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富士通と東京工業大学、次世代コンピューティング基盤の実現に向けた協働研究拠点を設置

 富士通株式会社と国立大学法人東京工業大学(以下、東京工業大学)は20日、ゼロエミッションや安心安全な社会の実現に向け、AIやハイパフォーマンスコンピューティング(HPC)技術によるシミュレーションにおいて、大規模なデータ処理が可能な次世代コンピューティング基盤の実現に向けた「富士通次世代コンピューティング基盤協働研究拠点」を、東京工業大学すずかけ台キャンパスに設置したと発表した。協働研究拠点は、富士通が推進する「富士通スモールリサーチラボ」の取り組みの一環として、東京工業大学協働研究拠点制度を活用し、東京工業大学オープンイノベーション機構の支援のもと設置する。

 富士通では、スーパーコンピューター「富岳」をはじめとする、高性能なコンピューティング基盤および基盤上で、気象予測や創薬分野などの科学技術計算を実行するアプリケーションを開発してきた。また、東京工業大学も、GPUやサーバー液浸技術などのコンピューティング技術を活用し、さまざまなAIによる大規模深層学習やシミュレーションとデータ科学の融合による科学技術計算の高速化を達成してきた。

 協働研究拠点では、富士通の研究開発力と東京工業大学の学術研究を組み合わせ、東京工業大学が有するスーパーコンピューター「TSUBAME」などのHPCを超える、次世代コンピューティング基盤の確立、およびその技術の社会応用の拡大を目指す。

 研究内容としては、半導体微細化に依存しないコンピューティングの持続的な性能向上を実現するため、AIやHPC分野のアプリケーションやコンパイラ、アーキテクチャーなどの、さまざまなコンピューティング分野の専門家が協働研究拠点に集い、1)流体解析などの科学技術計算や大規模、複雑なAI処理を現行のCPUやGPU上で動作させ、性能におけるボトルネックを解析、2)解析結果を踏まえ、さらなる高速化を実現するコンピューティング基盤のアーキテクチャーの探索・設計、3)前述のアーキテクチャーを最大限に生かし、かつ移植性を担保するコンパイラなどのソフトスタックを開発、4)実現した新たなコンピューティング基盤上で各種アプリケーションの動作を解析し、最適化する――の研究サイクルを回すことで、ハードウェアとソフトウェア双方の技術革新による、次世代コンピューティング基盤の確立を目指す。

 共同研究において、富士通はアプリケーション高速化と効率化に向けたアーキテクチャーの強化や、計算リソースの動的最適化などの技術に関して、コンピューティング基盤への適用に向けた評価と検証を行い、効果が見込める要素技術を次世代コンピューティング基盤向け技術として抽出し、製品適用に向けた拡張やハードウェア・ソフトウェアの協調などの応用研究を行う。

 東京工業大学は、大規模AI処理や流体解析をはじめとする科学技術計算などのアプリケーションを高速利用するために必要なコンピューティング技術を、アプリケーションやコンパイラ、アーキテクチャーなどの各専門分野の観点から提案し、富士通とともにその性能や機能面での評価をプロトタイピング環境で実施する基礎研究を行う。

 富士通と東京工業大学は今後、アプリケーションやコンパイラ、アーキテクチャーなどの技術分野で横断的に研究開発を進めるために、さまざまな研究機関や企業との共創の場を形成し、既存のコンピューティング基盤の性能を大きく向上させる要素技術の確立と、その応用範囲の拡大を達成することで、持続可能な社会を実現するイノベーションの創出を目指すと説明。また、将来のコンピューティング分野の拡大と発展を見据えて、同分野の人材育成にも産学一体となって取り組んでいくとしている。

「富士通次世代コンピューティング基盤協働研究拠点」設置について調印した、富士通代表取締役社長の時田隆仁氏(左)と、東京工業大学学長の益一哉氏(右)