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Zuoraがサブスクリプションビジネスのベストプラクティスを解説、押さえるべき“3つのポイント”

 Zuora Japan株式会社は21日、サブスクリプションビジネスのベストプラクティスに関するオンライン記者説明会を開催した。

 Zuoraは、世界各国で1000社以上にサブスクリプションプラットフォームを提供している。ベストプラクティスは、顧客のビジネスモデルや収益率などを集計したサブスクリプションエコノミーデータベースから見えてきたものだ。

 Zuora チーフデータサイエンティストのカール・ゴールド(Carl Gold)氏によると、新型コロナウイルスがビジネスにどのような影響を与えたかという観点では、サブスクリプションビジネスを展開する企業は、悪い影響を受けにくいことがわかったという。逆に、「3月時点で、新型コロナウイルス(の影響)によってサブスクリプションの成長率が加速した企業が22.5%存在した」とゴールド氏。

 また、影響は限定的だという企業が53.3%、成長は続けているものの減速したという企業が12.8%、成長率が縮小した企業は11.4%で、「10社中9社は成長中だ」とゴールド氏は述べている。

サブスクリプションを提供する企業は新型コロナウイルスに強いという

 さらにサブスクリプションを提供する企業は成長率が非常に高く、過去8年間の成長率は387%にのぼっている。こうした企業の年間平均成長率(CAGR)は18%で、S&P 500や米国小売業の年平均成長率3.7%と比較しても大幅に高いことがわかる。この傾向はアジア太平洋地域でも見られ、同地域でサブスクリプションを提供する企業の、過去2年間のCAGRは16.3%だという。

サブスクリプションを提供する企業の、過去8年間の成長率は387%
アジアでもサブスクリプションビジネスは大きく成長している

 ただしゴールド氏は、平均値は高いものの、個別の企業の業績には大きな差が出ていると指摘する。というのも、サブスクリプションビジネスを展開する企業のうちトップ10%では年間収益成長率が88%と高い一方で、下位10%の企業では成長率がマイナス24%となっているためだ。

成長率の高い企業と低い企業との差は顕著

 「だからこそベストプラクティスを実施することが重要だ」とゴールド氏は述べ、3つの観点からサブスクリプションのベストプラクティスについて解説した。

 その3つの観点とは、1)成長における優先順位、2)フレキシブルなサブスクリプション、3)従量課金である。

サブスクリプションビジネスのベストプラクティス

 このうち成長における優先順位とは、ビジネスモデルや成長段階に適した分野に焦点を当てることだ。ゴールド氏は、B2BとB2Cでは異なる成長の道のりがあるとしており、「B2C企業は主にユーザー数の伸びが成長の鍵となる一方、B2B企業ではアカウント数とARPA(顧客あたりの平均売上高)の伸びの組み合わせが成長につながる」としている。

 B2C、B2B企業ともに、収益の高い企業ほど成長が加速する点は同じだ。特にB2Cでその傾向が強く、ユーザー数の伸びが成長に直結するB2Cにおいて、収益の高い企業がユーザー成長率も高くなっている。一方B2Bでは、中堅企業でも大企業同様の成長率を示しており、小規模企業では既存顧客へのアップセルによって成長率を維持しているとした。

B2BとB2Cで異なる成長の道のり

 2つ目のフレキシブルなサブスクリプションとは、顧客ニーズの変化に合わせてサブスクリプションメニューを変更すること。「サービスやオプション、契約条件などを柔軟に変更できるようにすることで、ユーザーの満足度を高めることが可能だ」とゴールド氏。最近では、新型コロナウイルスの影響により、サブスクリプションを一時停止し、後日再開できるようなオプションが増えてきたという。

 ゴールド氏によると、サブスクリプション内容を適度に変更できるようにしている企業は、あまり変更できない企業の約2倍、ほとんど変更できない企業の約3倍、成長率が高いという。また、柔軟に変更できる企業はARPAの成長率も高く、チャーンレート(解約率)は低いとしている。

フレキシブルなサブスクリプション

 最後の従量課金は、アップセルを最大化して柔軟な価格を設定し、解約を減らすことが目的だ。Zuora Japan シニアカスタマーサクセスマネージャの平井輝恵氏は、従量課金のモデルとして、ユーザー数や容量などによって課金する「単位あたりの課金モデル」、超過した分に対して課金する「超過量課金モデル」、データ通信のように利用量別で段階的に価格を設定する「ボリューム課金モデル」、電気料金のように単価を段階的に設定する「ティア課金モデル」、ティア課金モデルに超過量の単価を設定する「超過量課金つきティア課金モデル」、さまざまな要素をかけ合わせた「マルチ属性課金モデル」の6つを紹介。

 その上で、「従量課金モデルを設計する際は、顧客のニーズに沿ったものにし、顧客の成長に合わせること、またその成長を予測した上で設計するように」と忠告した。

6つの従量課金モデル
従量課金の割合は総コストの25%以下がベスト

 またゴールド氏は、従量課金を全く取り入れていない企業では、年間収益成長率が19%となっている一方で、従量課金の割合が25%までの企業は成長率が25%と高くなっていることを指摘する。ただ、従量課金の割合が25%以上の企業は、成長率が21%と少し鈍化することから、「従量課金の価格設定は総コストの25%以下に抑えるのがベストだ」としている。

 また、B2BとB2Cでは従量課金に対するとらえ方も異なり、B2Bでは半数以上の企業が従量課金を取り入れている一方、B2Cでは従量課金を採用する企業が26%のみとなっている。これは、一般消費者がシンプルな価格体系を好むためだが、「B2C企業でも成長率が一番高いのは、適度に従量課金を採用している企業だ」とゴールド氏は指摘、B2Cにおいても従量課金をうまく組み込むことで効果を上げることが可能だとした。

 「顧客がコストをコントロールし、アップセルへのパスを用意することが大切。ただし、細かすぎる料金設定だとタクシーメーターのようになってしまうので、そのような設定は避けるように」とゴールド氏は述べた。