ニュース

日本マイクロソフト、データ活用によってDXを推進する新センターを本格稼働

「お客さまを主役とし、日本の企業のDX推進を支援する」

 日本マイクロソフト株式会社は23日、データ活用によってデジタルトランスフォーメーション(DX)を推進する「X(クロス)インテリジェンス・センター」の本格稼働を開始したと発表した。

 日本マイクロソフト 執行役員常務 クラウド&ソリューション事業本部の手島主税事業本部長は、「よりインテリジェンスなサプライチェーンの導入が求められるなど、すべての産業においてDXが推進されている。また、過去10年のクラウドの活用は、コストメリットを追求するものであったが、今後10年間は、データを力にして、全社的な取り組みに広げていく必要がある。そこに対して、マイクロソフトはなにができるかを、この1年間考え、自ら実証してきた。その成果をもとに、Xインテリジェンス・センターを本格稼働させることになる。グローバルで日本が初めて開設するものであり、お客さまを主役とし、日本の企業のDX推進を支援する」と位置づける。

 なお、Xインテリジェンス・センターの“X”には、日本マイクロソフトと顧客、パートナーが連携すること、さまざまなデータを連携して活用することの意味を込めたという。

日本マイクロソフト 執行役員常務 クラウド&ソリューション事業本部の手島主税事業本部長

DX推進やデータ活用を支援する「Xインテリジェンス・センター」

 Xインテリジェンス・センターは、DX推進やデータ活用を支援するための専任体制を敷き、探索的なアプローチによるプロジェクト推進、データ活用のアーキテクチャー検証、オープンデータの活用などの提案を行う。

 「さまざまな知識を持った人員で構成しており、データをどう活用するのか、どんなアーキテクチャーに育てるのか、オープンデータをどう集めるのかといったことを支援することになり、無償のサービスとして提供する。システムありき、テクノロジーありきではサイロ化してしまう。専門性を持った社員を通じて方法論を提供することで、DXを支援する」とした。

Xインテリジェンス・センター

 Xインテリジェンス・センターの共同パートナーとして、ISAO、インフォマティカ、システムサポート、ブレインパッド、ZEAL(ジール)の5社と提携したことも発表。「最初は5社のパートナーと連携するが、SIerをはじめ、データを活用するさまざまなパートナーと連携したい」とした。また、日本マイクロソフトのインダストリー別営業部門との連携も行うという。

 日本マイクロソフト クラウド&ソリューション事業本部Xインテリジェンス・センターの吉田雄哉センター長は、「日本の企業においては、業務の効率化による生産性向上が主流となっており、DXの本来の目標である新規製品やサービスの創出は半数程度にとどまっている」と前置き。

 「その背景には、部分最適化されたアーキテクチャーやサイロ化されたデータ、システムの属人化やステークホルダーが多いといった課題がある。また、DXには、従来のデジタル化とは異なるアプローチが求められるが、従来と同じアプローチをしているという課題もある。さらに、DX推進人材が大幅に不足しているという課題もある」と、DX推進における数々の課題を指摘する。

 そしてその上で、「成功の鍵は、人とデータの2つである。部分最適のとらえ方を見直し、全社的なスコープでとらえ、業務効率化やコスト意識の考え方から脱却。データ活用を全社規模に広げることに加えて、個々の正解を探す探索的なプロジェクトを進める。テーマを絞り込み、小さくはじめて、確かめて、繰り返すことが必要である。DXに踏み出すためのきっかけをつくって、お客さまがプロジェクトを推進できるまでの道筋を作ることになる」とした。

日本マイクロソフト クラウド&ソリューション事業本部Xインテリジェンス・センターの吉田雄哉センター長

 なお、「同時に、データに着目したアーキテクチャーの導入も必要となる」とのことで、Xインテリジェンス・センターでは、人とデータにおける課題を解決する取り組みを行うことになるとしている。

