ニュース

NTT Com、受発注マッチングシステムを門真プラットフォームに提供 官民連携で門真市の中小製造業を活性化へ

 NTTコミュニケーションズ株式会社(以下、NTT Com)は20日、門真プラットフォーム(KPF)に対し、大阪・門真市の中小企業と日本全国の企業間の製造業における受発注取引をマッチングさせるシステムを提供すると発表した。またKPFは、同システムを活用した「KPF受発注システム」を11月1日より提供開始する。

 9月20日に行われた説明会では、「KPF受発注システム」を提供する背景やシステムの概要、門真市の中小製造業に与える影響などについて説明した。

 今回、NTT ComがKPFに提供したシステムは、「AIにより受発注企業のマッチングを行う」、「案件登録から支払いまで受発注取引における一連のプロセスを支援する」、「発注企業が指名した企業から見積もりを取得できる」など、製造業における受発注をICTによりサポートするもの。KPFでは、このシステムをベースにした「KPF受発注システム」を企業に提供するとともに、同システムを活用した地域のものづくり活性化を促進する事業を運営する。

 またNTT Comでは、同システム利用企業の業務改善を実現するソリューションの提案・提供を行う。さらに、門真市が市内の中小製造業の支援を担うことで、官民連携による門真市の中小企業活性化と日本製造業のさらなる成長を目指す。

「KPF受発注システム」の概要

 KPF 代表幹事企業 株式会社広伸 代表取締役の石川裕氏は、中小製造業の現状について、「国内製造業の企業数の99%を占め、地方を支える中小製造業は、事業所数、従業者数ともに減少傾向にあり、営業力・販売力の低下やコストの高騰、後継者の育成、事業承継といった多くの問題を抱えている。これらの問題を解決するには、受注機会の増加を図る必要がある」と指摘。

 「しかし、受注企業側の中小製造業の営業力低下や廃業などの影響もあり、発注企業が新規案件で適切な受注企業を探すことが困難になっているのが実情だ。そのため、受発注企業ともに、新たな受注機会を増やすためのマッチングへの期待が高まっている。そこで今回、受発注企業それぞれのニーズにマッチした取引を支援するべく『KPF受発注システム』を提供開始する」と述べた。

門真プラットフォーム 代表幹事企業 株式会社広伸 代表取締役の石川裕氏

 「KPF受発注システム」の主な特長として、NTT Com ビジネスソリューション部 スマートワールドビジネス部 スマートファクトリー推進室 担当課長の大塚克美氏は、「AIマッチング機能」、「デジタル取引支援機能」、「チャット機能」の3つを挙げる。

 「AIマッチング機能では、中小企業、特に加工業を中心とする製造業各社の得意な領域でマッチングすることで、より企業ごとの特色を生かした製造案件を受注することが可能になる。デジタル取引支援機能では、各社ごとの契約書面作成・口座開設が不要になるため、発注企業・受注企業ともに契約・金銭授受の手間などを大幅に削減できる。そして、チャット機能では、受発注マッチング後に各社ごとにチャットが行えるため、迅速なコミュニケーションが可能になる」と説明した。

NTTコミュニケーションズ ビジネスソリューション部 スマートワールドビジネス部 スマートファクトリー推進室 担当課長の大塚克美氏

 このほかに、発注企業が自由なキーワードで受注企業を検索し見積もり依頼する指名見積もり機能や、公開した要件に対して応札を希望する受注企業からの見積もりを募る公開見積もり機能を提供する。発注企業は、これまで取引実績のないものの高い能力や強みをもつ企業と接点をもつことができる。また、受注企業は、これまで取引がなかった企業から案件を獲得する機会を得ることができる。

 「KPF受発注システム」の利用企業の要件は、発注企業が、新規加工製品の発注を希望する日本全国の企業。受注企業が、門真市およびその周辺で販路拡大を希望する製造業を営む中小企業。マッチングの対象となる案件は、自動車、ロボット、家電、装置機器、建築・土木、建機などに関して加工組み立てを依頼する案件。図面を用いて、オーダーメードの部品加工を依頼する案件。試作品や少量生産品の作成を依頼する案件。フライス(マシニング)、旋盤、研削、板金など加工を施す案件。複数工法にまたがる加工品、アッセンブル品などを一式発注する案件となる。

 門真市 市民文化部 産業振興課 課長の高田隆慶氏は、市内の中小製造業に与える影響について、「『KPF受発注システム』を活用することで、受注側となる市内の中小製造業は、自社の強みを生かせる取引を、近畿圏だけでなく全国から効率的に獲得することが可能となる。これにより、市内の付加価値額の増加や、商業・サービスなどへの波及、新たな雇用の創出など、地域経済の活性化につながることを期待している」との考えを示した。

門真市 市民文化部 産業振興課 課長の高田隆慶氏

 NTT Comでは今後、まずは門真市および周辺の近畿地方へ展開し、中長期でさらにステージを広げ、日本全国への拡大を図る。「2023年度までに、近隣の2~3自治体と連携し、2025年度までに全国の各地方自治体(8地方区分)との連携を目指す」(NTT Com 大塚氏)としている。また、欧州・北米など海外企業から日本企業が受注しやすい環境を構築していくことで、経済産業省製造産業局が推進する「サプライチェーンの強靭化」と「デジタルトランスフォーメーション(DX)の取り組み深化」を促進し、日本の中小製造業のさらなる成長、地域のものづくり産業の持続的発展に貢献していく考え。