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経営に直結したDX推進を支援していく――、アバナード新代表取締役の鈴木氏

 アバナード株式会社は28日、2022年9月にスタートした新年度の事業戦略説明会を開催した。新年度がスタートした9月1日付で、代表取締役だった安間裕氏が会長に就任し、代表取締役には鈴木淳一氏が就任した。

 説明会には安間氏、鈴木氏がそろって出席。鈴木氏は、「日本では、事業の高度化や新しい価値創造につなげる、DXを行う人材が足りない。当社の技術力、コンサルティング力が貢献できる」とビジネス拡大に強い自信を見せた。

アバナードの鈴木淳一代表取締役

 また鈴木氏は、現在の日本企業が置かれている環境について「コロナ禍によりリモートワークが加速し、事業をデジタル化することの重要性が再認識され、未来を見据えた経営と事業を見つめ直す大きな転換期を迎えた。その後、アフターコロナといわれる現在、企業はDX推進の転換期を迎えている。社内コミュニケーションツールや、紙媒体をデジタル化することは進行したが、事業の高度化、新しい価値の創造はこれからという段階にある。IT人材が不足していることの指摘が多いが、単純な事業のデジタル化だけでなく、高度な技術と知識を擁し、経営とデジタルの融合を図ることができる人材が不足している」と指摘した。

 そして、「この市場ニーズにこそ、当社の強みである技術力とコンサルティング力を生かし、大いに貢献できると考える」とアピールしている。

 さらに、鈴木氏は、新年度のプライオリティのひとつに「パートナー、顧客との共創体験強化」を掲げ、それを具現化する新年度のビジネス成長戦略として、次の4つを挙げた。

1)金融サービス、通信・メディア・ハイテク、製造・流通、素材・エネルギー、公共サービス・医療健康の5つを注力産業分野として、各産業ニーズに応える組織体制強化
2)水平統合によるクロスソリューション提供の実現
3)顧客とゴートゥマーケット(GTM)の新しいビジネスモデルを共創
4)マイクロソフト、アクセンチュアとの協業加速

ビジネス成長戦略

 最初に挙げた“産業ニーズに応える組織強化”では、「DXに向け、さまざまな業種のお客さまからデジタル化、ビジネスモデルの変革についてご相談いただく機会が増えた。お客さまの声を聞く中で、単にお客さまの要望に応えるだけでなく、最適な支援が何かを一緒に考え、推進していく新しい組織の必要性を感じた。新しい組織では注力する5業種それぞれの支援体制を整え、対応していく」としており、産業ニーズに合致した支援を行う考えを示した。

注力産業分野

 2番目の水平統合によるクロスソリューションは、「かつてのERP導入、IoT導入といった個別支援ではなく、お客さまのビジネス全体に対し、エンド・トゥ・エンドでソリューションを提供していく」という企業全体を変革することを想定したソリューション提供を目指したものとなっている。

 3番目に挙げた顧客とGTMの新しいビジネスモデル共創は、今年4月に発表したソニーセミコンダクタソリューションズと、インテリジェントビジョンセンサー「IMX500」を活用したAI・データ分析スマートストアソリューションで、リテール現場のスマート化を推進した具体的な事例となっている。

 鈴木氏は、「お客さまを支援する立場ではなく、共にビジネスを創る立場でDXを推進し、お客さまと共に新しいゴートゥマーケットを実現する新しいビジネスマーケット創出を目指していくもの。日本法人のスタッフに加え、グローバルメンバーと議論を行いながら、クライアントの課題解決に臨んでいく」と説明した。

 4番目のマイクロソフト、アクセンチュアの協業の加速は、2社が出資して誕生したアバナードの特性を生かし、「アクセンチュアの経験、マイクロソフトのテクノロジーとエコシステムをアバナードの専門性に結びつけ、これまでも大きな成果を出してきた。今後、さらに連携を強化していく」と説明した。

 新年度の注力領域としては、「誰もが生き生きと活躍し、成長できるよう多様な働き方の支援を強化」にも取り組む。鈴木氏は、「ビジネスの成長に欠かせないのは人材で、社員が働きやすい環境を整えることは、重要な経営課題」と説明。現在も9割の社員がリモートワークを行っているが、「社員自身が一番生産性の高い、パフォーマンスを発揮できる環境を選択することができる。例えば、地方創生に取り組む社員は、その地域に移住し、その地域で生活しながら業務を進めている」とし、社員自身が最適な働く場を選ぶことができるとアピールした。

 新たな動きとして、日本からグローバルチームの一員としてプロジェクトに関わることや、グルーバルチームの知見を日本企業向けプロジェクトに生かすなど、グローバル企業ならではの支援を行うことも進めていく。

2022年 アバナードグローバルワークプレース調査――日本の視点

 また、デジタル人材が不足していることに対しては、異業種、異職種など、潜在能力を重視した新しい採用アプローチとなる「アバナード アカデミー プログラム」をスタートした。このプログラムは、グローバルで確立したトレーニングプログラムで、今回日本で展開することとなった。受講者は、入社後約2カ月の特別トレーニングを通じ、マイクロソフトテクノロジーへの理解と、該当職種に必要なスキルの習得を図る。アバナードはアカデミープログラムを通じ、高い潜在能力を持つ多様な人財の採用を促進し、デジタル人財の育成加速を目指す。

 「このプログラムは、日本のデジタル人材育成にもつながるものとなる」(鈴木氏)という。

アバナード アカデミー プログラム

 こうした施策とともに、アバナード自身の認知を広める活動も強化する。9月22日からグローバルでブランド認知活動がスタートし、日本ではトヨタ自動車と共同で作成したブランドビデオを作成したことが紹介された。

ブランドキャンペーンを展開

 鈴木氏が代表取締役となって新体制をスタートしたアバナードだが、会長となった安間氏は、「実はもっと鈴木にバトンを渡し、私は現場に出ないことを想定していたが、日本では高齢の経営者が顔を出すことが望まれる場面が多々あることがわかった。鈴木(代表取締役)に協力し、展開していく」と述べ、会長として、協力体制を取っていくことを明らかにした。

 その上で鈴木体制の新生アバナードに望むこととして、「もともとグローバル企業ではあるが、日本発でグローバルに活躍する社員や施策がもっと誕生してほしい」とし、日本法人発でグローバル展開できるような場面が増えることが望みだと説明した。

アバナードの安間裕会長