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北海道電力、Microsoft HoloLens 2を活用したMR巡視点検アプリを火力発電所に導入

導入の経緯やアプリの特徴などを説明

 北海道電力株式会社とアバナード株式会社は26日、複合現実(MR:Mixed Reality)を活用した巡視点検業務用アプリケーションを共同で開発したと発表した。

 同アプリケーションは、米MicrosoftのMRデバイス「Microsoft HoloLens 2」をベースとしたヘルメット一体型デバイス「Trimble XR10」とともに、火力発電所の苫東厚真発電所に導入された。発電所の巡視点検業務でMRが活用されるのは国内初だという。

 北海道電力 火力部火力情報技術グループリーダーの宮崎浩一氏は、今回の取り組みの背景について、「北海道電力の火力発電所では、電力供給におけるトラブルを未然に防止するため定期的に設備の巡視点検を行っているが、多岐にわたる設備の異常を早期に発見するには多くの経験とノウハウが必要。定年退職に伴いベテラン技術者は減少しており、これまで職場内研修などにより習得していた巡視点検の技術を、効率的に継承していくことが課題だった」と説明、その課題解決に向けてMR技術を採用したと話す。

今回の取り組みの概要

 巡視点検アプリケーションは、HoloLens 2によって巡視ルートや点検内容を明確に表示、業務の標準化や可視化ができるようになっている。HoloLens 2内に示された順路に沿って移動すると、現在地の確認ポイントや作業指示、過去の不具合事例などの資料が自動的にHoloLens 2の空間上に表示される。巡視ルートや点検内容は、発電所員が自ら編集することができ、巡視点検に関する技術を盛り込むことが可能だ。

巡視点検アプリについて
アプリ内にて現場の巡視ルートが赤く表示される(左下枠内)
巡視点検の様子と、アプリ内に表示される内容

 アプリの開発にあたっては、MicrosoftのMRアプリ開発ソリューション「Azure Spatial Anchors」を活用している。同ソリューションの空間認識機能により、GPSやビーコンなどのデバイスやインフラ環境を整えることなく、約2kmという広範囲でも巡視点検のナビゲーションが可能だという。

 このアプリを活用することで、「巡視点検技術が早期に習得でき、効率的な技術継承につながるだけでなく、技術レベルが標準化され、設備異常の早期発見が可能になる」と、宮崎氏は述べている。

北海道電力 宮崎浩一氏

 今回のプロジェクトは、約1年前に始まった。北海道電力が現場の課題を抽出し分析したほか、活用方法を検討し、アプリの設定や評価を行った。アバナードは、アプリ開発や発電所内での動作確認を担当している。また、2社のほかにアクセンチュア株式会社も協力し、アプリ開発のプロジェクト管理を担当している。

 北海道電力は、経済産業省による「DX認定」を道内企業として初めて取得しており、今回の取り組みをDX推進の柱のひとつとして全社に展開する予定だ。具体的には、主要な火力発電所に巡視点検アプリを導入するとともに、現場業務でのMR活用をさらに推進する。また苫東厚真発電所では、昨年度から実地検証しているローカル5GとMRを組み合わせ、デジタル技術を活用した業務変革を拡大するとしている。

 巡視点検アプリの全社展開の時期について宮崎氏は、「設備が多岐にわたり、それぞれのルートを構築するには時間がかかるため、各発電所の状況を確認しつつ進めたい」としているが、「早期に研修の場でアプリを活用し、技術者を育成していきたいと考えているため、できれば年内には他の発電所でも展開を進めたい」と、早期展開への意気込みを見せた。

 北海道電力では、将来的には同様の課題を抱える他の発電事業者に対しても、今回の巡視点検アプリを提供したい考えだ。

会見には3社の担当者が登壇した。右から、北海道電力 火力部火力情報技術グループリーダー 宮崎浩一氏、アバナード ソリューション開発部MR担当マネージャー 武村禎一氏、アクセンチュア インダストリーX本部マネジャー 崎谷歩美氏