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リコーなど4社、トンネル工事現場でローカル5Gと360度ライブストリーミングを活用した遠隔地からのリアルタイム施工状況確認を実現

 株式会社竹中土木、株式会社演算工房、日鉄ソリューションズ株式会社(以下、NSSOL)、株式会社リコーの4社は28日、国土交通省が目指すデジタルツインの実現に向け、トンネル工事としては初めてローカル5Gとバーチャル空間での360度ライブストリーミングを活用し、遠隔地からリアルタイムで施工状況を自由視点で確認できるシステムを構築したと発表した。

 システムは、福島県下郷町にある国土交通省東北地方整備局発注の「国道121号湯野上2号トンネル工事」において、1月から開始した実証実験で活用し、国土交通省の実証確認を得た。

発注者が郡山国道事務所にてVRヘッドセットを装着し、現場状況を確認する様子

 今回の土木工事現場である「湯野上2号トンネル」は、会津縦貫南道路湯野上バイパスの中で最も長い約2.5kmのトンネルとなる。湯野上バイパス整備は、観光期の混雑緩和、落石崩壊や線形不良といった交通支障箇所の整備、南会津地方の住民の救急医療へのアクセス性の向上を目的としている。

トンネル工事の切羽(きりは)での掘削状況

 トンネル坑内の環境は、携帯電波が入らず通信手段が限られているため、内部の状況を詳細に確認するのは現地での目視確認以外には方法がない。また、トンネル工事の施工においては、掘削における支保構造(地山を支えるH型の鋼材・コンクリート・ロックボルト)の仕様を決めるため、地層の変化ポイントごとに地盤の状態を確認する「岩判定」を行う必要がある。岩判定は、発注者や現場監督など関係者全員が「切羽(きりは)」と呼ばれるトンネル工事の掘削現場まで移動して行うため、岩判定のたびに多数の人員の移動負荷や物理的な手間が生じていた。

 こうした課題を解決するため、4社協働のもと、4K対応360度カメラとVRヘッドセット、広域・大容量・低遅延のローカル5G無線通信システムを活用して、遠隔地からリアルタイムでトンネル工事現場の施工状況を自由視点で確認できるシステムを国内で初めて導入した。

システム構成イメージ

 切羽付近に設置された4K対応360度カメラの映像を、トンネル内のローカル5G無線を通じて現場の仮設事務所に伝送することにより、その場からリアルタイムで施工状況を自由な視点で確認できる。また、インターネットを通じて遠隔地にいる発注者も、同様の確認が可能となる。

 リコーが提供する、任意の空間をVR上で再現するソリューション「RICOH Virtual Workplace」を活用し、バーチャル空間上でさまざまなデータを組み合わせることにより、遠隔地からの施工状況確認を実現した。施工確認として、2つの用途でRICOH Virtual Workplaceを活用しており、1つ目は360度カメラ「RICOH THETA」と「RICOH Live Streaming API」を活用し、4K映像の360度ライブをバーチャル空間上で再現。現場映像の自由視点、リアルタイム確認を実現した。また、音声の配信も可能なため、岩片をハンマーでたたいた時の打撃音による岩の差異の判別も行える。

 2つ目の用途では、地形やトンネルの3Dモデルを取り込み、資料や属性情報と組み合わせ、工事進捗や切羽の状況を連続・立体的に確認することを可能とした。複数人が参加した場合、物理的に離れた場所にいる人もアバターとして同じバーチャル空間に入り込み、自然で自由なコミュニケーションを行える。3Dモデルへの各属性情報の付与に関しては、演算工房が提供する「CyberNATM」上で作成された各情報を3Dモデルへ自動的に付与することで、施工管理の効率化も図る。

3次元統合モデル

 また、トンネル坑道は最終的に約2.5㎞の総延長となるため、広域の範囲で電波照射ができるよう、国内で許容されている最大出力の63Wでローカル免許を取得している。

 竹中土木は、元請としてトンネル工事の施工と現場管理を実施。また、システムの導入を企画し、導入後のシステム運用を担当するとともにローカル5G免許人として免許取得した。

 演算工房は、トンネル工事におけるさまざまな測量技術、ICT活用の専門家として、システムの設計導入、導入後の運用支援を担当した。

 NSSOLは、ローカル5Gの導入実績を多数有するシステムインテグレータとして、NOKIA製のローカル5G無線通信システムの設計導入、導入後のシステム保守を担当した。

 リコーは、任意の空間をVR上で再現し、各自がVRヘッドセットを使ってその空間に一堂に会することが可能なソリューション「RICOH Virtual Workplace」の提供と運用支援を担当した。

 また、今回の現場導入に先駆けては、映像機器とローカル5Gの接続性を確認するため、4社はNSSOLの提供する「0→1 Design Lab」で検証を実施し、技術課題を事前に検証している。

 4社は今回のシステムの導入を皮切りに、今後、作業員の安全見守りの強化や重機の遠隔運転など、土木工事現場におけるDXの実現を目指してさまざまな取り組みを行っていくとしている。