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NECネッツエスアイ、新中期経営計画「Shift up 2024」を発表 2024年度に営業利益340億円を目指す
2022年5月11日 06:00
NECネッツエスアイ株式会社は10日、中期経営計画「Shift up 2024」を発表した。
2024年度(2025年3月期)に売上高3700億円、営業利益340億円、営業利益率9.2%、ROE13%以上を目指す。営業利益は、2020年度に達成した過去最高の更新を目指すことになる。
NECネッツエスアイの牛島祐之社長は、「事業を次の段階へと成長させる活動を行っていく。共創実践モデルを新たな事業構造へと深化させるとともに、新たに自社実践で生まれたノウハウを、付加価値の高いサービスとしてお客さまに提供するためのコンサルティング力を高めていくことが中心になる。さらに、グローバル展開の準備を完了させ、次期中期経営計画以降で事業化につなげる」とした。
また、「『DX×次世代NW(ネットワーク)』への取り組みは実証から実装へとシフトし、顧客との関係も共創から協奏に変え、単一の課題解決だけでなく、社会の課題解決に向けて、広く、深く展開していく。ビジネスモデルも従来のプロジェクト型からスパイラル型(リカーリング型)へと変えていく」とも述べている。
スパイラル型ビジネスモデルでは、デジタル×5GやDX事業ブランドである「Symphonict」、共創実践モデルといった、これまでの取り組みをベースにした「独自価値の追求、サービス化の加速」を起点に、共創実践で得たノウハウを活用した「自社実践型コンサル」を新たに確立。さらに、SI力、技術力、現場力、全国対応といった同社のアセットを強化する「DX適用/品質向上」、運用などによって得られた情報をもとに次の提案を行う「現場密着型コンサル」を確立。この4つでサイクルを構成し、「顧客に密着しながら、より高い価値を提供し、顧客を増加させ、そこで得た経験やデータ、知見を生かして、それをまたお客さまに返すというサイクルを回すことで、新たな社会価値の創造、カスタマーサクセスやサステナビリティを実現したい。その仕組みを新中計期間中に構築したい」と語った。
2030年の目標としては、「DX×次世代NW=Sustainable Symphonic Society(持続可能で、豊かに響きあう社会の実現)」を掲げ、「脱炭素、活気あふれるまちづくり、スマートインダストリー、より自由な働き方・暮らし、安心・安全・セキュリティ、健康・Well-Beingといったテーマを軸に据えて、社会や技術の変化に対し、一歩先んじたオリジナリティーのあるサービスを提供していく。新中期経営計画では、その実現に向けて、新たな事業展開を目指したい。『社会を、さらなる高みへ』をテーマにしていくことになる」などと述べた。
さらに、3年間累計で300億円の投資を計画する。内訳は、Symphonictの強化や既存事業のDXサービス化などの事業投資で170億円、コンサルティング力の強化やDX人材の育成および獲得といった人材投資で50億円、社内プロセスのDX化や基幹システムの更新などの情報化投資で80億円とした。また、これらとは別枠で、提供価値や競争力の向上、地域やグローバル体制の強化などのM&A投資を検討していくという。
なお、新中期経営計画のスタートにあわせて、2022年度から開示セグメントを変更し、DXソリューション事業、ネットワークソリューション事業、社会・環境ソリューション事業に区分する。
企業向けのSE・SI機能に、ネットワーク運用や監視などのサービス運用機能を提供するDXソリューション事業の売上高は1300億円(2021年度実績は1080億円)、営業利益は190億円(同131億円)。IoTを活用した製造業向けのスマートインダストリーや、中央官庁や大規模自治体向けでの実績を生かし、人口20万人規模の自治体などへのサービス提供を強化するという。
キャリア向けのSE・SI機能に、ソフトウェア開発と保守機能を提供するネットワークソリューション事業の売上高は970億円(同820億円)、営業利益は140億円(同105億円)。キャリア5Gやローカル5Gにおけるエンジニアリング領域の拡大、洋上風力領域での事業拡大、防衛分野における大型プロジェクトの推進に取り組むとのこと。
パブリックDX事業や、環境・エネルギー事業、社会公共ビジネスを行う社会・環境ソリューション事業の売上高は1400億円(同1149億円)、営業利益は160億円(同85億円)を目指す。地域のスマート化やパブリックDXの推進などによるまちづくりと、電力の省力化、再生可能エネルギーの活用などのエネルギー領域に力を注ぐとした。
また今回の中期経営計画では、「オリジナルな価値創造を加速」、「課題解決力の高度化」、「全社のDXネイティブ化」の3点を基本戦略として挙げた。
