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三井物産とKDDI、AI・人流分析を手掛ける「株式会社GEOTRA」を設立
柔軟に条件設定でき、細かな粒度での分析を行える高粒度人流データなどを提供
2022年6月10日 06:00
三井物産とKDDIは9日、都市DXを推進する新会社「株式会社GEOTRA(ジオトラ)」を設立すると発表した。GEOTRAでは、人の流れを中心とした地理空間上の情報をAIで分析し、可視化できるデータプラットフォーム「GEOTRA地理空間分析プラットフォーム」の提供を開始する。
新会社の資本金は10億円で、三井物産が51%、KDDIが49%を出資する。社長に就任する陣内寛大氏は、三井物産に入社して5年目の29歳だ。
「三井物産とKDDIの強みを掛け合わせ、位置情報データを利活用したさまざまな事業を展開する。データの力で社会を前に進めることをミッションに掲げ、スマートシティの推進、カーボンニュートラルの達成、コロナからの経済回復、インフラ老朽化や少子高齢化の課題解決に向けて、豊富なデータと高い技術力を活用していく」(GEOTRAの陣内社長)とした。
GEOTRAでは、同プラットフォームを提供することで、スマートシティ開発などに関わる企業や自治体など、さまざまな事業者の企画や政策に関する意思決定を高度化することを目指すという。2025年度に売上高10億円を目標としており、将来的には100億円の事業規模に拡大する考えだ。
三井物産とKDDIは、2021年3月から、AIやau位置情報を活用し、人々の移動手段や時間、目的などを把握し、予測を可能にするプラットフォームおよび分析サービスを、共同で開発してきた経緯がある。
au位置情報では、10メートルのメッシュ単位での細かな位置情報を15分ごとに取得。300自治体で利用している実績を持つ。この情報をもとにして、都市の人流を可視化するとともに、関連するコンサルティングサービスを提供。データ分析を通じてスマートシティ開発をはじめとした都市に関わる事業者の意思決定を高度化し、企画、政策決定、実行、効果の検証などを、エビデンスに基づいて行うことができるという。
すでに三菱地所と共同で、東京・丸の内エリア(大手町・丸の内・有楽町)のMaaSや、街の利便性向上に関する施策検討など、エリアの魅力向上に関する取り組みを開始している。また渋谷区では、データをもとに街の現状を可視化し、分析する「シティダッシュボード」に活用。年齢ごとの移動ニーズやエリア、空間の特性を把握することに役立てているという。
三井物産 代表取締役副社長執行役員の米谷佳夫氏は、「人がいつ、どこに、どのように、なぜ移動するのかを可視化できる次世代型都市シミュレーターとして、技術面の検証を行ってきた。さまざまな業界からのニーズを確認したことで、今回の新会社設立に至っている」と説明。
また、KDDI 取締役 執行役員 専務 ソリューション事業本部長の森敬一氏は、「次世代都市型シミュレーターは、未来の街づくりに寄与していくものになる。フィジカル空間のデータをサイバー空間に上げてデータを分析し、それを戻すことで、建設工事や道路計画、運行計画、広告、配送、物流といったさまざまな用途に活用できる。ここでは、データから未来を予測していくことが大切であり、GEOTRAの人流シミュレーションにより、それを実現できる」と述べた。
新会社では、三井物産が持つスマートシティ開発を含むインフラ事業の知見、グローバルな事業展開力と、KDDIが持つ位置情報のビッグデータ、ネットワークやクラウドなどの通信インフラ、システム開発や構築、運用の強みを生かしていくという。
GEOTRAでは、これまで以上に細かな分析や、シミュレーションが可能な人流データを提供する「GEOTRAアクティビティデータ」、誰でも簡単にデータを用いた分析が可能な「Webダッシュボード」、顧客と共同でデータ分析やレポーティングを可能にする「アナリティクスリソース」の3つのサービスで構成する地理空間分析プラットフォームを、ワンストップで提供するとした。
GEOTRAの陣内社長は、「人の動きは、リアル空間上のあらゆるインフラ、サービス、活動のハブとなる基礎的情報であり、より分析自由度が高い人流データ、シミュレーションツールを提供することが、日本が抱える諸課題を解決するための突破口になる」と語る。
GEOTRAアクティビティデータでは、GPS位置情報と、機械学習を用いた独自のプライバシー保護技術によって、生活者ひとりひとりの導線がわかる高粒度人流データを提供。既存の人流ビックデータと比較し、より豊富な属性情報に基づいた詳細な分析の実施が可能になるという。
「人流ビッグデータに、外部データや機械学習技術を組み合わせ、ひとりひとりの移動レベルまで分析が可能なデータを生成できる。ここまで情報を提供できるのはGEOTRAだけである。また、これらのデータを用いた将来シミュレーションが可能であり、新駅や新商業施設による経済効果の見積もりや、MaaSの導入やスマートシティ計画の施策効果の予測もできる」という。
今後の方向性として、陣内社長は、「人流データに関する技術開発やサービス提供から開始し、将来的には、リアル空間上のさまざまな領域にデータを広げ、日本が抱える大きな課題や今後進めるべきアジェンダに対し、地理空間上のデータ活用のパイオニアとして、強く貢献することを目指す」とした。
なお、KDDIの森専務は、会見で「KDDIは、企業のDXを支援するために、ビジネス創造をサポートする業界ごとのプラットフォームの提供を目指しており、その上にさまざまなサービスを乗せていくことで貢献していくことになる。KDDIの法人事業は、DXを実現する多様なケイパビリティを持つこと、IoTのトップランナーであることに加えて、パートナーとのビジネス共創が強みである。今回の新会社は、パートナーとのビジネス共創の取り組みのひとつであり、お客さまの課題や社会課題を、最新テクノロジーやDXを通じて解決していく」と発言。
また、三井物産の米谷副社長は、「三井物産には16事業本部があり、各事業領域の特性や、DXによる効果が期待できる時間軸をもとに、6つの『攻め筋』を設定している。GEOTRAは、そのうちのひとつであるエネルギーソリューションの領域に展開するものになる。ここでは、再生可能エネルギーや次世代燃料、水素への取り組みとともに、デジタルの力でより豊かな暮らしづくりに貢献するスマートシティ事業に力を注いでいる。KDDIの技術力と三井物産の事業ノウハウ、総合力、グローバルネットワークを掛け合わせることによって、さまざまな分野での可能性を見いだすことができると考えている。商社と通信会社の組み合わせは必然的なものである。現場レベルでは10件以上の具体的な案件の検討が進んでいる。すでに協業を進めているモビリティ分野のほか、エネルギー、インフラ、エンターテインメント、ヘルスケアなど、複数の分野でKDDIとの協業を進めていく」とした。
なお、三井物産では2021年7月に、能力と意欲の高い若手社員を管理職に登用するキャリアチャレンジ制度を立ち上げており、GEOTRAの社長に就任する陣内氏はその1期生になるという。陣内社長は、新会社の株式は所有していない。