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Accentureのジュリー・スウィートCEOが来日会見、「Technology Vision 2020」の説明も実施

 Accentureのジュリー・スウィートCEOが来日し、20日、都内で会見を行った。

 スウィートCEOは2019年9月に就任。同社初の女性CEOとしても注目を集めている。また2020年1月には、「ポストデジタル」時代を見据えた新たな成長モデルと体制を発表。2月には「Technology Vision 2020」を発表し、「テック・クラッシュ(テクノロジーに対する反発)」を乗り切ることが企業にとって大切であるとするなど、同社の提言や取り組みなどにも関心が集まっている。

Accentureのジュリー・スウィートCEO

 会見では、スウィートCEOとAccenture 成長市場担当 グループ・チーフ・エグゼクティブのジャンフランコ・カサーティ氏が、対談形式で同社の取り組みなどについて説明した。

対談形式で会見が行われた

企業の成功モデルは50年変わっていない

 スウィートCEOは、「2020年は、テクノロジーとデジタルのポテンシャルを提供する10年間の始まりである」とする一方、「企業の成功モデルは、50年間変わっていない。それはクライアントにフォーカスし、社員にフォーカスすること。また、変わる勇気を持ち、妥協せず、現状に甘んじてはいけないということである。クライアントがどんな立場に置かれて、なにが必要なのかを考え、才能のある社員をどうやって採用し、引きつけるのかということも考えている」と話す。

 また、「社員のトレーニングにも力を注いだ。そして、将来にも目をむけて、ビジネスを変革させた結果、いまのAccentureは、デジタル、クラウド、セキュリティに関するビジネスが65%を占めている。事業の中核そのものが新たなものになっている。また、2年連続でダイバーシティ&インクルージョンではトップとなり、日本がそれをリードしている」などとした。

 このほか日本について、「CEOに就任してから、グローバルマネジメントコミッティのメンバー全員を日本に連れて行くように指示をした。それは、日本では江川(昌史)社長以下のリーダーシップチームが卓越したリーダーシップを発揮し、成長していることに加えて、人材開発への投資を積極化させ、イノベーションにも取り組んでいるからである。これをグローバルマネジメントコミッティに知ってもらいたいと考えた」と称賛。

 さらに、「日本のクライアントから学んでほしいと考えた。日本のクライアントの多くはグローバル企業であり、継続的な拡大を望んでいる。今回、初めて、グローバルマネジメントコミッティを日本で開催した」と述べた。

 スウィートCEOは、CEOに就任して半年間で50人以上のCEO、100人以上のリーダーに会ったそうで、「優先したのは、的確なリーダーシップチームをそろえて、将来に向かうことであり、クライアントの状況を見て新たな方向性を発表した。企業は顧客との接点を変え、企業全体を変革させなくてはならない、財務システムに迅速にアクセスでき、製造分野では自動化を進め、顧客に対しては、パーソナライゼーションを進めなくてはならない」と主張。Accentureはそれを支援していくと話している。

 また、リーダーにとって大切な資質については、「謙虚であることが大切である。そして部下を応援する姿勢を持つことである」と明言。「自分がすべての回答を持っているわけではなく、ほかの人から学ばなくてはならない。優れたチームがいて、自分が強くなれる。また、どんなビジネスもデジタルであり、さらにそれは人によるビジネスである。新たな働き方を受け入れなくてはならない時代であり、そこにおいて、リーダーはどうやって成功するかを社員に示さなくてはならない。部下を応援し、部下が変えることが必要である」と述べた。

 ここでは、自らが四半期ごとにテーマを決めて勉強をしており、CEO向けに用意されたオンラインコンテンツなどを活用していることに触れ、「自分からやってみせることが大切であり、リーダーにも学習心があることを示している」とした。

 「若い人たちに対しては、自らが成功するためには自己満足するなと言っている。挑戦していく姿勢が必要である」とも語った。

 一方、Accentureのカサーティ氏は、アクセンチュア・イノベーション・ハブについて説明。「アクセンチュア・イノベーション・ハブは、クライアントと一緒に仕事をすることを目的とし、世界各国に設置している。ここで最高のノウハウを紹介し、ビジネスに応用できるテクノロジーにフォーカスし、競合優位性を確保するための支援を行う。東京のイノベーション・ハブには、さまざまな業種のクライアントが参加しており、デジタルを活用して顧客から親近感を得たり、ロイヤルティーを得たり、どうやってやりとりをすべきか、AIをどう活用するかといったように、デジタル時代にふさわしいやり方を模索し、新たなビジネスモデルを構築することを目指している。イノベーションは企業の中核になくてはならない」などと語った。

Accenture 成長市場担当 グループ・チーフ・エグゼクティブのジャンフランコ・カサーティ氏

日本におけるProject PRIDEの成果

 また、アクセンチュア株式会社の江川昌史社長は、Accenture独自の働き方改革「Project PRIDE」の、日本における取り組みについて説明。2014年度に同プロジェクトを開始した時点では、1058人であった女性社員が、5年間で4926人へと4.6倍に拡大。男性社員は3980人であったものが、9155人へと2.3倍に拡大していることを示し、「日本法人の売上高も同様の成長を遂げている」とした。なお、日本法人では6期連続2けた成長を遂げているという。