「オリジナルな価値創造を加速」では、DXにおけるコンサルティングからサービス、プラットフォームまでを、Symphonictを通じて幅広く提供。顧客やパートナーとの共創実践を通じて、イノベーションの創発を加速し、独自の価値提供モデルを構築するという。
「大手企業に加えて、中堅中小企業に顧客層が拡大しており、ハイタッチ営業だけでなく、チャネルやeコマースを活用して、Symphonictを核にした価値創造や、顧客ごとに最適な『DX×次世代NW』を提供していくことになる。自社実践型および現場密着型コンサルティング、業種別および用途別サービスモデル、共通基盤サービス群、共創実践・創発を通じて、CX(Corporate Transformation)、BX(Business Transformation)、GX(Green Transformation)に取り組む」とした。
コンサルティング機能の強化に向けた体制の集約に加えて、ハイブリッドワークやロボティクスなどのサービスモデルをさらに強化して、自社実践ノウハウに基づくオリジナルなサービスモデルを拡充。既存事業のDX化を加速したり、サービス運用機能の統合および強化を図ったりする。さらに、共創による実証と先行モデル化を推進。ローカル5G事業の強化に向けた共創の推進、サービス開発やDX人材育成におけるパートナーとの協業も進める。
2つめの「課題解決力の高度化」では、企業や自治体、通信事業者などにおける業種ごとの課題に応じて、DXと次世代ネットワークを組み合わせた最適なサービスを提供。気候変動課題への対策および改善に寄与する事業を創出し、サステナブルな社会価値の創造を目指すとした。
「通信キャリアやケーブルテレビ事業者などのインフラ事業者向けには、インフラ構築から運用、DXサービスへと事業領域を拡大。ローカル5Gユーザー向けには、ローカル5G事業の企画、DXサービス領域にまで展開していく。また、官公庁や一般企業向けには、消防・防災、CATV・映像、ビルオートメーションといった既存事業に、DX×次世代NWを掛け合わせて、デジタルタウン、スマートビルディング、スマートインダストリー、カーボンニュートラル、エネルギーマネジメント、レジリエント、これらに関する事業オペレーションを、国内外の顧客に提供できる体制を整えたい」とした。
ここでは、気候変動の緩和および適応という観点から、すべての事業を気候変動対応型事業へと転換していく考えも示した。なお、NECネッツエスアイでは、2030年度までに自社CO2排出量を55%削減する目標を掲げているほか、専門推進組織の新設、全社での実証化にも取り組むという。
3つめの「全社のDXネイティブ化」では、業務のDX化を推進することで、品質、スピード、生産性、収益の向上を実現するとともに、それらをリファレンスモデルとして確立して、顧客に提供する。
「NECネッツエスアイ自身がDX化しなくてはならない。施工プロセスにDXを活用し、品質を向上したり、原価を低減したりといった施工領域での活動をはじめ、保守領域、セールス/マーケティング領域、アドミン領域、全社情報基盤でもDX化を図る。グループ全体のプロセスの標準化とDX化、保守情報システムの統合、新サポートサービスの創出、新本社への移転も計画している」と語った。
DXネイティブ化に向けた高度人材の獲得および育成にも注力。コンサル人材は180人から400人に、DX人材は800人から1800人に、次世代ネットワーク人材は600人から800に、それぞれ拡大する。また、同社が確立したDX人材育成機能の外販や収益化も検討していくという。
さらに、グローバル事業に向けては、「2027年度を最終年度とする次期中計での本格成長に向けた準備を進める期間」と位置づけ、北米での先端技術およびサービスのインキュベーション機能の拡充、グローバル人材の育成といった「グローバル再拡大への準備」をステップ1として、DXビジネスやマルチSaaSビジネスの展開、北米などへの市場開拓を行う「グローバル再深耕」をステップ2とし、DXビジネスのグローバル化を加速、拡大するステップ3の「グローバル展開の本格化」へとつなげる考えを示した。
また、新たな中期経営計画の推進に向けて組織を再編。「DX×次世代NW戦略の具現化と、事業のサービス化、コンサルティング力強化を加速するために、事業本部の一部機能を再編した」という。
DXソリューション事業本部、ネットワークソリューション事業本部、社会・環境ソリューション事業本部を新設。さらに、コンサルテーション力や提言力の強化に向けて、営業統括本部のなかにビジネスプロセスイノベーション推進本部を設置。一方で、新たなテーマに掲げたカーボンニュートラルおよび気候変動対応への戦略推進機能を強化するために、カーボンニュートラル推進本部を設置した。
このほか、エンゲージメントスコアを現在の33%から50%に拡大させるほか、女性管理職比率を5.9%から10.0%に高める目標も明らかにした。
