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NECがDXへの取り組みを強化、「NECデジタルプラットフォーム」のグローバル対応や上流体制の強化などを実施

 日本電気株式会社(以下、NEC)は7日、デジタルトランスフォーメーション(DX)への取り組み強化に向けて、NECデジタルプラットフォームのグローバル対応や、コンサルテーションをはじめとする上流体制の強化などを発表した。

 また、2020年度中に3000人体制を目標としていたデジタル人材を、2022年度には5000人に拡大する計画も明らかにした。

 NECの吉崎敏文執行役員は、「2019年6月に、生体認証および映像分析事業の強化を発表したのに続き、11月にはDXを実現するためのデジタルプラットフォームを発表して、2020年春にこれを体系化することを目指した。これらは予定通りに進捗している。DX戦略の策定は、イノベーション創造、お客さま接点改革、業務変革という切り口から、プロセス、インフラ、人材という観点で、デジタルシフトに向けた体制を強化している」と話す。

NECの吉崎敏文執行役員

 また、「顧客のロードマップを作りながら、将来を一緒に歩むためのコンサルテーションを行う体制の強化、スピード感を持って、DXを実現するための具体的なDXオファリングメニューの整備、それらを支えるNECデジタルプラットフォームのグローバル対応の3点を新たに発表する」と語った。

3つの切り口でデジタルソフトに向けた体制を強化
3つの強化点

コンサル体制の強化やオファリングメニューの整備などを実施

 このうち「コンサルテーションを行う体制の強化」では、デジタルシフトのあり方やロードマップなどのDX戦略において、検討・支援するためのメニューやメソッドを整備。戦略コンサルタントやビジネスデザイナーによる専門家チームによって支援する。

 DX戦略および構想策定では、戦略コンサルタントが、CxOの相談役としてDX戦略を検討。目指す姿を描きながらデジタルシフトを推進する。

 また、ビジネスデザイナーによって構成する「フューチャークリエーションデザイン」を整備し、社会や顧客の抽象的課題の定義から、具体的なプロトタイプによる検証まで行い、迅速なデジタルシフトにつなげる。

 ここでは、グランドデザインやエクスペリエンスデザインなどを60日体制で実施。ビジネスデザイン、ブランディングデザイン、サービスデザインを経て、テクノロジーを活用したプロダクトデザインに進める手法を提案することになる。先端テクノロジーについては、すでに設置しているフューチャークリエーションハブを通じて提案する。

 「新型コロナウイルスの感染拡大といった状況下において、事業継続や事業の優先度の見直し、将来の目指す姿を策定している企業が多い。NECは顧客目線でデザインするチームを増強した。NECの強みは、ITやネットワークの専門知識を持ったエンジニアが多い点。これまでの構想策定から実装に進むというアプローチよりも、実装の経験をベースに、構想策定に加わるほうが特徴を生かせる。昨年からエンジニアやデザイナーを上流にシフトしている。ここにはすでに手応えを感じている。さらに強化していきたい」と述べた。

 吉崎執行役員は、現在は100人強のDX専任組織を倍増させる考えであり、「ビジネスデザイナーや戦略コンサルティング、ITオーガナイザーというような職種の人材を拡大する。NEC自身がデジタルシフトを行い、顧客目線により、顧客に寄り添う提案をしていく」と述べた。

New Normal社会で将来を見据え、上流から支援
DX戦略・ビジネスモデル・アジャイル変革

 2つ目の「DXを実現するためのDXオファリングメニューの整備」では、顧客の経営課題を解決するために、NEC全社の知見を集結する価値提供モデルと位置づける。ここでは、DX戦略や構想策定から、業種別ビジネス、人材育成までをカバーし、社会の変化に合わせて、迅速に顧客のビジネス変革を実現するものになるという。

 ビジネスモデル、サービスモデル、プライシングモデルで構成。「ハード、ソフト、サービスといった組み合わせではなく、ビジネスが決まると、提供するサービス形態が決まり、提供するプライシングモデルが変わるという観点から提供するものになる。DXオファリング体系を整備しており、業種軸と共通軸で構成している」などと述べた。

 会見では、100台規模のカメラを複数拠点で活用する生体認証・映像分析オファリング「セーフティ&セキュリティ」について説明。「生体認証や映像分析技術、サーマルカメラにより、新型コロナウイルス感染症対策ソリューションを提供できる。検温したり、密の状態にいる場合にはサイネージを通じて注意を促したりといったことが可能になる。同じオファリングを活用して、グローバルに展開することができる」とした。

 また、オファリングメニューを活用することで、従来のシステム構築型の提供形態では、導入までに3カ月ほどかかるものが、構想から稼働開始までに、最短1カ月で実現可能になることも示した。

