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レッドハットが2022年の国内戦略を説明、OpenShiftの新しい提供モデルや新サービスを展開へ

 レッドハット株式会社は12日、新年度事業戦略についての記者説明会をオンラインで開催した。

 レッドハット株式会社 代表取締役社長の岡玄樹氏は、2022年に日本において注力するビジネス領域として、「オープンハイブリッドクラウド領域を拡大」「OpenShiftの新しい提供モデル、新価格、新サービスを展開」「アジャイル支援事業を拡大」の3つを挙げた。

 また、最上位のパートナープログラムPremier Businessに、日本で初めて5社が認定されたことも発表された。

レッドハット株式会社 代表取締役社長 岡玄樹氏

2022年に日本において注力する3つのビジネス領域

 岡氏はまず2021年度の振り返りとして、グローバルでの数字として、すべての四半期において前年同期比2桁成長したと報告した。また日本を含めたグローバルで、大幅な人員の拡大を実現したという。

 また岡氏は「主力製品であるRed Hat Enterprise Linux(RHEL)の次の柱として注力しているのが、コンテナプラットフォームのOpenShift」として、OpenShiftの急成長も紹介した。2020年は導入企業が2800社だったのに対し、現在は3800社を超え、1年で1000社以上増えたことになる。

 特にOpenShiftの採用企業として、従来は金融業が多かったが、現在では製造や流通、小売りなど広がったことを岡氏は説明した。

すべての四半期において前年同期比2桁成長
人員の拡大
コンテナプラットフォームOpenShiftの急成長

 岡氏は「DXも次のステージが訪れたと思う」として、その鍵として、マルチクラウドなど「あらゆるクラウドの活用」と、「アプリケーションのクラウド対応」、「組織文化、プロセス、スキル」を挙げた。そして「この3つをオープンソースソフトウェアのイノベーションで支援する」と語った。

 そのうえで2022年に日本において注力するビジネス領域として、「オープンハイブリッドクラウド領域を拡大」「OpenShiftの新しい提供モデル、新価格、新サービスを展開」「アジャイル支援事業を拡大」の3つを掲げた。

2022年に日本において注力するビジネス領域

5Gや製造業のエッジへオープンハイブリッドクラウドを拡大

 以下、3点それぞれが説明された。

 1つめの「オープンハイブリッドクラウド領域を拡大」について、この「拡大」とは主にエッジを指すという。

 まずは5G網のエッジだ。岡氏は、日本のレッドハットでも内部組織として、通信事業者を担当している部門を独立させてグローバルチームに入れたと説明。日本と海外の知見を双方が共有することで、業界全体のイノベーションを加速していくという。

 製造業への広がりとしては、Industry 4.0やスマートファクトリーの分野がある。レッドハットでは、ビジネス開発専門営業を設置して、大手製造業を中心に新規事業の開拓を開始したという。

 それを支える運用自動化においては、「自動化2.0」という言葉で、「自動化するかしないかではなく、どこを自動化するかになっている」と岡氏は説明。部門で自動化を実現した結果を、組織全体へと拡大することが重要で、レッドハットではその成功モデルをパートナーへ展開していくと氏は語った。

オープンハイブリッドクラウド領域を拡大

 こうしたインフラでの事例として、5G・エッジでは、NTTドコモのOpen RANである「OREC」でOpenShiftが採用されたことや、別の通信事業者でvRANにRHELのリアルタイム基盤が採用決定していることを岡氏は紹介。NTT東日本の映像AIサービス基盤のサポート事例も紹介した。

 コンテナでは、三菱UFJ銀行が新たなデジタルサービスを提供するスピードを上げ、それを厳格な金融のフレームワークのもと実施できるようOpenShiftを採用したことが紹介された。また、グローバル自動車メーカーでもDXプラットフォームとしてOpenShiftを採用したという。

 自動化では、NTTドコモがインフラCIによりコストを半減した事例が紹介された。また、大手カード企業では、セルフサービス化によりリードタイムを90%削減したという。

インフラでの事例

OpenShiftのマネージドサービスが利用拡大

 2つめは「OpenShiftの新しい提供モデル、新価格、新サービスを展開」だ。

 岡氏は「レッドハットのここ1年で一番大きかった変化を聞かれれば、マネージドサービスの利用拡大を挙げる」と語る。クラウドサービスでOpenShiftに増える機会が爆発的に増えたということだ。

 大手銀行や、通信、リテール、グローバル自動車メーカーなど幅広い業種が利用し、1昨年から約5倍の社数にのぼり、「マネージドサービスに関する関心は高い」と氏は語った。

 そのほか、データ活用プラットフォームでのリアルタイムデータ連携や、エッジではAI/MLプラットフォームなどのユースケースを岡氏は紹介。さらに、製造業や流通業の分野では、日立のLumadaのソフトウェア開発基盤における、OpenShift採用を紹介した。

 こうした顧客のニーズとして岡氏は「OpenShift活用の新しいカタチ」「OpenShift導入敷居をさらに低く」の2つを挙げる。それに応えるための、2022年に3月下旬から4月第1週までの間の施策を説明した。

 まず新しいマネージドサービスの提供開始として、データ駆動連携のKafkaやAI/MLがある。そして導入のハードルを低くするために、OpenShift関連製品を値下げし、Kubernetes Engineは33%、Data Foundationは40%、それぞれ値下げする。さらに適用基盤を拡大し、AWSのARMや、エッジ、オンプレミスのAzure Stack HubでもOpenShiftが利用できるようになったとした。

