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旭化成、企業間のデータを秘匿したまま安全に連携できる分析基盤を構築 NECの秘密計算技術を活用

 旭化成株式会社と日本電気株式会社(以下、NEC)は28日、NECの「秘密計算技術」を活用し企業間で共同開発を行う際に、データを秘匿したまま安全に連携できる分析基盤を構築したと発表した。これにより旭化成は、秘密情報を扱うことが多い材料分野の製品開発において、原料サプライヤーや加工メーカー、部品メーカーなどの企業間で、安全にデータ連携を行えるようになるという。

 旭化成では2017年度から、機械学習などのAI技術を応用して材料開発の効率を高める取り組み「マテリアルズ・インフォマティクス(MI)」を推進しており、社内でのデータ連携・活用によって、短期間で新たな素材の開発につながる成果を多数上げてきたという。しかし一方で、材料開発分野は情報の機密性が高いことから、同業他社や川上/川下の企業間でのデータ連携が進んでおらず、企業間でデータを共有できないために、最適な原料物性や組成などにたどり着くのに時間がかかり、開発期間が長期化するケースがあったとのこと。

 そこで旭化成では、社内の蓄エネルギー領域の研究開発チームと協力し、データを秘匿化したまま計算できるNECの秘密計算技術を活用して、個別のデータは共有しないまま、連携する企業のデータを基にMIを実施できる分析基盤を開発した。

 複数社がこれまで蓄積したデータを活用して材料開発に取り組めるので、開発期間の大幅の短縮が見込めるほか、単独では成し遂げられない革新的な製品を開発し、社会に提案していくことが期待できるとしている。

 なお、旭化成の分析基盤は、NECが保有する秘密計算技術のうち、ハードウェアを利用した方式(TEE:Trusted Execution Environment)を活用して構築された。同方式は、分析にかかる時間が比較的短いうえ、Pythonで記述された既存の分析アプリケーションを、基本的にはそのまま秘匿化して動作可能なため、難解な秘密計算のプログラミングが不要な点も特長とのこと。

 この技術を活用することにより、原料情報や加工条件、評価情報といった重要なデータを暗号化したまま統合し、そのデータを基に、旭化成のMI技術を応用して材料開発シミュレーションを実行できる。

 旭化成は今後、顧客との協業に向けた取り組みを推進していく予定で、将来的には、材料開発だけでなく、生産計画の最適化など、より広い分野での活用や、非競争領域における同業他社との連携も視野に入れているとのことだ。