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富士通、練馬区・中央区と共同で住民税賦課業務を支援するAIの全国展開に向けた実証を開始

 富士通株式会社は2日、東京都練馬区、東京都中央区と共同で、住民税額の確認や修正を行う住民税賦課業務における複数種の課税書類(確定申告書、給与支払報告書、年金支払報告書など)の間での不整合を抽出し、修正方法を提示するAIの全国展開に向けた実証を開始し、2020年10月から実証システムの環境構築を実施すると発表した。

 共同実証は、練馬区と富士通が同テーマで2019年10月~2020年7月に行った実証成果を踏まえ、練馬区と中央区、富士通の3者で採択された総務省「自治体AI共同開発推進事業」に基づき実施するもの。株式会社富士通研究所が練馬区との共同実証で開発した、複数種の課税書類間の不整合を抽出して修正方法を自動提案するAIを活用し、中央区のデータを用いてその導入効果を検証する。

 また、自治体の規模を問わず全国の自治体の住民税賦課業務でのAI適用と賦課修正作業の約60%削減を目指し、汎用的なAI仕様の策定、およびAI導入・運用手順の標準化を検討する。

 実施期間は、2020年8月~9月が、実証計画の立案、中央区から過去の修正データや修正ノウハウの抽出。2020年10月~12月が、実証システムの環境構築、汎用的なAI仕様の策定、情報セキュリティ対策の検討。2020年11月~2021年2月が、中央区のデータを用いてAI導入の有効性検証、AI導入・運用手順の標準化検討を行う。実施場所は東京都練馬区役所および東京都中央区役所。

 実証内容については、汎用的なAI仕様の策定として、練馬区と中央区の課税資料データを学習させて構築したAIを、他自治体でも活用できるように汎用的な仕様を策定。AIの高度化として、練馬区と中央区のデータを活用し、学習データ増加に伴うAIの精度向上を実証する。

 また、自治体規模に依存しないAI導入の有効性検証として、練馬区との実証で開発したAI技術を中央区に適用し、自治体の規模に依存しないAI導入の効果を検証。情報セキュリティ対策の検討として、自治体の基幹システムに格納された個人情報を含むデータを、クラウド上で稼働するAIと連携させる際に必要となる匿名加工などの情報セキュリティ対策を検討し、不適切なデータ移行が発生しないことを確認する。

 さらに、AI導入・運用手順の標準化検討として、AI導入の標準手順の妥当性や、法改正への対応などのAI導入後のアップデートにおける標準仕様の実現性と運用性について、有識者を交えて確認する。

 2019年10月から実施した練馬区との実証では、MICJETで管理する確定申告書や給与支払報告書、住民税申告書などの課税書類の照合でエラー検出された不整合について、AIが不整合のパターンを判断し、賦課修正の要否と修正方法のレコメンドを実施。AIによるパターン判断の精度を評価した結果、実業務に適用できるレベルの正答率98.4%を達成。練馬区では、2020年度は約5.8万件のエラーが検出され、修正作業に約1450時間(予測値)を要する見込みだったが、AIを適用することで約680時間まで短縮させることができ、作業時間53.1%削減を実現したという。

 今後、AIによるレコメンドメッセージのわかりやすさの改善やAI活用についての職員の習熟度の向上、AIが職員確認不要と判断したものを一括処理する機能の提供などにより、将来的には当初の目標である賦課修正工程の約60%の作業時間を削減できる見込みだとしている。

 富士通では、今回の事業で構築した住民税賦課業務向けのAI学習モデルをもとに新ソリューションを開発し、2021年度下期に自治体向け税業務システム「FUJITSU 公共ソリューション MICJET(以下、MICJET)」のラインアップに追加し、提供を予定する。