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NEC、データを暗号化したまま計算処理できる「秘密計算ソリューション」 顧客の用途に応じて最適な方式を提案

 日本電気株式会社(以下、NEC)は12日、データを暗号化したまま計算処理ができる秘密計算技術において、顧客の用途に応じて最適な方式を提案できる、秘密計算ソリューションの提供を開始した。

 秘密計算は、セキュアな計算環境によって、データを暗号化したまま計算処理ができる技術。パーソナルデータや企業秘密といった、企業が持つ機密情報の安全な活用に向けた技術として期待されている。

秘密計算の仕組み

 今回、NECが提供する秘密計算ソリューションは、データを乱数で符号化し、3つのサーバーに分散して計算できる秘密分散方式(MPC方式)と、インテルSGXを活用したハードウェアのセキュリティ技術を使用して、サーバー上のセキュアなメモリ空間を利用して計できるハードウェア方式(TEE方式)の2つの計算方式に対応する。

2つの秘密計算方式

 MPC方式では、独自の開発支援ツールにより、一般的なシステムエンジニアでもプログラミングが難しいとされていた秘密計算アプリケーションの開発を容易に行える。NECの独自技術により、一部の処理において、実証実験を通じて約8000人分のゲノム情報を約1秒で解析するなど処理速度を高速化し、迅速なデータ分析が行える。

 TEE方式では、Intel、Fortanixと連携し、統計解析や機械学習など幅広い分野で使用されるプログラミング言語のPythonを用いて、容易に記述することを可能にした。一般には難解とされていた秘密計算プログラミングの記述を容易に行うことができ、Pythonで開発された既存アプリケーションを流用できる。さらに、データ分析時に顧客が運用しているAIモデルを修正することなく、ソリューションにそのまま組み込んで使用することもできる。

 金融や医療・ヘルスケア領域などにおいて、複数の企業がデータを持ち寄り、より安全性の高い分析を行いたいシーンではMPC方式を、パブリッククラウド上での既存の分析アプリケーションや学習モデルの利用など、分析者がさまざまな分析手法を試行錯誤したいシーンではTEE方式を使用するなど、顧客が活用したいアプリケーションに求められる安全性や処理速度に応じて、最適な方式を提案する。

 ソリューションは、購買履歴や人流データなどをもとにした企業のマーケティング活動に活用できるほか、金融、医療・ヘルスケア、製造業、官公庁といった、膨大なパーソナルデータや秘密情報を扱い、組織外へのデータの流通が容易ではない分野においても、柔軟に活用できると説明。NECは、ソリューションについて今後3年間で40システムへの提供を目指す。