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東芝と東芝デジタルソリューションズ、高速道路上の路面の穴をリアルタイムかつ高精度に検知する路面変状検知AIを開発

 株式会社東芝と東芝デジタルソリューションズ株式会社は12日、高速道路において重大事故につながる可能性のある路面の穴(以下、ポットホール)を、リアルタイムかつ高精度に検知する路面変状検知AIを開発し、中日本高速道路株式会社(以下、NEXCO中日本)と共同で進める高速道路の日常点検の高度化に向けた実証実験において、同AI技術の有効性を検証したと発表した。これにより、同AIを活用したポットホール検知システムの実用化に目途が立ったとしている。

 路面変状による事故を未然に防ぐために、高効率・高精度な日常点検の実施が重要となる中、現在の点検は、点検員が車両に乗り込み、路面や標識などさまざまな点検対象の確認を目視で行っている。ポットホールについては、定期的に車両で巡回している点検員が、緊急補修を要するポットホールを目視確認すると、安全に停車できる場所を探して降車し、ポットホールの場所まで戻り、写真撮影・道路管制センターへの通報・緊急補修を実施する対応を行っている。発生箇所によっては停車が難しく、次のインターチェンジまで行き、降りて再度同ルートを通ってポットホール付近に向かうといったように、時間的ロスが大きいケースも生じており、目視による点検は、点検品質のばらつきにもつながる。

 車両にカメラを搭載し、収集したカメラ画像にAIを用いて走行中にリアルタイムかつ自動でポットホールの検出・通報ができれば、点検品質の平準化に加え、作業員の安全を確保しながら緊急補修までの時間を大幅に短縮できる。しかし、画像内の変状位置を含めて検知するAIは、従来の方式では、大量の学習用画像に変状位置を画素単位で教示する作業が必要となり、学習データの作成に多大な時間とコストがかかります。また、学習データと異なる変状や道路への適用が難しく、検知漏れや誤検知が大量に発生するという課題があった。

高速道路上のポットホール

 そこで東芝は、変状の有無を選別して学習するだけで、画像内の各画素の変状度合いから変状の有無と変状の箇所を推定する弱教師学習型のAI技術を開発した。同AIは、入力した画像に対して異常スコアマップを出力する深層モデルを用い、異常スコアマップの最大値と入力画像の変状有無が一致するように学習させることで、正常画像と異常画像の特徴の異なる部分、変状部分のスコアが大きくなるような異常スコアマップを出力する。同AIにより、画像1枚あたりの学習データ作成する教示作業時間は、従来と比較して約1分40秒から約1秒と、約1/100に短縮できる。

 また、東芝デジタルソリューションズは、同AIを用いて、車両に搭載したカメラで撮影した画像を解析し、道路管制センターにリアルタイムで情報共有するシステムを構築した。

 東芝と東芝デジタルソリューションズは、2022年9月からNEXCO中日本と共同で進める高速道路の日常点検の高度化に向けた実証実験において、NEXCO中日本の車両で、伊勢原保全・サービスセンター管内の新東名高速道路・東名高速道路等を走行して路面画像を収集し、NEXCO中日本の知見を用いて、ポットホールの有無のみを選別した学習データを作成した。

 この学習データを用いて追加学習したポットホール検知モデルを用いることで、一般道の画像で学習した汎用道路モデルと比較して、検知精度はROCAUC(異常検知アルゴリズムの評価指標の1つ)で61.25%から84.22%に向上した。また、路面外の過検出を77%から4%に抑えつつ、時速80km~100kmで走行しながら、ポットホールの可能性がある箇所をリアルタイムに検知可能なことを確認した。

 実証実験を通じて、東芝と東芝デジタルソリューションズが開発した路面変状検知AIがリアルタイムかつ高精度にポットホールを検知できること、学習データの整備の作業負荷を大きく抑えつつ、検知モデルの精度向上が可能なことが確認でき、2024年度の実用化に目途が立ったとしている。

高速道路画像のポットホール検知結果