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ヘルスケア・医療で続く個人データ問題 Googleの「Project Nightingale」

Googleの目指すもの

 WIREDは、HIPAAの規制の解説と合わせて、Googleの意図を探っている。

 それによると、HIPAAは医療・ヘルスケアの向上のためには柔軟な運用を認め、医療機関と協力するビジネスパートナーは広く捉えられる。このため条件を満たせば、病院は患者の承諾を得ることなく、パートナーに情報を提供することも可能という。

 だが、共有されたデータにユーザーの名前と生年月日が含まれていた点には疑問が残る。専門家はむしろ、この件では「個人を識別可能」という点こそ重要だったのではないかと推測する。

 ルイズビル大学のMark Rothstein教授(生命倫理学および保健法)は「十分な情報に基づいた医療の意思決定モデルの開発だけが目標なら、匿名データで可能だ。だがデータが個人識別可能だったことは、彼らの目標が全く違うものであることを示唆している」と述べている。

 そこで思い起こされるのは「個別化医療」だ。遺伝子レベルの情報や生活歴までを活用しながら、副作用を抑えて効果的な治療を行うことを可能にする画期的な医療で、「オーダーメイド医療」「テーラーメイド医療」とも呼ばれる。社会福祉面からは医療費の削減が期待され、ビジネス面では巨大な成長市場だ。

 非営利医療研究機関、スクリプス研究所の教授で、個別化医療に詳しいEric Topol氏は「AIの能力を持つテクノロジー企業と、巨大ヘルスシステムとの融合は必然だ」と述べている。

 それにしても、Googleには不手際の多さが目立つ。

 The Street.comの共同創業者で、CNBCのマネー番組のキャスターも務めるJim Cramer氏はStreet.comのレポーターに、「Googleもメディアの反応を予想すべきだ」と語っている。さらに、なぜGoogleはこんなに間違ったのかを問われ、こう答えた。

 「簡単な話だ。彼らは若い。そして自分は絶対に正しいと考えているのだ」