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2021年も最新・次世代技術がめじろ押し――、Interop Tokyo 2021のShowNetを徹底レポート
2021年4月19日 06:00
最先端ネットワーク技術・製品のイベント「Interop Tokyo 2021」が幕張メッセ(千葉県千葉市)で4月14日に開幕した。
今年のInterop Tokyo 2021は、コロナ禍を受けて3つのフェーズに分けて開催される。「フェーズ01」としては4月14日~16日に幕張メッセでリアル展示会と基調講演/セミナーが、「フェーズ02」としては4月19日~23日にオンラインイベントが、「フェーズ03」としては6月9日~23日にオンラインの「Interop Tokyoカンファレンス」が開かれる。
フェーズ01の初日となる4月14日には、Interop Tokyo 2021と、会場のネットワーク「ShowNet」の説明が行われた。
Interop Tokyoは展示会であると同時に、各社が最新のネットワーク機器を持ち込んで相互接続性や新技術をテストしデモする場でもある。そのネットワークであるShowNetについて、説明と、設備の見学ツアーが実施された。
「実際に動いているところが見たい」ためのリアル開催
Interop Tokyo 2021については、Interop Tokyo 2021総合プロデューサーである株式会社ナノオプト・メディア 取締役COOの大嶋康彰氏が説明した。
昨年のInterop Tokyo 2020は、コロナ禍によりオンラインだったため、今回は2年ぶりのリアル開催となる。この1年でオンラインイベントが多数開かれる中で、リアルイベントへのニーズが来場者からも出展者からも出ていると大嶋氏は語る。
今回のテーマは、村井純委員長が自らつけた「Now or Never ~DX」。前述のとおり3つのフェーズに分けて開催し、リアルイベントとオンラインを合わせて20万人の来場が目標だという。
出展企業・団体は364社で、小間総数は1142。2019年が509社で1772小間だったので、およそ3/5だという。
ホールも幕張メッセのホール3~5の3つのホールを使う(ホール6とホール5の一部は同時開催のデジタルサイネージジャパン、Location Business Japan、Apps Japanなどで使用)。2019年は5ホールだったので、これも5/3となる。
大嶋氏は、Interopについて昔から言われている「I know it works because I saw it at Interop」というキャッチフレーズを「実際に動いているところが見たい。ここに来ればそれがわかる」と訳し、「いま来場者が思っているのはこういうことかなと思う」とリアル開催の意義を語った。
遠隔からのオペレーションを積極的に採用
ShowNetについては、ShowNet NOCチームメンバーである国立研究開発法人 情報通信研究機構の遠峰隆史氏が解説した。
Interopは米国で1986年に開催された「TCP/IP Vendors Workshop」が期限で、相互接続検証のイベントとして続いている。日本では1994年に初開催され、今年で28回目の開催となる。
ShowNetは、そのネットワークが動いているところを見せるプロジェクトで、単なるデモではなく、ブースのデモを支援し、来場者も利用できる。「産業界、学術界、研究期間から集まるトップエンジニアが実施する世界最大級のライブデモンストレーションプロジェクト」と遠峰氏は表現し、「2年後・3年後、あるいは5年後・10年後のネットワークはどうなっているかを考えながら、先駆けて挑戦して構築している」と語った。
今年のShowNetのテーマは「Face the Future」。「ステイホームやワーク・フロム・ホームなどもあり、ネットワークの使いかたも変わってきた。それをどう支えていくかということをテーマにした」と遠峰氏。ちなみに実は、バーチャル開催となってShowNetが構築されなかった昨年のテーマも、オリンピックなどの社会変化を意識した「Face the Future」だったという。
今回のShowNetの特徴としては、機器や配線を減らしたことと、遠隔からのオペレーションを積極的に取り入れたことがある。
今回、機器は約1500台(2019が約2000台)で、UTPケーブルの総延長が約17.5km(2019年が約21.0km)、光ファイバー総延長が約3.5km(2019年が約5.5km)、NOCおよびPODの総電気容量が100V:約70.0kW・200V:約82.kw(2019年が140kWと66.0kW)。ShowNetブースのラック数も、19ラックから17ラックになった。
