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日本IBM、CEO調査の結果から「AIが企業の競争優位性を増幅する」
2023年8月10日 06:30
日本アイ・ビー・エム株式会社(以下、日本IBM)は9日、最高経営責任者(CEO)を対象に実施した意思決定や生成AIの対応に関する調査について説明会を開催した。調査はIBM Institute for Business Value(IBV)が実施したもので、日本IBMでは同日「CEOスタディ2023『AI時代の到来で変わるCEOの意思決定』」として日本語版を公開している。
意思決定に関する調査は、30ヶ国以上、24業種のCEO約3000人を対象として実施。また、生成AIの対応に関する調査は、米国のCEO 200人に加え、米国、英国、オーストラリア、シンガポール、ドイツ、インドの経営層369人を対象に実施した。
発表会の冒頭で、日本IBM 常務執行役員 テクノロジー事業本部長 兼 AIビジネス責任者の村田将輝氏は、「今回の調査から、AIが本質的な価値と企業の持つ変革力、つまり競争優位性を増幅する可能性に満ちていることがわかった。今は、AIによる成長機会と倫理的なリスクの両面を考慮してAIを推進しているCEOが多い」と述べた。
調査によると、米国のCEOの75%が、企業の競争優位性は先進的な生成AIの有無によって左右されると考えていることがわかった。すでに50%のCEOは、生成AIを製品やサービスに組み込んでおり、43%のCEOは、生成AIから得た情報を戦略的な意思決定に活用しているという。
生成AIに対する期待値について聞くと、CEOの約7割は生成AIで企業価値が高まると考えている一方で、CEO以外の経営層の約3割は、まだ自社には生成AIの導入に関する専門知識が十分ではないと回答している。
生成AIがもたらすと思われる潜在的な利益を聞いたところ、CEOはさまざまな領域で利益が得られると期待していることがわかった。例えば、売上や利益の改善を期待するCEOは57%、コンテンツの品質向上を期待するCEOは53%、組織機能の拡大を期待するCEOは51%といった具合だ。
また意思決定においても、適応性が改善されると回答したCEOは80%、実行可能性が高まると回答したCEOは78%、スピードが向上すると回答したCEOは76%にのぼる。
一方で、生成AIの導入に対する懸念点を聞いたところ、データリネージュ(データ履歴の可視化)やプロビナンス(来歴)に関する懸念を挙げたCEOが61%と最も高かった。次いで、データセキュリティを懸念するCEOが57%、独自データの不足を懸念するCEOが53%と続いた。
このように懸念を示しつつも、大半のCEOは今後1年以内に多くの機能で生成AIを活用すると答えている。すでに顧客サービス分野では、すでに使用事例があるか開発中であると回答したCEOが93%にのぼっており、製造分野では89%、サプライチェーンや物流、配送関連では87%、マーケティング分野でも87%で同様の回答が得られている。
生成AIによって、今後人材にも影響が及ぶことが考えられるが、こうした環境の変化に応じて人員を追加で採用したCEOは46%だった。また、人員の削減や再配置を実施したCEOも43%で、すでに人員に対して何らかのアクションが取られていることがわかる。
ただし、生成AIが普及していくことによる自社の人員への影響を評価しているかどうかを聞いたところ、すでに評価しているCEOは28%にすぎなかった。このことから、多くの企業が試行錯誤の段階にあり、どのようなインパクトがあるかについてはまだ暗中模索であることがわかる。
生成AIについての調査では、日本のCEOが調査対象となっていないものの、日本IBM IBMコンサルティング事業本部 エンタープライズ・ストラテジー部門責任者 パートナーの瀬良征志氏によると「今回のCEOスタディでは、全体的にグローバルと日本の本質的な大きな差異が過去の調査に比べて非常に少ない」という。
また、日本IBM IBMコンサルティング事業本部 エンタープライズ・ストラテジー パートナーの田村昌也氏は、「生成AIの言語モデルはマルチ言語対応のものが多く、日本で先行してトライしている顧客からも似たような課題が挙がっている。本格的に取り組む際の課題も、同じような認識をしている顧客が多い」と述べた。