ニュース

TISと日本マイクロソフト、ヘルスケア業界のDX推進で連携

ヘルスケア情報を扱うクラウドのリファレンスアーキテクチャーを提供

 TIS株式会社と日本マイクロソフト株式会社は8日、ヘルスケア業界のデジタルトランスフォーメーション(DX)の推進に向けて連携すると発表した。

 両社は、個人の健康・医療・介護に関する情報を、健康と医療の質の向上を目的に一元的に保存する仕組みとなるパーソナルヘルスレコード(PHR)分野において、ヘルスケア情報の取り扱いで要求される各種ガイドラインに準拠したクラウドベースの技術を「ヘルスケアリファレンスアーキテクチャー」としてパートナー企業に提供することで、システムやデータの最適化、イノベーションの加速を支援する。

 バイタル・運動情報を取得するスマートウォッチや、特定の疾患の治療や栄養管理を行うスマートフォンアプリ、お薬手帳・母子手帳などのEHRデータ(Electric Health Record、電子健康記録)を個人に見せるためのサービスなど、多くのヘルスケアサービスが民間企業により提供されている。特に、PHR分野では日々膨大なデータが生み出されており、行政でも健康寿命の延伸に向けて、こうしたPHRの活用を促進させる仕組みが検討されているという。

 一方、こうした個人のヘルスケアデータ収集・管理には進展が見られるものの、それぞれのデータは分散して管理され、点在している状況で、個人はもとより国や医療機関にとっても価値ある重要なデータであるにも関わらず、データの統合・分析や、それらのデータを元にした総合的な判断が難しいといった課題がある。

 TISと日本マイクロソフトでは、ヘルスケアサービスに関わる民間企業が、ガイドラインを参照した標準仕様においてサービス連携やデータ流通を実現できるよう、行政や臨床学会が求める標準化ガイドラインを参照した、PHR分野におけるヘルスケアリファレンスアーキテクチャーを提供する。Microsoft Azureを利用したヘルスケアサービス開発に必要となるシステム共有部分を定型化したもので、GitHub上で公開され、無償で利用できる。

 ヘルスケア業界向けサービス提供者にとっては、PHRで求められるセキュアで統一された基準でのシステム構築が可能となり、システム構築期間を短縮し、運用および開発コストの削減が可能となる。臨床関連の6学会による「生活習慣病コア項目セット集(第2版)」および「生活習慣病自己管理項目セット集(第2版)」と、経済産業省の「健康情報等交換規約定義書」を参照したサンプルプログラムが利用できる。

 ヘルスケア業界にとっては、業界向けにサービスを提供する企業へのヘルスケアリファレンスアーキテクチャーの提供を通してPHRの標準化を推進し、相互運用性を向上、データの有効活用を促進する。

 また、日本マイクロソフトでは、ヘルスケアリファレンスアーキテクチャーを理解し、技術活用できる技術者の育成を目的として、7月下旬より「ヘルスケアリファレンスアーキテクチャー技術者育成プログラム」をTISと協力して開始する。プログラムでは、ヘルスケアリファレンスアーキテクチャーのコンセプトから、国際標準規格でもあるHL7 FHIRの情報提供、AIやIoTなどのテクノロジーを活用したシステム構築や実装に至る、総合的なトレーニングを提供する。TISは、プログラムに向けたトレーニングコンテンツの開発に協力する。

 TISと日本マイクロソフトでは、ヘルスケアリファレンスアーキテクチャーの提供を通じて、ヘルスケア業界向けにサービスを提供する企業のPoCや、PoCをきっかけとした事業化に携わることで、PHR取り扱いの標準化への貢献を目指すと説明。また、この活動を通じて蓄積したノウハウから、さらなるリファレンスアーキテクチャーの拡充と普及、PHR取扱の標準化を進め、健康寿命延伸という社会的課題に向けたヘルスケア エコシステムの活性化に貢献するとしている。