アクセンチュアの江川昌史社長
Project PRIDEの成果

 さらに、残業時間は、一人あたり一日平均1時間になり、有給休暇の取得率は70%から85%に上昇。離職率は半減し、「日本の企業と同等の水準になっている」という。

 女性社員の比率は34.9%に達し、新卒者の女性採用比率は50.2%と半分を超えている。グローバルでは、50万5000人の社員が在籍。女性社員の比率は44%となっている。

 さらに、日本が推進するSociety5.0において、準拠した活動に取り組んでいることにも触れ、会津若松市では、スマートシティ計画や地方創生総合計画などに取り組んでいることなどを紹介した。

残業時間が減少するとともに、有給休暇の取得率が向上。離職率も低下している
Society5.0関連の取り組みも

年次調査レポート「Technology Vision 2020」を説明

 このほか、Accenture ポール・ドーアティCTO兼CIO(最高イノベーション責任者)は、重要なテクノロジーのトレンドを予測している年次調査レポート「Technology Vision 2020」について説明を行った。

Accenture ポール・ドーアティCTO兼CIO(最高イノベーション責任者)

 今年で20回目となる同調査は、今後3年間でビジネスに大きな影響をもたらす重要なテクノロジーのトレンドを予測するもの。2013年には「すべてのビジネスがデジタルに」、2014年には「デジタル化時代の創造的破壊者へ」、2015年には「デジタルビジネスの時代:業界の垣根を越えて」とし、デジタル時代の到来や、デジタルを活用した異業種分野からの参入などを予測していた。

 また2019年には、「ポストデジタル時代の到来:次への備えはできているか?」と題して、ポストデジタルという新たな時代に突入したことを提言。顧客や従業員、ビジネスパートナーに対し、パーソナライズされたリアルな体験をもたらすことが可能な最新のテクノロジー群をいかに活用できるかが、ビジネス成功の鍵を握ると予測した。

Technology Visionのこれまでの軌跡

 今年は、25カ国、21の業界において、6074人の企業経営者やIT担当幹部を対象にオンライン調査を実施。さらに、中国、インド、英国、米国の消費者2000人を対象にした調査の内容も反映している。

 Technology Vision 2020では、「ポストデジタル時代を生きる - 企業が『テック・クラッシュ』を乗り切るには」と題し、人が多くのテクノロジーを、自らの働き方や暮らしに組み込んでいる一方で、企業や組織が必ずしもそのニーズや期待に対応しきれていないことを明らかにした。

 ここでは、デジタルテクノロジーが偏在する時代において、企業や組織がそれらを活用してより良い世の中を構築するためには、新たな考え方やアプローチが不可欠であるとしている。

 また、人のニーズや期待と、それらにそぐわないビジネスモデルやテクノロジー活用方法の不一致を「テック・クラッシュ」とし、「企業は、大きな転換期を迎えているなかで、やみくもにテクノロジーを活用するのではなく、人の信頼を得ることを最優先に据えて、その中核となるビジネスやテクノロジーのモデルを見直し、競争と成長のための新たな基盤を築いていく必要がある」(Accenture ドーアティCTO兼CIO)としている。

 また、今後3年間で押さえるべき5つのテクノロジートレンドとして、一人ひとりにあわせた選択肢を提供する「体験の中の私」、人間とAIの協働を通じて、ビジネスのあり方を再創造する「AIと私」、ベータ版に伴う足かせを取り除く「Smart Thingsのジレンマ」、企業の対応範囲と責任を広げる「解き放たれるロボット」、継続的なイノベーションのエンジンを生み出す「イノベーションのDNA」を示した。

企業が「テック・クラッシュ」を乗り切るには

 一方で、以下のような傾向も説明している。

・「次の10年間を乗り切っていくためには、顧客との関係をパートナー関係に昇華させる必要がある」との回答が85%に達している
・人間とマシンの協働を促すため、インクルーシブデザイン(多様な利用者と一緒にデザインを行う手法)や人間中心デザインの原則を採用している企業は37%にとどまっている
・インターネットに接続された自社製品やサービスのアップデートの回数が、今後3年間で増えるとの回答が74%に達している
・従業員がロボットを使った作業に容易に慣れるとの回答が55%に達している
・イノベーションの不確実性がこれまで以上に高まっており、着実な推進に向けて、エコシステムパートナーや第三者企業との新たな取り組みが必要になるとの回答が76%に達している

 さらに、ドーアティCTO兼CIOは、「これまでは、『あらゆる企業はデジタル企業である』と言ってきたが、これを少し修正する必要がある。これからの時代は、『あらゆる企業はテクノロジー企業』となる。そして、人が中心になるという点では、経営層がテクノロジーを理解する必要がある。『あらゆるCEOはテクノロジーCEOである』という時代がやってくる」と予測した。