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NTT Com、1枚のSIMでキャリア冗長を実現できるIoT向けSIMを開発

 NTTコミュニケーションズ株式会社(以下、NTT Com)は28日、1枚のSIMで複数のキャリアを利用でき、一方のキャリアで障害などが発生した際に、SIMで自律的にもう一方のキャリアに接続先を切り替えられる「Active Multi-access SIM」の開発に成功したと発表した。開発したSIMは、主にIoTへの利用を想定したデータ通信用のSIMとなる。

 NTT Comでは、IoT用途において、複数のキャリアを利用した冗長化を必要とする顧客が増加しているという要望に対応するため、ローミング方式により日本で複数のキャリアに接続できるモバイルデータ通信サービス「IoT Connect Mobile Type S(TSLプロファイル)」や、「ドコモIoTマネージドサービス」におけるDual SIM対応ゲートウェイを用いたモバイル回線冗長化ソリューションを展開している。

 しかし、これらの方法による冗長化は、監視・切り替え動作を追加するために端末を改修したり、特定の端末を用いる必要があるため、より多くの顧客が通信の冗長化を簡易に実現できるよう、モバイル端末の機種に依存せず、汎用的にご利用できるサービスの開発を進めてきたという。

 開発したSIMは、1枚のSIMで2つのキャリアに接続でき、通信状態の監視や切り替えに関する機能を内包しているため、端末側には監視や切り替えの機能が不要となる。そのため、機種に依存することなく幅広い端末で利用でき、新たに専用端末の購入や機能開発が不要で、既存の端末でキャリア冗長化を行いたいケースや、小型IoTデバイスなど複数SIMの採用が難しいケースでも、より簡易にキャリア冗長化を実現できる。

イメージ図

 SIMに実装されたアプレットが、インターネット上のホストに対して定期的に通信確認を行うことで、通信が正常に行われているかを監視する。一定の条件下でメインのキャリアの通信障害を検知すると、予備のキャリアに自動で切り替えを行う。また、一定時間経過後は、メインのキャリアへの切り替えを自動で行う。このため、多数の汎用的な端末にSIMを利用している場合でも、一つ一つ手動でキャリアの切り替える必要がない。

 開発したSIMは、ETSI/3GPPで標準化された仕組みにより動作するため、これらの標準に準拠したモバイル端末(SIM Toolkitが動作するもの)であれば動作が可能。ただし、機種によっては標準で規定されたコマンドなどの一部または全部に対応しておらず、正常に動作しない場合があるとして、NTT Comでは今後、顧客が動作確認を行える枠組みや、動作確認済み機種リストの公開などを検討していくとしている。

 SIMには、NTT Comの独自技術である「アプレット領域分割技術」を活用。アプレット領域分割技術は、SIM内に通信に必要となる情報を書き込む通信プロファイル領域と、アプリケーションなど通信以外の情報を書き込むアプレット領域を完全に分離して管理する技術で、通信以外の機能をパートナー企業などが独自に実装できるようにしたもの。この技術の活用により、SIM内の情報へのアクセスに関して安全性を高めることで、通常SIMに求められる耐タンパ性を確保している。

 NTT Comでは、SIMのIoT向けトライアル提供を2023年6月より開始する予定。参加企業からSIMの有効性や課題に関するフィードバックを得て、機能向上を目指す。トライアル期間は2023年6月から2023年9月(予定)まで。また、トライアル提供後、2023年度内に「IoT Connect Mobile Type S」において商用サービス提供を予定するとしている。