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NTT、NTT東日本、NECの3社、通信用光ファイバーを用いた振動センシング技術による豪雪地帯の道路除雪判断の実証実験に成功

 日本電信電話株式会社(以下、NTT)、東日本電信電話株式会社(以下、NTT東日本)、日本電気株式会社(以下、NEC)の3社は9日、光ファイバー振動センシング技術を応用し、既に地下に敷設してある通信用光ファイバーに伝わる振動特性から路面状態を推定する機械学習モデルを構築し、豪雪地帯における道路除雪判断を行う実証実験に世界で初めて成功したと発表した。

 道路除雪作業は主として深夜帯に実施され、限られた時間内での除雪作業による効果を最大化するため、昼間帯には市街パトロールを実施し、積雪量や降雪予想、調査員の経験則を基に、除雪実施判断を除雪工区と呼ばれる地域単位で日々実施している。しかし、地方部での人口減少と高齢化が進む中、道路除雪判断を行う除雪オペレーターの担い手は不足し、DX化による効率化が喫緊の課題となっているという。

 この地域課題に対応するため3社は、NTT東日本が通信用に敷設した未使用の地下光ファイバーと、NECが提供する光ファイバーセンシング技術を用いて得られた、青森市内における市道の交通振動データに対して、NTTが提案した除雪要否と交通振動特性の相関分析手法に、NECの車速検出アルゴリズムを組み合わせることで、除雪実施判断を行う実証実験を行った。

通信用光ファイバを用いた振動センシング技術による除雪判断の概要

 既に張り巡らされている通信用地下光ファイバーが感知した振動データを収集することで、除雪工区内の複数地点における除雪判断の遠隔実施ができる。対候性に優れるメンテナンスフリーな通信用光ファイバーを、そのままセンサーとして活用できるため、新たなセンサーデバイスの設置が不要。交通流の円滑さの指標となる車速情報と、路面状態と相関を持つ振動周波数の応答特性を特徴量として構成した除雪要否判定モデルの活用により、調査員の経験則によらず適切な除雪判断ができ、道路ごとに取得したデータからリアルタイムに除雪判断ができる。

 実証実験では、青森市内の道路地下に敷設されている通信用光ファイバーの上部側終端部にセンシング装置を接続して、3つの除雪工区内にある市道の交通振動を2022年11月から2023年3月までセンシングした。

 さらに、交通振動から車速情報と振動周波数の応答特性の統計データを取得し、除雪要否判定モデルを構築、精度を評価。実証実験を通じて、積雪による路面状況の変化により車速や振動周波数の特性が変化する旨を新たに発見し、モデル化した。

 通信用光ファイバーが除雪工区内の市道地下に張り巡らされている利点を生かし、光ファイバー振動センシング技術により得られた交通振動データの解析を通じて、複数の除雪工区内における除雪判断をすることに成功した。これにより、豪雪地帯の主要な地域課題である、道路除雪作業前の市街パトロール作業と除雪判断をDX化することが期待できるとしている。

 実証実験の成果を踏まえ、3社は除雪要否判定モデルの汎用性の実証に向けて、地域様相の異なるエリアにおける実験を継続し、将来的にはリアルタイムでの除雪実施判断のDX化により持続可能な道路除雪体制の維持など、豪雪地域の課題解決を目指すと説明。さらに、通信インフラを活用して収集可能な市街の振動データや環境情報を解析することで、地域課題を解決可能な光ファイバーセンシングの応用技術の確立に向け、共創活動を推進する。また、成果は11月14日~17日に開催される「NTT R&D フォーラム― IOWN ACCELERATION」に展示を予定する。