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日立、Green x Digitalコンソーシアムで仮想サプライチェーンでのCO2データ連携の実証実験に成功

 株式会社日立製作所(以下、日立)は9日、2022年9月から2023年6月にかけて、一般社団法人電子情報技術産業協会(以下、JEITA)が事務局を務める「Green x Digitalコンソーシアム」において、「EcoAssist-Pro/LCA」「EcoAssist-Enterprise」「TWX-21」といった複数の環境系ソリューションと、他社ソリューションとの連携を目的とした共通ゲートウェイを用いた、仮想サプライチェーン上のCO2排出量データ連携の実証実験に成功したと発表した。

 2050年のカーボンニュートラル実現に向け、あらゆる産業においてサプライチェーン全体の脱炭素化が強く求められており、その達成にはScope1~2にあたる自社排出量に加え、サプライチェーンの上流・下流からの排出量であるScope3を含む、サプライチェーン全体のCO2排出量の正確な把握と削減努力が不可欠となる。特に、調達品のCO2排出量は、一般的に採用されている按分方式の算定方法では、サプライヤーの削減努力を反映できないため、サプライヤーからCO2排出量データを取得する動きが増えている。

 しかし、データを取得するにあたって共通的なCO2排出量算定の方法論がなく、データの品質にばらつきが生じるという問題がある。さらに、CO2排出量を見える化するソリューションが数多く開発される中、異なるソリューション間でデータ連携を行うための共通的なデータフォーマットや接続方式などがないため、サプライチェーンに属する当事者が異なるソリューションをそれぞれ使用する場合に、全体のCO2排出量把握が困難になる。

 上記の課題を受けてJEITAでは、Green x Digitalコンソーシアムにおいて、デジタル技術を活用し、サプライチェーンの企業間でCO2排出量データを連携し、見える化する実証を2022年9月から開始した。

JEITAのGreen x Digitalコンソーシアムにおける実証実験の概念図

 2023年1月まで実施された、データ連携に向けた技術実証のフェーズ1を経て、2023年2月から6月までのフェーズ2においては、CO2算定実務も目的に加え、ソリューション提供・ユーザー企業32社が参加し、各社のソリューションを連携させる実証を行った。具体的には、JEITAが策定した「CO2可視化フレームワーク」と「データ連携のための技術仕様」のもと、仮想の製品の生産工程において、参画企業が素材・加工材・製品の3つのグループに分かれて、それぞれのCO2排出量算定を分担し、サプライチェーン全体の排出量を算出した。

 日立は実証に、EcoAssist-Pro/LCAにおいては部品表単位の精緻な算定を、EcoAssist-Enterpriseでは企業・組織単位での算定、TWX-21においては簡易算定のテーマで、それぞれ参画した。さらに、各ソリューションと他社ソリューションとのデータ連携にあたっては、異なるデータフォーマットや接続方法という課題を解消すべく、双方向接続を可能とした共通ゲートウェイを用いて、10社の他社ソリューションとの連携に成功した。

 実証は、複数の事業者間で異なる脱炭素ソリューションを連携するという、日本では初めての試みで、業界横断でのサプライチェーンCO2排出量削減の実現に向けて大きく前進したとしている。

 日立は、Green x Digitalコンソーシアムが策定した「CO2可視化フレームワーク」と「データ連携のための技術仕様」をもとに、今回の実証を企業間データ連携のユースケースとし、他のソリューション提供企業との連携や官民協力を深めていくと説明。また、実証に投入した各ソリューションを含めて、日立グループの各種Lumadaソリューションと連携したプラットフォーム化を目指し、日立の製造拠点を中心に社内外と実証を重ね、その成果をグローバルに拡大し、顧客の脱炭素対応に関する課題解決に貢献していくとしている。