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日本マイクロソフトや長崎県五島中央病院など5者、MRを利用したオンライン遠隔医療の実証実験を開始

 日本マイクロソフト株式会社は3日、次世代オンライン遠隔医療システムの開発・提供において、国立大学法人 長崎大学、長崎県五島中央病院、長崎県、五島市と連携協定を締結したと発表した。

 5者では、この連携における最初のプロジェクトとして、関節リウマチ患者を対象とした遠隔医療の実用化に向け、MR(Mixed Reality:複合現実)を活用した国内初の次世代型オンライン遠隔医療システムとして、長崎大学関節リウマチ遠隔医療システム「NURAS」(Nagasaki University Rheumatoid Arthritis remote medical System:ニューラス)を開発し、長崎大学病院(長崎市)と五島中央病院(福江島)において実証実験を開始している。

 リウマチの遠隔治療は、従来のテレビ電話あるいはWeb会議システムを用いても行うことも可能だが、関節を中心とした病変部位を平面映像(2D)だけで観察および類推することしかできず、関節リウマチ診療に不可欠である正確な関節評価を行うことは困難だったという。

 これに対してNURASでは、平面映像だけでは評価が困難な病変部位を、MRを活用して立体的(3D)かつリアルタイムに観察・評価できるようにすることで、リウマチ専門医による遠隔医療を、これまでよりも高い精度で受けられるようにしている。

 具体的には、被写体の立体的な動画を撮影できるカメラ「Azure Kinect DK」を深度センサーとして患者の前に置き、医師が装着したMRデバイス「Microsoft HoloLens 2」に対して、高精度かつリアルタイムに3Dホログラムを投影する仕組み。またAzure Kinect DKに内蔵された7つのマイクアレイにより、音源の方向を含めたクリアな音声を録音可能という。

 ビデオ会議はコラボレーションツールのMicrosoft Teamsを使って実施するほか、厚生労働省、経済産業省、総務省が所管する“3省3ガイドライン”に準拠しているクラウドプラットフォームのMicrosoft Azureを通じて、撮影された患部の映像、および録音された患者と医師の会話などのデータはセキュアに処理されるとした。

五島中央病院において、患者の患部をAzure Kinect DKでスキャンして診察を受ける様子
長崎大学病院において、HoloLens 2を装着した専門医の目の前に投影される、患者の病変部位の3Dホログラムのイメージ

 なお、今回は長崎大学病院と五島中央病院をネットワークでつないで実証実験を行うが、ネットワーク接続が可能なあらゆる地域と専門医を結べることから、5者では今後今回の実証実験で得たノウハウ・経験を広く共有したり、ほかの疾患でも活用できるよう本システムを改良したりすることで、高水準で均てん化された医療や利便性の向上、また、患者の移動を減らすことによる、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)等の感染症の拡大防止に貢献したい考えだ。

 将来的には、5Gによる高速通信技術との連携や、現在はコロナ禍で難航している学生の実習を中心とした教育や研究を含む、他分野への発展も予定されている。

 また3月下旬には、同システムにAIを適用し、診察時における患者の表情の変化を素早くとらえ、自動的に患者の心情(不安や満足度など)を評価する機能や、患者との対話を時系列に文章で記録する機能などを実装する予定。