これはイベントの規模が小さくなったことによるものと思えるが、遠峰氏によると、それだけでなくオペレーション効率化や省力化を狙ったものでもあるという。
スタッフ動員数は合計368名で、これも2019年の447名から減っている。その中で、今回は密を避けるため、設営した後の会場でのオペレーションを最小限にして、遠隔からオペレーションに参加できる体制を構築した。遠隔といっても、主に幕張近隣のホテルで作業し、いざとなれば会場に駆け付けられるようにしているという。
セグメントルーティングやハイブリッドクラウドなど各分野の実験
続いて遠峰氏は分野ごとのテーマを紹介した。
「ファシリティ」分野では、前述のとおり、これまで電力や配線が増え続けていたのに対し、効率化や省力化が模索された。機材が減った中でも、いかにトラブルが少ないように接続できるかどうか、電源管理できるかどうかがテーマだったという。例えば電源ケーブルが冗長化した電源のどちらの系統か色分けして事故を防止するなど、可視化によるミスコンフィグの防止をはかった。また、ラック間の光ファイバー接続はパッチパネルに集約しているが、今回はその端子を小さい次世代コネクタに変えることでさらなる高密度化を実現した。
「伝送」分野では、複数の波長を1つの光伝送の中で多重化してたくさんの帯域を少ない芯で伝送することで、光を自在に操って作る柔軟なトポロジーを実現。特に今回はShowNetブースのあるホール3とホール4~6との間が建物が区切られていて、その間は会場既設の光ファイバーを使う必要があるため、多重化することで大容量を実現したという。
「L2L3」分野では、ここ数年のテーマはバックボーン内でトラフィックを“曲げ”てサービスチェイニングによりネットワーク機能を提供していた。それが一定の検証を終えたため、今回はバックボーン全体にセグメントルーティングを取り入れ、自在なルーティングを実現する。セグメントルーティングの技術としてはMPLSベースのSR-MPLSと、IPv6ベースのSRv6の両方を採用し、両者を接続して1つの“面”を構成。その上で、オーバーレイでデータを運ぶという。
「通常のネットワークでは、従来ははしご型に冗長化する構成をとる。この場合、副系はふだんトラフィックが流れない。現在はストリーミングなどネットワークの利用量が増えることもあって、副系も有効活用したいということになっている。そこで、自由なトラフィックの誘導がホットになっている」と遠峰氏は説明した。
「Wi-Fi」分野では、ホールごと、会場ごと、ブースごとのネットワークのWi-Fiを効率的に構成するために、今回は分散したWi-Fiネットワークの統合に挑戦した。具体的には、ShowNetブースのWi-Fiコントローラと各地のアクセスポイントの間をL2VPNで接続した。「最近はエンタープライズWi-Fiではクラウド型コントローラがはやっているが、そういうアクセスポイントだけではないので、この方法をとった」(遠峰氏)
「DC(データセンター)」分野としては、毎年、ShowNetの中でデータセンターに閉じた実験をしている。今年はこの分野で、パブリッククラウドと連携したハイブリッドクラウドを採用した。仮想化基盤をハイブリッド構成で構成したり、オンプレミスとマルチクラウドでKubernetesコンテナをシームレスに動かしたりする。
「クラウド」分野も、データセンターと同様にハイブリッドクラウドがテーマだ。「ハイブリッドな環境によってShowNetの構築も、幕張メッセに来る前からクラウドで仕込んで、現場に配備するということも一部できた」と遠峰氏。これにより、構築負荷を下げ、事前から作業でき、密の回避ができるという。
「セキュリティ」分野では、ゼロトラストモデルによる次世代セキュリティアーキテクチャを取り入れた。さらに、SASEやSDP(Software Defined Perimeter)を取り入れて、遠隔からのオペレーションを実現した。
「モニタリング」分野では、機器やネットワークのフロー情報をうまく集約し、そこから特徴をとりだすことで、省人化をはかったという。そこにクラウド環境を組み合わせて継続的な監視運用を実現する。
「テスタ」分野は、イベント期間前にShowNetにトラフィックを流して耐えられるかどうかテストするのに重要だ。今回は、実トラフィックに近いトラフィックを流してテストした。セキュリティのテストでも、外部からの攻撃をシミュレートするBAS(侵害と攻撃シミュレーション、Breach and Attack Simulation)も採用。また、ハイブリッドクラウドで仮想アプライアンスによるバーチャルテスターも利用した。
対外接続は計410Gbps、パブリッククラウドとのインターコネクトも
