ニュース
Coltテクノロジーサービス、SIerとの連携を強化し、西日本へ通信サービスを拡張
2023年2月21日 06:15
Coltテクノロジーサービスは2月15日、企業戦略説明会を開催した。同社は、ColtグループのAPAC部門として、法人向けネットワーク、音声、データセンターサービスをグローバルで提供する通信事業者。世界52都市で自社ファイバーによるメトロネットワークを展開しているのが特徴で、金融、サービス、製造、流通、ゲーム、メディア、医療、教育や各種SIベンダーやサービスプロバイダーなど多様な業界をカバーしている。
西日本へネットワークを拡張
説明会ではまず、Coltテクノロジーサービス代表取締役社長兼アジア代表の星野真人氏が、Coltのグローバル・国内事業戦略/ネットワーク拡張計画について説明した。
Coltでは、「Wherever(いつでも)、Whenever(どこでも)、However(どのようにでも)」をグローバルでのミッションとしている。その背景は、DXの進展だ。
DXとクラウド化は不可分だが、クラウド化はコスト面のメリットだけでなく、柔軟に使えるインフラという点が鍵だ。インフラを柔軟に使うには、当然ネットワークも柔軟に利用できなければならず、「コストを抑えながら、柔軟なネットワークをというのがキーポイント」だと星野氏は言う。
具体的な取り組みとしては、カバレッジやラインアップの拡張、クラウドプロバイダーとの相互接続、オンデマンドサービスや4G/5Gモバイルアクセスのローンチ、ネットワーク機能の仮想化やポータルなどへの投資を進めている。
日本国内のクラウド化やDXは、欧米の状況と比べるとまだ拡大の途中であり、これからも成長が見込める。
Coltは、日本では、1999年にKVHとして東京と大阪にネットワーク拠点を開設したのを皮切りに、2017年に名古屋、2019年に京都と神戸に拠点を開設している。さらに現在、広島、岡山、福岡の西日本への拡張を計画中で、2024年中には完了したい考えという。
西日本への投資について星野氏は、「お客様からの要望に応える形で、グローバルでクラウド接続サービスの拠点を増やしている。日本でもハイパースケーラーのお客様が増えていて、東南アジア向け海底ケーブルの揚陸地が西日本なので、今後そこに特化した拡張を考えている」と言う。現在、データセンター向けビジネスは東京・印西、大阪といったエリアが中心だが、次に来るのは西日本と考えているようだ。
SI連携の強化と営業体制の刷新
続いて、マネージング・ディレクターアジア営業担当バイス・プレジデントの大江克哉氏が、アジアにおける販売パートナー戦略について説明した。同氏は、2022年5月にColtテクノロジーサービスに入社し、グローバルおよびアジアの成長戦略策定に参画している。
アジアの成長戦略において、戦略的な柱は3つあるという。
①提供エリア拡大&サービス強化
星野氏の説明の通り、日本国内においては顧客やパートナー企業からの要望に応え、西日本への拠点拡張計画が進んでいる。
②システムインテグレーターとの協業強化
日本市場の特徴として、エンタープライズにおけるシステムインテグレーターへの依存度が非常に高い。ICT人材の7割がSIer側にいると言われており、テクノロジー選択についても影響力を持っている。この状況を鑑み、SIerとの連携強化を2つめの柱とした。
③ハイブリッド型の営業モデルの導入
大江氏の直下に、営業チャネルを以下の3つに再編した。
・エンドユーザーである一般の企業を担当する「エンタープライズ営業統括本部」
・通信キャリアパートナーを担当する「ストラテジックアライアンス営業本部」
・SIerを担当する「パートナー営業本部」
3つめのパートナー営業本部は、②のSIerとの連携のため、大江氏が初めて立ち上げた部署だ。
また、エンタープライズ向け営業は、顧客セグメンテーションがグローバルで変更されている。従来は、企業規模と地域の広がりで顧客を階層型に分けていたが、売上高と成長性でセグメント分けするマーケティング体制を導入しており、日本でもこれに倣う形だ。
売上額の多寡を縦軸に、成長性を横軸に、9つのセグメントに分け、売上額か成長性(あるいはその両方)が高い企業に対してはエンタープライズセールス部門が直接アプローチ(対面営業)し、そうでない企業に対してはデジタルマーケティングを最大限活用してテリトリーセールスやインサイドセールスがタッチポイントを持つという、メリハリのあるマーケティング体制を構築していく。
オフィスにおけるトラフィックトレンドの変化
DXの進展によるクラウドシフトに加えて、コロナ禍に端を発したリモートワークの普及により、企業・組織におけるトラフィックトレンドは変化している。Coltでは、自社のロンドンオフィスにおけるトラフィック需要を調査した。その内容が紹介されたので、簡単に触れておこう。
2020年と2022年のトラフィックを比較したのが以下の図だ。
どちらも2月のある1週間の状況で、オフィス内の人口が約1/6になっているのは、コロナ禍によってリモートワークが進んだためだ。しかし、オフィス内のユーザー数が減ってもトラフィックは減っておらず、むしろ26%増加している。
また、トラフィックの内容を見ると、2020年時点ではVPN経由のアプリケーション利用が多くSaaSはまだ少ないが、2022年になるとSaaSの利用がVPNの利用を上回っている。また、ZOOMやTeamsといった動画のトラフィックが大きく伸びている点にも注目だ。これは、オンラインで会議することが一般化したためと考えられる。
さらに、1週間を曜日ごとに分けたのが以下の図だ。こちらは、2022年の2月に続いて、11月にも調査している。
この図からは、曜日によって違いがあることが分かる。リモートワークをする人が多い曜日や、社内の定例会議がある曜日などがあるためだと考えられる。11月になると出社する人が増えるが、それでも曜日によって違いがあるという傾向は変わらない。社内にいてもオンラインで会議に参加することが増えているためだろうという。
これらの調査も踏まえて、Coltではネットワーク設計について以下のような取り組みを行っている。
①オンデマンド&SD-WAM
・突発的な帯域需要にフレキシブルに応える
・在オフィスとリモートワークのハイブリッドに対応する
②ネットワーク優先制御
・業務に必須のアプリケーションの優先制御
・定例全社会議の曜日に動画アプリケーションを優先するなど
③ネットワークセキュリティ
インターネット接続が増えているので、ゼロトラストやSASEなどの取り組みが重要
Coltでは、さまざまな企業のニーズに応えるべく、サービスラインアップを拡充。依然から提供している専用線やイーサネット、クラウド接続サービスやSD-WAN、インターネット接続の他、昨年4G/5Gのリモートアクセス回線もローンチしている。
説明会では、SIerとの協業で北里大学にSD-WANを提供した事例が紹介された。同大学は相模原、白金、十和田の3カ所にキャンパスがある。コロナ禍の影響でリモートワークやリモート授業が拡大したことを背景に、広帯域で柔軟なインターネット接続が必要になっていた。Colt IP Accessは帯域保証型のインターネット接続サービスであり、「クラウドファースト、ローカルブレークアウト、ゼロトラストの要件に対して、安定してサービスレベルを満たした唯一のサービスと評価された」(大江氏)という。