OpenShiftの新しい提供モデル、新価格、新サービスを展開

アジャイルの伴走型支援を拡大

 3つめは「アジャイル支援事業を拡大」だ。「この1年感じるのは“本当のアジャイル”で、自分たちが社内で活用できる能力として身につけたいという声を聞く機会が増えた」と岡氏は言う。

 この分野でレッドハットはRed Hat Open Innovation Labsを展開している。「まず重要なステップとして、経営層全員との1対1セッションをとおして、アジャイルがどういう考えで、どういうつまずきがあるかを深いご理解いただく」と岡氏。そのうえで、スクラムチームを組んで、拡大していく。「Open Innovation Labsに参加する企業数も増えているし、期待も感じる」(岡氏)と話した。

 なお、Open Innovation Labsがうまくいくためには、IT部門、レッドハット、ビジネス部門の3者のパートナーシップが重要だと岡氏は語った。「ビジネス側から、もう自分たちは出なくていいんじゃないかとか、IT側にまかせたいと言われることもあるが、いっしょに進むことによって後のメリットを感じていただけるとお話している」。

 また岡氏は、大規模アジャイルフレームワーク「SAFe(Scaled Agile Framework)」の認定が日本で約6社である中の1社に、レッドハットが入ったと説明した。「この認定は会社規模においてビジネスアジリティを展開するためのフレームワークで、そのようなお客さまにもサービスを展開することが可能になる」(岡氏)。

アジャイル支援事業を拡大

第一生命がCXデザイン戦略のためにアジャイルを導入した事例

 Red Hat Open Innovation Labsの導入事例については、第一生命ホールディングス株式会社 イノベーション推進ユニットイノベーション推進グループ ラインマネジャーの清水智哉氏が語った。

第一生命ホールディングス株式会社 イノベーション推進ユニットイノベーション推進グループ ラインマネジャー 清水智哉氏

 第一生命グループでは中期経営計画として、CX(カスタマーエクスペリエンス)デザイン戦略を掲げている。その中で「CX業務原則」を定めた中に「Start Small:小さく始めて積極的に試す」「Test with Customers:お客さまと検証しながら常に改善を繰り返す」という項目があり、これがアジャイルに通じるという。

 具体的な取り組みとしては、Red Hat Open Innovation Labsを活用し、カルチャー変革、人財育成・MVP(Minimum Viable Product)開発に着手した。

 まずはカルチャー変革としては、岡氏の説明にもあったように、経営層の1対1セッションを実施した。「忙しい経営層との1対1セッションができるか不安もあったが、予想以上に深めることができた」と清水氏は言う。

 また、人材育成・MVP開発のために、アジャイル工房を設立した。デザイン思考に基づいたMVP開発を通じて業務用ソリューション/システムのスピーディな提供を目指すもので、2021年度下期にスタートした。顧客起点でどういった機能をどのような優先順位で提供するかを検討してプロダクトバックログを作り、優先度の高いバックログからスプリントを繰り返して開発する。

 「われわれは、ウォーターフォールの経験だけで、MVP開発が不足していた。そこでレッドハットにアジャイルコーチとして伴走していただいた」(清水氏)。

 そのほか、予算制度においても、顧客フィードバックに基づいて継続的に改善が行えるスキームを確立したことも清水氏は紹介した。

第一生命グループのRed Hat Open Innovation Labs事例
アジャイルへの取り組み

最上位パートナープログラム「Premier Businessパートナー」発表

 2022年度のビジネス戦略としてはもう1つ、「パートナー協業およびパートナー人材育成の活動」も挙げられた。

 「ハイブリッドクラウドのコンセプトをわれわれだけでは実現できないため、ハイパースケーラーや国内パートナーとともに促進していきたい」と岡氏は語った。

 また人材育成では、パートナー向けにトレーニングコースを無償提供することも3月に発表。同じく3月には、富士通とレッドハットでDX支援事業のパートナープログラムも発表している。

パートナー協業およびパートナー人材育成の活動

 そして今回新しく、日本での最上位パートナープログラム「Premier Businessパートナー」を発表した。Premier Businessパートナーでは、パートナーごとに専任チームをアサインし、特定案件の集中支援や、アジャイル人材の育成有資格者のサポート、共同マーケティング活動による支援を行う。

 このPremier Businessパートナーとして、伊藤忠テクノソリューションズ(CTC)、NTTデータ、NEC、日立製作所、富士通の5社が認定されたことが発表された。

Premier Businessパートナー
認定された5社

ワクワクする会社へ

 最後に岡氏は、レッドハット自身の2022年として「オープン・オーガニゼーションの浸透を強化することでワクワクする会社へ」という言葉を掲げた。

 「社長に就任して1年、アイデアを大事にして誰が言ったかに固執しない空気がある」と岡氏。そして、まずアクションを起こして間違いがあれば修正する文化があるという。

 そのために、社内で「お互いを尊重し、協働し、サポートします」「結果に対して責任を持ち、自ら進んでアクションします」「変化を楽しみ、ポジティブに受け入れます」の三カ条を徹底すると説明した。

 「これらの考えを徹底できれば働きがいのある会社にできると思っている」と岡氏。2022年度版の働きがいのある会社ランキングで、424社のうち中規模部門で17位になったことを紹介して、「ランキングに固執するよりは、働きがいのある会社でありつづけたい」と語った。

レッドハット自身の2022年