クラウド&データセンター完全ガイド:DCC2P

シュナイダーエレクトリックのDCIM 3.0――DCC2P Vol.10「改正省エネ法対策特別セミナー」講演レポート

 クラウド&データセンター完全ガイドでは、データセンター業界における新たな価値創造を目指すコミュニティ「DC Co-Creation Place(DCC2P)」を2020年に設立し、定期的な勉強会や交流会を企画・開催している。2023年3月17日にはその第10回目のイベントとして、「データセンター事業者の改正省エネ法対策」にフォーカスした特別セミナーを開催した。本稿では当日のプログラムの中から、シュナイダーエレクトリックの渡辺智洋氏が、改正省エネ法ベンチマーク制度で届け出る指標(PUE)の算出に役立つ、DCIM(データセンターインフラストラクチャマネージメント)の最新ツールを紹介したセッションの概要を紹介する。 text:柏木 恵子
シュナイダーエレクトリックの渡辺智洋氏

効率化はDCIMによる可視化から始まる

 何事においても、現状を把握しなければ改善できない。データセンターの省エネも同様だ。データセンターのインフラ管理効率化には

情報収集→監視→資産管理/プランニング→最適化(→情報収集に戻る)

というサイクルが必要だが、正確なデータ測定ができていない企業も多い。

 サーバルームには、IT機器とファシリティの設備があり、それぞれの担当者が管理している。お互いに違う情報を持っている状態では、効率の良い運用はできない。それをひとつにまとめて統合管理するのがDCIMだ。レジリエンス、セキュリティ、サステナビリティを担保する最新のツールを、シュナイダーエレクトリック(以下、シュナイダー)ではDCIM 3.0と呼んでいる。

ITとファシリティの管理データをDCIMで統合管理

 統合的に監視するためには多様なデータが取れる状態でなければならない。シュナイダーの「EcoStruxure IT ソリューション」には、そのためのさまざまなハードウェアがある。例えば、電力系のUPSやラックマウントPDU、IT系のラックやコンテナ、局所空調や大型空調の機器などだ。

 また、収集したデータを集約し分析するツールや、シュナイダー側で遠隔監視するサービスも提供している。「ハードウェア/ソフトウェア一体型の、トータルソリューションということが、シュナイダーエレクトリックの利点」と渡辺氏は言う。

EcoStruxure IT ソリューション

データセンター向け製品と具体的なアプローチ

 EcoStruxure ITでは、デバイスの統合監視ソフトウェア、IT資産管理とプランニングのためのソフトウェア、これらのソフトウェアに接続可能なさまざまなデバイスを組み合わせて、データセンターのインフラ管理に必要な4つのステップをカバーする。

 デバイスの統合監視ツール「StruxureWare Data Center Expert」を導入すると、デバイスのインベントリー、アラーム設定・通知、デバイス制御、レポーティング機能、環境監視装置(NetBotz)との連携が可能になる。NetBotzは、温湿度の他、漏水や火災・煙、ドアの開閉、監視カメラなどのデータを収集できる。ダッシュボードでは、フロアごとにフォルダを分け、接続されている機器を一括監視できる。

ダッシュボード画面

 IT資産管理とプランニングを担う「EcoStruxure IT Advisor」には、IT資産管理の他、電力容量管理、空調が止まった場合の影響をシミュレーションする機能などがある。また、コロケーション顧客向けに、電力使用量をはじめとするコスト算出が可能。簡易的にPUE値を出す機能もある。

 ラックマウントPDUはコンセント単位の消費電力を遠隔監視できるため、ゾンビサーバの発見も可能。サーバを除去することで省エネやラックスペース削減の可能性もある。Data Center Expertの仮想センサーという機能を使うと、ラックマウントPDUのデータを収集してラックごとの消費電力が分かる。複数ラックを契約している顧客から自社の消費電力を知りたいと言われた時には、ラック消費電力の合算値を提供すればいい。

ラックマウントPDU

 また、省エネ法で報告が求められるPUE値の算出のためにはサーバルーム全体の消費電力が必要だが、Power Meter(電力監視機器)を追加して分電盤の電力を計測することで、既存環境でもIT Advisorで電力を可視化できる。

 データセンターのインフラ管理サイクルを回すには、一元的な見える化が重要だ。渡辺氏は、「複雑化するハイブリッドなIT環境のレジリエント、セキュリティ、サステナブルな運用を、DCIM 3.0が実現する」とまとめた。