人とデータに対する2つの取り組みが必要

 このうち“人の課題解決”においては、共同プロジェクトにより、具現化への道筋を、ブリーフィング、アイデアソン、ハッカソンを通じて模索するという。

「知識・アイデア・実証」を実践する

 一方で“データ”については、マイクロソフトが示す「デジタルフィードバックループ」の観点から説明。「お客さまから発生するすべてのデータの活用を推進することで、企業のデジタルトランスフォーメーションを支援することになる」とした。

 日本マイクロソフトが提案する「デジタルフィードバックループ」は、「お客さまとつながる」、「社員にパワーを」、「業務を最適化」、「製品を変革」という4つの側面から、データ活用を活用して、変革を起こしていくことができるものだとする。

デジタルフィードバックループ

 具体的には、顧客情報や取引情報、営業活動などの「お客さま」データ、生産管理、販売管理、会計情報などの「業務」データ、社員情報やスキル情報などの「社員」データ、保守情報や販売情報、IoTなどの「製品・サービス」データといった、顧客から発生するすべてのデータを組み合わせて、ためる、つなぐ、くわえるといった点からの統合的アプローチが必要であると指摘。

 「企業内のデータを総合的に統合し、あらゆる活動につなげてく環境が必要である。ここでは、統合することを目的化しない、ゆるやかな統合が必要である」などと発言した。

DX推進には統合的アプローチが必要

 なお、「さまざまなクラウドサービスの活用も視野に入れるが、日本マイクロソフトでは、Microsoft Azure、Microsoft 365、Dynamics 365、Power Platformなどのクラウドサービスを通じて、ためる、つなぐ、くわえるということが可能になり、それにより、お客さまのDXを支援することができる」とも話している。

電通、「MSおよびパートナーとの連携を強化する必要がある」

 電通デジタル 執行役員 データ/テクノロジー領域担当の小林大介氏は、「テレビの広告が減少し、インターネットへの広告が増加する一方、広告代理店に支払う費用が減少するといった傾向が世界的に見られている。そうしたなかで電通は、広告代理店から、マーケティングソリューションプロバイダーに変わる必要があり、PDM(People Driven Marketing)に取り組んでいる。生活者を理解し、それに基づいて広告を作り、マーケティングを進めていくことになる」と、自社の立場を説明。

電通デジタル 執行役員 データ/テクノロジー領域担当の小林大介氏

 「2017年に考え方を提示し、2018年には独自のデータ基盤であるPeople Driven DMPを構築した。2019年はPDM 3.0として、顧客の獲得とロイヤルカスタマ化するデュアルファネルに対応し、電通が保有するデータと、クライアントが持つデータを組み合わせることで、顧客の特徴やトリガーを把握し、探しだしたい顧客を定義してアプローチすることになる」と、これまでの具体的な取り組みを説明する。

 そして、「今後は、サプライチェーンシステムとつながったデマンド・サプライ連結の実現や、企業間データ連携による社会基盤化など、PDMを進化させることになるが、その上では、クライアント企業が持つ基幹連携や、データ基盤、IT基盤との連携がますます重要になる。日本マイクロソフトおよびパートナー各社のソリューションおよびプラットフォームとの連携を強化する必要がある」と、Xインテリジェンス・センターに対してユーザーの立場からコメントし、同センターによる支援に期待を寄せた。

PDMの進化
PDM 3.0

 またマイクロソフトでは“Tech Intensity”を打ち出しているが、同社の手島事業本部長はそれについても説明。「企業がテクノロジーカンパニーやソフトウェアカンパニーになるためには、テクノロジーを自分たちの力にしていく必要がある。これがTech Intensityが目指すもの。調査によると、競争優位性を構築するためにTech Intensityが効率的な方法だとしているリーダーは75%に達し、将来成功するにはTech Intensityが非常に重要であるとしたリーダーは83%に達している。マイクロソフトはそこに投資をしていく」とした。