なお、NECグループとの連携については、「5Gなどの最先端技術や、製品ポートフォリオの共有、SIの構築・運用・保守の役割分担を通じて共創関係がある。NECグループとしてのメリットは最大限生かしたい。だが今回の新中計には、NECが計画しているものを実現するための要素が入っているわけではない。NECとの取引比率は3割を切っており、それ以外は独自ビジネスになる。新中計は、NECとの取引比率がどうなるかという観点では作っていない。結果が取引比率になる」と述べた。
2021年度通期業績は減収減益、ただし計画通りの進捗を達成
一方、2021年度通期業績も発表した。売上高は前年比8.5%減の3103億円、営業利益は同9.3%減の231億円、経常利益は同7.6%減の235億円、当期純利益は同4.6%減の150億円の減収減益になった。
ただし受注高は前年並の3368億円となったほか、中期経営計画で掲げた2021年度売上高3100億円、営業利益200億円、営業利益率6.5%、ROE10%の目標を超える実績となった。
「前年度のGIGAスクールによる大型案件の反動や、第2四半期以降の半導体不足、部材不足、ミャンマー事業の損失などの一過性要因が影響した。だが、1月に公表した計画に対しては、ほぼ想定通りの進捗となり、DXや通信といった注力事業が成長。半導体や部材不足の影響を除くと、受注高は前年比12%増、売上高は8%増となった。事業力の強化が進展し、効率化も進んでいる」と総括した。
売上高の内訳は、SI/工事は前年比17%減の1939億円、サービスは同9%増の1165億円。「ビジネスモデルがサービス型に転換している」と手応えをみせた。
セグメント別では、デジタルソリューションの売上高が前年比12%減の1103億円、営業利益は前年から7億円減の130億円。前年度のGIGA スクールの反動や、孫会社の非連結化の影響で減少したもの、サービス事業は拡大したという。特殊要因を除くと売上高は前年比2%増になる。
ネットワークインフラは売上高が前年比8%増の964億円、営業利益は前年から10億円増の103億円。半導体不足や部材不足の影響があったものの、通信事業者向けのビジネスが牽引した。特殊要因を除くと売上高は前年比13%増となった。
エンジニアリング&サポートサービスの売上高は前年比14%減の981億円、営業利益は前年から27億円減の91億円。前年度の大型プロジェクトの反動減に加えて、半導体不足や部材不足のマイナス影響を受けた。特殊要因を除くと売上高は前年比18%増になるという。
また、市場別の売上高では、官公庁が前年比28%減の611億円、通信業が同14%増の693億円、NECグループ関連が同5%減の286億円、企業が同8%減の1416億円、海外が前年並の97億円となった。
なお、半導体不足や部材不足のマイナス影響は売上高で125億円、営業利益で25億円となった。
前中期経営計画「Beyond Borders 2021」の成果と2022年度の通期業績見通し
2021年度までの中期経営計画「Beyond Borders 2021」の成果についても言及した。
NECネッツエスアイの牛島社長は、「最終年度はさまざまな一過性の要因があったが、売上高、営業利益、営業利益率、ROEともに、中期経営計画の目標を大きくクリアすることができた。DX/5G時代の持続的な利益成長に向けた構造改革はほぼ完了した」と語った。
売上総利益率は20.5%、営業利益率は7.5%を達成。DX受注高は、2019年度の60億円から、2021年度は275億円に拡大。毎年倍増したという。また、産官学のパートナーとの共創モデルによる事業創造にも成果があったことを強調した。
「これまでの中期経営計画は、2030年に向けた成長のための新たな事業基盤を作ることがテーマであり、持続的な成長に向けた準備期間であった。デジタル/5G時代に向けた競争力、成長力強化に向けたSymphonictによるDX事業の拡大、共創実践モデルによる新たな事業創造ができた。また、先端技術や新しい事業を創出する基盤や仕組み、体制の強化としては、神奈川県新川崎に設置したテクニカルベースや5Gラボを通じて、新たな技術教育や実証環境を整備。北米のベンチャーキャピタルを活用したインキュベーションの加速ができた」と説明。
さらに、「All-NESIC(オールNECネッツエスアイ)としてのイノベーションを加速。東京・日本橋のInnovation-Baseや、分散オフィスの活用、ニューノーマルな働き方を実践して、その成果を顧客に提案。全社一体型DX提案モデルを定着させることもできた」と述べた。
なお、2022年度通期業績見通しは、売上高が前年比6.3%増の3300億円、営業利益は同12.2%増の260億円、経常利益は同10.4%増の260億円、当期純利益は1.9%増の153億円とした。受注高は同3.9%増の3500億円を見込んでいる。
「成長に向けた投資をしっかりと行いながらも、高付加価値化により増益を目指す。半導体不足や部材不足のマイナス影響は、前年並を予測している。厳しい環境ではあるが、営業利益は過去最高を見込んでいる」と述べた。