NECのDXオファリング
DXオファリング体系

 3つ目の「NECデジタルプラットフォーム」は、2019年11月の発表において、アプリケーション、プラットフォーム、インフラ、ネットワーク、エッジの5つの階層をワンプラットフォームとして提供し、DXに必要な生体認証や映像技術、AI、セキュリティ技術などを統合することを発表していたが、「2020年4月のリリースで、プラットフォームが完成した」と語るとともに、「これを7月からグローバルで提供を開始する」とした。

 国内外のプラットフォームをひとつのアーキテクチャで統一し、日本、米国、インドの3か国でサポート体制を構築。世界各国のラボを活用し、グローバルなビジネス展開を可能にするという。

 あわせて、データ機能を強化。生体認証や映像分析などで使用するデータの準備と活用、分析プロセスを統合し、デジタル化で膨大になったデータの見える化や分析シミュレーションを行って、新サービスの創造や意思決定の迅速化、オペレーションの最適化を実現するという。

 「NECデジタルプラットフォームは、日本が製品企画を担当し、NECアメリカが開発、NECテクノロジーインディアが開発を支援する体制が整った。コンテナベースであり、OSに依存せずにアプリを開発でき、グローバルの統一基盤として提供できる。新型コロナウイルス対策やeKYCによる本人確認サービスなどを、グローバル同一の環境で提供できる」とした。

 さらに、「データを保管場所に置いたままアクセスし、見える化できるようにした。AIを活用する際にデータ準備の時間を削減できる。また、NECが特許を持つ通信のゆらぎを確実に制御する仕組みによって、大量のデータをリアルタイムに処理できるようになる。複数の遠隔地にある建設機械を動かしたり、港湾施設のクレーンを動かしたりといったこともできる。通信技術の優位性は、NECの強みになる部分である」などと述べている。

NECデジタルプラットフォーム
グローバル対応を実施した

 また、ビデオで登場したNECアメリカのKris Ranganath氏は、「NECデジタルプラットフォームによって、AIやデジタルID、ブロックチェーンなど、NECが開発する最新技術を届けることができる」と前置き。

 その特徴について「インフラに依存せず、パブリッククラウドやエッジ、データセンターで利用でき、標準化されたAPIを備えた、複数のマイクロサービスを提供する。NECの最新技術がこのプラットフォームに統合され、アクセス制御や運用監視などのプラットフォーム共通サービスを用意した。標準APIやSDK、エッジサービスを、アプリケーションを開発するために利用できる」と説明する。

 加えて、「NECデジタルプラットフォームは、すでにデジタルIDや航空ソリューション、Safer Cityソリューション、決済サービスなどで活用されており、複数の顧客の要求に応えることができる。デジタルID管理では、デルタ航空やスターアライアンスが、空港においてデジタルIDを活用したタッチレスな旅客体験を実現している」などと語った。

NECアメリカのKris Ranganath氏

 このほか今回は、DXへの取り組み事例についても説明した。

 大阪府では、スマートフォンを利用した「大阪コロナ追跡システム」を稼働させているが、これに伴い増加する住民からの問い合わせに対応するために、AI自動応答システムを提供し、10日間でのサービスインを実現。「約2週間に10万件の問い合わせがあったが、そのうちの約3割をAI自動応答システムが対応し、混乱がなかった」とした。

 横浜銀行では、専門性の高い銀行業務をデジタル化。不正利用口座の審査業務を高度化することができたという。1次審査をデジタルで対応し、2次審査を人で行うことになる。2020年10月に本番稼働を予定しており、「不正検知がデジタルで行えるようになり、人がより高度な仕事を行えるようになる」とした。

大阪府の事例
横浜銀行の事例

 コニカミノルタでは、需要予測の精度を高め、需給調整につなげるソリューションを導入。欧州市場での活用が決まっているという。「構想段階からNECが携わった事例であり、5回のワークショップを通じて、なにをDXすべきか、というところから議論した。この成果は、サプライチェーン全体にも影響するものであり、在庫の持ち方や商品の売り方にも変化を及ぼすことになる」としている。

コニカミノルタの事例

 一方、デジタル人材の強化については、慶應義塾大学と共同開発したBasicスキル育成プログラムにより、DX時代に必要な人材育成を社内で実施。今後は、これを社外にも展開していくほか、社内で6000人を対象に実施している「NECアカデミー for AI」をオンラインで提供開始することも発表した。

 さらに同社では、2020年度中に3000人体制を目標としていたデジタル人材を、2022年度には5000人に拡大する計画を明らかにした。「すでに3000人を超えるデジタル人材の育成が完了している。全社的にデジタルシフトを加速する」と述べた。

人財・基盤強化の取り組み

 また2021年度までに、生体認証および映像分析ビジネスで、グローバルで売上高1000億円とする計画については、「目標に対しては順調に進んでいる」と語った。

 吉崎執行役員は、「NECは、DXの取り組みにおいて、一貫した枠組みのなかに、社内の技術や成果を取り込んでいる。それをもとに、企業のデジタルシフトを支援している。NECの強みは実装能力にある。NECが蓄積した知見を構想段階から届け、デジタルの力で強い社会や企業を作りたい」とした。