だと木口氏は説明した。これにより、20メガワットのデータセンターで、4.8メガワット、年間9億円相当の削減になるという。

 そして、これを実現するシュナイダーエレクトリックの製品として、Uniflair Air Cooled Chillerを木口氏は紹介した。

従来の水冷チラーシステムとそこでの電力削減
外気による空冷チラーで電力削減
Uniflair Air Cooled Chiller

 シュナイダーエレクトリックではこうした製品以外にも、データセンターのリファレンスデザインや、デザインツールとホワイトペーパー、運用効率化を実現するソフトウェア、運用・保守サービスなどで、データセンターのPUE削減を支援していると木口氏は説明した。

 その事例として、スウェーデンのEcoDataCenterの例を氏は紹介した。Galaxy VXのeConversionモードにより99%の電力効率を実現し、シュナイダーエレクトリックの冷却システムで高い冷却効率を実現、さらにDCIMのEcostruxture ITによる運用効率化で、PUE 1.15まで下げたという。

 さらに、データセンターから排出される暖かい空気を、近くの木材を乾かす工場に供給して、より環境がポジティブになるように運営しているとのことだった。

シュナイダーエレクトリックのPUE削減を支援する製品やサービス
スウェーデンのEcoDataCenterの事例