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富士通、船舶の衝突リスクを高精度に予測するAI技術を開発 過剰なアラートを90%抑制
2021年9月29日 09:00
富士通株式会社は28日、湾内などの複雑な航路を含む海域における、船舶同士の衝突リスクを高精度に予測するAI技術を、国内で初めて確立したと発表した。
現在実用化されている船舶の衝突危険度では、算出手法のほとんどは、船舶が現在位置から直線方向に進む前提で航行ルートを考慮しているため、海上交通安全法などの法令で定められた航路の屈曲部において不要なアラートが多発してしまう。その結果として、危険回避のための情報提供を、どの船舶に対し、どのタイミングで行うかといった判断は、運用管制官の経験や技量に依存しているといった課題があるという。
富士通では、2019年度に、レーダーやAIS(船舶自動識別装置)などにより船舶の動静を把握し、航行の安全に必要な情報提供などの業務を実施している海上保安庁からの請負契約により、東京湾において船舶が衝突するリスクとそれが集中するエリアをAIで予測し、衝突リスクの早期発見への有効性を確認した。
今回、さらに課題の解決に向け、海上保安庁と海上交通の安全性向上に向けた共同実証実験を行い、海上交通管制業務を支援する技術の確立を図った。船舶の現在位置やスピード、向きなどのデータを学習したAIによって算出される従来の衝突リスク予測において、船舶が規定された航路に沿っているかどうか、その度合いを算出する新たなアルゴリズムを開発した。
従来技術では、航路の屈曲部付近における2隻の船舶が現在の針路のまま直進すると判断され、衝突リスクが高いと過剰検知される状況であっても、開発したアルゴリズムを活用することで、2隻が規定された航路に沿って曲線的に航行することを見据え、衝突リスクは低いと判定できる。これにより、不要なアラートを低減し、高精度に船舶同士の衝突危険度を判定することを可能にした。
富士通は2020年11月から2021年9月まで、海上保安庁からの請負契約により、海上交通管制業務を行う東京湾海上交通センターにおいて実証実験を実施。特にアラートが多発する屈曲部を含む航路全体において、本来検出不要である過剰なアラートを約90%抑制できた。これにより、対象船舶の早期認知や衝突回避のための迅速な初動対応を支援し、海上交通管制業務における負荷軽減、ヒューマンエラーの低減による海上交通の安全性向上に貢献するとしている。
富士通では、実証実験の成果を踏まえ、海上交通管制から船上の見張り業務向けに、新たに強化したAI技術「Fujitsu Human Centric AI Zinrai」を適用し、2022年3月までに安全航行支援サービスの提供開始を目指す。また、サービスの提供を通じて、海上交通管制と船舶航行の双方から海上交通の安全性を確保し、レジリエントな海上交通システムの構築を支援していくとしている。