ShowNetブースでは、1~17までの番号が付けられたラックに、ShowNetを構成する機材が収められていた。
ラック1は対外接続だ。今年は、NTTコミュニケーションズで100Gbps×2と10Gbps×1の合計210Gbps、ソフトバンク/BBIXとKDDIで100Gbpsずつの、計410Gbpsで接続している。さらに今年は、各パブリッククラウドともインターコネクトで接続している。
- 初出時、回線に関する説明が誤っておりました。お詫びして訂正いたします。
ラック2は対外接続ルータだ。ここでは通常のルーティングのほか、複数の外部ネットワークのうちどれを経由するかを制御できるEPE(Egress Peer Engineering)も実験している。
ラック3はコアネットワークだ。今回は前述のとおり、SR-MPLSとSRv6の2種類のセグメントルーティングを採用し、両者をここで接続してバックボーンを構成している。
また、今回のInteropでは8Kの非圧縮映像をテストしているブースもあり、Cisco 8201を使って400Gbpsリンクを提供しているという。
ラック4は、インラインセキュリティ/CGNだ。いままで:サービスチェイニングでセキュリティを監視していたが、今回はすべてのトラフィックがここを通るという。
100Gbpsワイヤレートパケットキャプチャでトラフィックを監視
ラック5はネットワーク品質検査だ。テスターがここに集められている。今回は、あらかじめ各ラックと光ファイバーでつないでおき、Polatis 6000マトリックススイッチを操作して任意の場所に接続できるようになっているという。
ラック6と7は、サイバー脅威検出・分析だ。インライン監視のほか、今年はShowNet全体からトラフィックを監視して脅威の検出もしている。ラック7で、最大100Gbps対応のフルワイヤレートパケットキャプチャ装置Synesisが動いている。また、IPv6の可視化に対応したNirvana改弐もラック6で動いている。
ラック8はリアルタイムトラフィック監視だ。また、ラック9は統合監視だ。統合監視については、クラウドでも仮想アプライアンスが動いている。
Wi-FiはIPv6オンリー、光配線切替ロボットも活躍
ラック10はオプティカルクロスコネクトだ。ラック間の接続は一度ここを集められて相互接続しており、接続を変えられるようになっている。今回はコネクタに、標準的なLCコネクタより40%小さいCSコネクタを採用して、すべての接続を2Uに収めている。
このラックには、NTT-ATの光配線切替ロボット「ROME mini」も収められている。ロボットが物理的に光配線を切り替える装置で、遠隔から接続を変更できる。
ラック11は、光トランスポート/出展社収容だ。今回は全ホールをリング型ShowNet伝送網で接続し、各ブースを接続している。この伝送網は波長で多重化されており、任意の場所で任意の波長を分けられるようになっているという説明だった。
ラック12はWi-Fiだ。今回のWi-Fiネットワークは、IPv6オンリーで提供されている。また、前述のとおり、分散したリモート環境を模した会場内の各拠点間をVPNで統合している。
- 初出時、VPNで接続されていた部分を「ラックのコントローラとアクセスポイント」としておりましたが、これは誤りでした。お詫びして訂正いたします。
ラック13は運用ネットワークだ。ShowNetの運用ネットワークは従来はクローズドなネットワークとなっていたが、今回は遠隔オペレーションなどのためインターネットに接続し、ファイアウォールで守っているという。
ハイブリッドクラウドやNVMe over Fabric、SASE接続など
ラック14~17は、ラック1~13までと少し離れてデータセンターの実験をしている。
ラック14ではSRv6 VPNが動作。また、CiscoのCatalyst 8400(旧ISR)により、SDNでクラウドと連携している。そのほか、HuaweiのDoradoフラッシュストレージを、Huaweiブースとストレージファブリック接続している。
ラック15はハイブリッドクラウドだ。HPEのサーバーでAzure Stack HCIを接続して、パブリッククラウドとローカルのインスタンスを連携している。また、このラックには、遠隔オペレーションを支える、クラウドとのゲートウェイや、SASEとの接続、SDPなどの機器も収められている。
ラック16はNVMe over Fabricで、ハイブリッドクラウドのKubernetesのためのストレージをNVMe over Fabric(ネットワーク経由のNVMe)で実現している。
ラック17は、ShowNet光トランスポート/オプティカル・クロスコネクトで、ラック10と同じように物理的な接続を集約している。