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東工大、次世代スパコン「TSUBAME4.0」の来春稼働に向け構築を開始

AI向け演算性能952ペタフロップスを予定

 東京工業大学(以下、東工大)学術国際情報センターは18日、次世代スーパーコンピュータ(スパコン)「TSUBAME4.0」の来春稼働に向けて構築を開始すると発表した。

 TSUBAME4.0の理論演算性能は、科学技術計算で利用される64bitの倍精度で66.8ペタフロップス、人工知能(AI)などで利用される16bitの半精度では952ペタフロップスの性能を達成する予定。これは、それぞれの演算精度において現存する国内のスパコンの中では「富岳」に次ぐ2位相当となり、これまでのTSUBAMEシリーズと同様に、科学技術計算・ビッグデータ解析・AIなど幅広い分野で積極的に活用していくとしている。

TSUBAME4.0 スーパーコンピュータ 完成イメージ図

 東工大のスパコンであるTSUBAMEシリーズは、2006年4月のTSUBAME1.0稼働以来、長年にわたって「みんなのスパコン」として、国内外の産学官の研究開発を支えてきたと説明。GPUスパコンというハードウェアとしての特徴に加え、現在運用中のTSUBAME3.0の導入後も、利用しやすさの改善のためさまざまなソフトウェアの改良を重ねており、これらの技術を昇華させる形で、TSUBAME4.0のハードウェア・ソフトウェアの設計を行ったという。

 東工大では、TSUBAME4.0の調達に先立ち、東工大すずかけ台キャンパスに新たなスパコン用の建屋を整備し、その導入に備えてきた。TSUBAME4.0の開発にあたって政府調達「TSUBAME4.0スーパーコンピュータ」が実施され、日本ヒューレット・パッカード合同会社(以下、HPE)が落札した。今後、東工大はHPE、米NVIDIA、関連各社とともに構築を進めていく。

 TSUBAMEシリーズは、TSUBAME1.2のTesla、TSUBAME2.0のFermi、TSUBAME2.5のKepler、TSUBAME3.0のPascalと、過去においても最新のNVIDIA製GPUをいち早く採用しており、今回のTSUBAME4.0では最新世代のNVIDIA Hopperアーキテクチャに基づくNVIDIA H100 TensorコアGPUを、さらにTSUBAME4.0向けにチューニングした製品を採用し、高い互換性を確保。TSUBAME4.0のGPU数は960台で、TSUBAME3.0の2160台と比べて少なくなるが、高性能なGPUの採用と、GPUの論理分割機構の活用により、前世代機を超える性能・ユーザビリティを達成するとしている。

 TSUBAME4.0の構成は、これまでのTSUBAMEシリーズを継承し、x86_64アーキテクチャのCPUとCUDA対応GPUからなり、今までのプログラム資産をそのまま使えるとともに、世の中で幅広く使われているアーキテクチャであることから、世界中で開発が行われている最新の計算科学技術をいち早く導入できる構成となっている。

 その上で、倍精度理論演算性能はTSUBAME3.0の約5.5倍となる66.8ペタフロップス、AI向け性能は同約20倍となる952ペタフロップスとなり、AI学習処理やバイオインフォマティクスをはじめとした幅広いアプリケーションの大幅な加速を実現する。また、TSUBAME3.0に引き続き仮想化技術を活用することで、より多くのアプリケーションを同時に実行することにより、各研究者の計算待ち時間の削減を実現し、研究の質と生産性の両面での向上を目指す。

 TSUBAME4.0のシステムの計算ノード部として、HPE Cray XD6500シリーズのサーバーを240台採用し、各計算ノードは第4世代AMD EPYCプロセッサを2基、NVIDIA H100 TensorコアGPUを4基、768GiBの主記憶、NVIDIA Quantum-2 InfiniBandネットワークインターフェイスを4ポート搭載する。

 ストレージシステムは、Cray ClusterStor E1000で構成され、Lustreファイルシステムによってハードディスクベースの共有ストレージ44.2PBとSSDベースの高速ストレージ327TBに接続されるとともに、各計算ノードにも容量1.92TBのNVMe対応高速SSDストレージを搭載。計算ノードおよびストレージシステムはInfiniBandによる高速ネットワークに接続され、またSINET6を経由して100Gbpsの速度で東工大すずかけ台キャンパスから直接インターネットに接続される。

 東工大では、TSUBAMEシリーズはこれまで、「みんなのスパコン」として、幅広いユーザー層に潤沢な計算環境を提供してきたと説明。TSUBAME4.0ではこの理念を発展させ、従来型のコマンドライン・バッチスクリプトベースの利用だけではなく、Webアプリケーション経由での利用など、多様化するスパコンの使い方に対応し、特に初学者や幅広い分野の研究者にも使いやすいソフトウェア環境を備えた「もっとみんなのスパコン」として日常的に活用されることを狙うとしている。